感想 画・空路恵 原作・広報広聴課ゾンビ係 『ゾンビランドサガ』1巻

ゾンビランドサガ(1) (サイコミ)
ゾンビランドサガ(1) (サイコミ)

 大体の内容「ベタ移植。そう考えていた時期が俺にもありました」。2018年秋アニメを席巻した『ゾンビランドサガ』のコミカライズ! ということですが、中盤までは(アニメで)もう見た。と言えるくらいにべたべたのベタ移植という存在。なのに、後半からいきなり方針転換というか、どういう心境の変化だ? というくらいに唐突の大きな舵取りが魅力なのが、漫画版『ゾンビランドサガ』なのです。
 先述の通り、中盤辺りまではアニメ版と差異が特にない、完全なベタ移植です。しかし、アニメのノリを漫画にベタ移植できる、というのはそれはそれで凄まじいスキルなのですが、それでも、いやそれ故にもう見た感がぬぐえませんでした。1話を死ぬほど見てしまった影響でしょうか。ある意味その点では巡り合せが悪かったと言えましょう。とはいえ、安梅のノリをそのままにしつつ、漫画での魅せ方というのはきっちりとしているのです。特に1話序盤でのホラー映画ノリをきっちりやっていくスタイルは好感が持てます。まあ、原作の方でもすぐにやらなくなったノリですけれど。それがちょっと好きだったので嬉しかったのです。その辺のきっちりさは特筆出来るものかと思います。
しかし、この漫画はそれだけにとどまるものではありません。後半から唐突に巽幸太郎、オンステージ! が始まるのです。
 それは、巽が営業をしにいく、という話です。アニメの序盤で謎の仕事を取ってきていた巽の、その動きが見れる! というので大変上がるのですが、最初に営業に行ったのが、5話Aパートで登場のドライブイン鳥。ここで、この漫画は、はじけます。というのも、唐突の食レポ漫画になるのです。
 巽、ドライブイン鳥の素晴らしさを堪能しつつ、当然のように食レポを始めます。これはガチで食いに行ったのが分かる内容で、店の雰囲気やタレの味わいなど、細かくレポートしてくる様が、さっきまで俺は『ゾンビランドサガ』を読んでいたはずだが……? と惑乱するに十分なものに仕上がっています。それだけならまだしも、巽が謎のおっさんにトリ皮と枝豆の教えをもらったりしだします。でも、そこでの巽のサガに対する意気込みは、原作では特に言われていなかったことなので、結構重要な内容なのに今更成程! ってなってしまうくらいしっかりしておりました。いや、原作でやれ。
 さておき。
 その謎のおっさんは更に巽をディープサガに誘います。そこは、呼子! ということで原作では全く出てこない呼子の海鮮、特に烏賊の良さを謎のおっさんは巽に教導します。ことここにいたり、全く原作と関係ない展開が爆走しだしました。一応、その謎のおっさんがドライブイン鳥の社長、という呈で進んでいくので、まだ原作と関係ない訳ではない。そう考えていた時期が俺にもありました。というのも、結局その謎のおっさんは本当に謎のおっさんだった、社長じゃなかった! というオチにぶっこまれるからです。なんじゃそりゃあ! ですよ、本当に。
 さておき。
 基本アニメのベタ移植、ながらも突然巽の話にもなる漫画。それが漫画版『ゾンビランドサガ』なのです。