感想 川井マコト 『幸腹グラフィティ』5巻

 大体の内容「今日も美味しく頂きます!」。今回の巻はきりんさん、椎名さんと進路について悩む回がそれぞれ挿入される、受験期特有の悩みがクローズアップされた、それが『幸腹グラフィティ』5巻なのです。
 とはいえ、学生の夏なのでそれ関連の出来事は色々とあります。キャンプ、夏祭り、そしてお彼岸のお墓参り。どれも大変重要な、些細な重要さがある回で、この漫画らしい優しい雰囲気且つ飯テロでありました。特にお彼岸のお墓参りは、ついついおばあさんにきつい事を言ってしまって、謝れなかった、というのが引っかかっていたけど、リョウのお母さんも明さんもそういうのがあって、というのでそれでも付き合ってくれたお婆さんを想うのが良い所でした。お婆さんの人柄がしのばれるエピソードです。
 さておき。
 先にも書きましたように、今回は進路方向できりんさんと椎名さんが悩む訳ですが、どちらも食で一つの解決の道が見える。というのがこの漫画らしいです。最初のタイミングではきりんに、食欲がない! という恐ろしい恐ろしさで異変に気付いたリョウさんが、食べたい物を作ってしゃっきりさせたのが印象に残ります。
 その後の回で、また悩んでたきりんはアキさんと出会ってシンパシー感じたり、一緒にご飯食べた後に悩みを打ち明け、それに対する補助線を引いてもらう形がスマート。これもすくっと収まる形でした。
 すっくりと型に収まる格好です。椎名さんはお母様と前々から微妙な距離があったのが、お母様が親子丼を作ってくれて、そこでふと進路の相談ができて、という食が道を開く感じでそれがまさしくこの漫画らしいと思える所です。お母様、料理下手だというのに、頑張ったというのも効いていたのでしょうね。
 さておき。
 今回の最大の見せ場は描き下ろしの露子さん話でしょう。行く先々で料理人として辣腕を振るうも、満足する仕事場に出会えない露子さんが、何故椎名家を定住の地に選んだのか。その話がなされます。要約すると椎名母の雰囲気にあてられた感じと言えましょう。椎名母の一緒に作るのは楽しいし美味しいでしょ? という言葉に打たれた感じとでもいいましょうか。これもまたいい話でありました。
 さておき。
 今回最大のトリッキーさは、うどん大会の横にも縦にも、縦横無尽のコマ割りでしょう。4コマであることを最大限に使い、横に読める形を取ったとこが本当にトリッキー。こういう魅せ方があるのか! と折を正してしまいます。常にオチがユキちゃんさんだったのは当然だと思ってしまう辺りもこちらの調教具合が極まっている所でありましょう。ユキちゃんさんの食レポは毎度異次元だからしょうがない。むしろそうでない方が困る。
 そんな訳で、進路方面に悩みが、というのが解決して、さて受験にどう向かい合うのか、という話が今後されるだろうから、その時はどういう話になっていくのか。あるいはこの漫画らしい流れになってくれるのだろうけど、どういうトリッキーさを出してくるのだろうか。そういうことを考えつつ、この項を閉じたいと思います。