ネタバレ感想 山東ユカ 『博多女子は鬼神のごとく気が強か!?』1巻

博多女子は鬼神のごとく気が強か! ? 1 (バンブーコミックス)
博多女子は鬼神のごとく気が強か!? (1) (バンブーコミックス)

 大体の内容「気が強くても通じないと意味がないという」。博多の大学に進学した青梅さん。そこで高身長でかっこいい雰囲気の松岡さんと出会います。ちょっと気になる、と話しかけると、気が強! という流れから、何故かずるずると強度研究会(他の学生からは狂犬会と呼ばれている)に加入することに!? そこから始まるラブ、そんなものはない。それが『博多女子は鬼神のごとく気が強か!?』なのです。
 この漫画は気が強か案件で進むものだといつから錯覚していた? というくらいに、気が強か現象は序盤で出し切っている感じです。じゃあ何の漫画なんだよ、というと、郷土研究の名を借りた北九州名跡&食い物話になります。そして基本として、上京系の漫画と軌を一にする、けどこっちは地方の話、というのが目を引くところです。逆お上りさんという謎の言葉が出るくらい、青梅さんはハカタのことを知らないでいて、だからやることなすこと新鮮、というのが一つ軸と言えるでしょうか。そこに、青梅さんの金銭感覚の緩さと食レポの惨憺たるさが加わり、他の地方ネタ系のそれとは一線を画す形になっています。ご当地物が増えた昨今において、その一線の画し方は大変興味深いものがあります。ある意味では青梅さんをめでる漫画なのかもしれない、まであります。それくらい、金銭感覚が絶妙に緩く、食レポは酷いのです。食レポの方は、初めて食べるよ系によく付随する美味い美味いというのが全然違いつつも、絶妙に稚拙な表現をされるので、これ逆にひぼーちゅうしょーになるのでは? というレベルに至っています。上手い食レポでなければならない、とは言わないんですが、それでもあれはちょっと、そこそこ、だいぶ、かなり、相当酷いのである意味ではこの漫画の名物になってしまっています。言わせるとまずい名物ってのもなんだかなんですが。
 さておき。
 基本的に青梅さん主体でことが進むので、ハカタ知らずな私にも分かりやすい強度で郷土紹介されております。そこがいいんだ……。ジモッティー(きらら古語)ではそうそう郷土の目立つ場所いかんよね……。というのがそこここで出て、これもまた地域ギャップ! となりますが、それでもなんのかんの行ったりするのがいいです。なんのかんの、と言うのが特に。太宰府天満宮回は青梅さんが行きたい理由が強固だったので、断れん! ってなってる展開が良かったです。これで単に見たい、だったら却下だったというのも含めて。青梅さんという濃厚な潤滑油!
 しかし、青梅さんは時にガキガキの異物にもなります。特に食に関して貪欲です。それでいて食レポが100点満点中マイナス100点という体たらくで、なので食べ物が絡めば確実に取れ高を出す、というある意味スーパーマンになっています。そこがいいんだ……。その内ひゃっはあ! 青梅さんの食レポだあ! って体になるのですよ。
 よく分からない発言はさておき。
 地域物としてこの漫画を見れば、地元という強みがしっかり効いている印象です。瀬戸口みづき『ローカル女子の遠吠え』の濃厚さとはまた違う濃淡のある、とでもいいましょうか。あっちはわりと礼賛なとこが多い、特に富士山関連、ですが、こっちはより異文化交流の趣きが強いです。青梅さんがかなりぽ系なので、異文化でもするっと懐に入っちゃう、スルー力があるからこそ出来る異文化交流という趣きです。ロー女はその辺が干渉しあう感じなので、それとは違う道筋、素敵やん。などと思うのでした。
 キャラ? そうねえ。某文アルとかにハマって文豪旧跡を回っている感がある花水木さんが良かったです。あんまりがつりとオタキャラしていないのがいいです。更にそれでいて即売会とかにもサークル参加しているっぺれえのも。裏が893案件ありそうな大博先輩とか、皆色々あるけど、そこを無駄に押し出してこない手つき、というのが見事と言えると思います。今会っている場で出す顔以上に踏み込まないというか。青梅さんが花水木さんのお手伝い(婉曲表現)してたのも、使うネタ以外では特に言及してないのとか、ほんと見事。そこいじりたくなるのを、止めているんだろうなあ、と邪推しつつ、この感想を終えたいと思います。