ネタバレ感想 高橋慶太郎 『貧民、聖櫃、大富豪』3巻


貧民、聖櫃、大富豪(3) (サンデーGXコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「1兆越えの大火力!」。ということで、この話の中でも屈指の資金力を誇る二人の戦いや、聖夜さんの屈辱などが繰り広げられるのが、『貧民、聖櫃、大富豪』3巻なのです。
聖夜さんの屈辱話は4巻に続くのでここでは触れず、大火力戦の話、そしてそれに付随するであろう、この漫画の大前提の妖しさについてつらつらと書いていきたいと思います。
大火力戦の方は、しかし実は話にならない大差があります。アンヌマリーちゃんの方の資金力が、1兆7000億、という本当の意味で桁が違うのです。その大火力を前に、ランディー君側は大苦戦、という流れであります。ランディー君自体もそこまで金がない訳じゃないし、属性の相性もいいんですが、それでも全然駄目、というのでどうなるか。と思ったら安倍野さんがちゃちゃを入れて、流局となりました。安倍野さんが言うように、一強になってしまうと後は個々に潰すだけになってしまいますし、漫画的にも美味しくない、という判断ではないかと思ってしまいました。ということは、しばらくはこの一大勢力であるアンヌマリーちゃんをどう崩すか、という話になっていくのかな、とも。
それはさておき。
バトルの方が一筋縄ではいかないのが提示されたと同時に、この漫画の根幹部分についての言及、軽くなぜる程度とはいえ、があったのもこの巻を印象付けます。那由他君がそのなぜる役をしていますが、そこで出てきたのは、結局金はどこへ行くのか。であります。
実際の所、『箱』が金で魔法のカードを配る、というのがこのグレートウォルスの肝ですが、しかしその時使った金はどうなるのか。というのは全く分かっていないことが提示されます。そしてそれが、アンヌマリーちゃんの大盤振る舞いを見ればわかるように、最終的にとんでもない額が突っ込まれるんじゃないか、と提示されます。
その金は、ではどこへ? これは個人的に思っていたもう一つの根幹部分、つまり、何故金なのか? という部分とも繋がるように感じています。
そうなんですよ。魔力とかある世界なのに、その魔力の優劣ではなく、金で解決しようとしているんですよ。ここが、この漫画の特異なところであります。この、金で力を買う、というのが全く類を見ない訳です。そして、それが故に金持っているからって勝てる、という単純な話ではなくなっています。
例えばアンヌマリーちゃんは確かに超資金ですが、それをそのまま突っ込めるか、というと、そうではない。なにせ1兆。それがポケットマネーではありません。資産です。それをいきなり大きく崩すと、実生活の方、経営の方で問題が噴出するのは間違いありません。暗闘なはずなのに、思いっきり表の方に影響が出てしまうのです。それだけで、この方法が、金で解決が変なのが分かってきます。暗闘なのに表の影響が強過ぎるし、そもそもその金がどこに行くのか。これは一体どういう思惑が、『箱』側にあるのか。ちょっと一筋縄ではいかない感じが漂ってまいります。いや、本当にどうするんだこの漫画。どこへ行くんだこの漫画。
とかなんとか。