ネタバレ感想 kashmir 『てるみな』3巻


てるみな 3
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「なぜかノスタルジックな」。我々はkashmirという漫画家をどこまで知っているのか。そういう問い立てをいきなりぶち上げたくなるのが、『てるみな』3巻の持つ味わいなのです。
一応の続き記法を立てましたが、特にネタバレがある漫画でもございません。というのも、これはどういうネタなのか、というのを意識していてもしょうがないというか、そういうのとは遠い位置にある、言ってしまえば雰囲気漫画だからです。そして、いい? ここからが重要よ?(ブラックマンバ感) その雰囲気が、何とも言えない不可思議な方向性を持っているのです。
kashmir先生の持ち味、というのは中々捉えどころがないのですが、一つは4コマ作品で見せる着地点がおかしいボケでしょう。『〇本の住人』や『ななかさんの印税生活入門』などでそれはよく見られますが、そこ辿り着くかー。というアクロバティックなネタとボケとオチが三位一体となって特色として挙げられるまでになっている訳です。
これだけでも十分面白い味わいですが、私はまず一つと言いました。では、もう一つはあるのか? 当然あります。それが、グログロに組み上がった背景描きたい欲です。
kashmir先生は背景描きたい系漫画家さんです。これは特に通常のコマ割りの漫画で顕著です。『百合星人ナオコさん』や『ぱらのま』(1巻感想)でもその背景描きたい欲を見せてはいますが、こと『てるみな』に対しては常の域を超えておりまする。と宣言をしていいレベルで偏執狂なのです。先に挙げた『ぱらのま』も一部妙なアトモスフィアですが、そのようなのとは、また一線を画すレベルで、おどろおどろしいのです。鬼太郎の背景と言われても、いやそれよりもっとヤバいだろ。という、それくらいにガチガチで背景描いてくるのです。好事家には『だいにけいおんぶ』と書けば大体分かった。とされるでしょう。そんな様態です。あるいはあれよりも更に趣味を実益にしたというレベルで、これは持ち味だけど誰が求めているんだ? 俺だぜ! って謎のマッチポンプを自分でしてみるくらいには、とにかく尖っています。干物の回とか、動物園の回とか、これこそ本当に偏執狂としか言いようがないくらい、尖りに尖った背景の数々。あるいは、この漫画は背景を楽しむ漫画なのではないか。と錯覚してしまいます。
とはいえ、基本は可愛い猫耳女の子と架空鉄道を楽しむ漫画です。そこに背景描きたい欲とおどろおどろしいのに怖くはないが足されてわけのわからないものになっているのです。怖い話ではない、でもなんかみょうにぞわぞわする。そしてなんだか知らないけど、見た事もない、見ることもない、見るはずのない、そういう世界なのに、なぜか妙にノスタルジックを刺激する。なぜか望郷の念に捕らわれる。そんな位置に到達しています。これが更につき進められたらどうなってしまうのか。ということで変な興味が出てしまいます。もっと長く続けばいいや! と書いて、この項を閉じたいと思います。