ネタバレ?感想 大柿ロクロウ 『シノビノ』1〜3巻


シノビノ(1) (少年サンデーコミックス)


シノビノ(2) (少年サンデーコミックス)


シノビノ(3) (少年サンデーコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)


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大体の内容「爺の忍者が日本を救う!」。黒船来航! 不穏なそれに対して幕府の打った手は、忍者によるペリー暗殺! その役を任ぜられた最後の忍び沢村甚三郎、齢五十八! ということで爺の忍びが日本救う話。それが『シノビノ』3巻までの話なのです。
現在4巻まで『シノビノ』は出ていますが、形としては1から3巻が黒船編としてまとまっているので、まずこのくくりから感想を書くことにします。
この漫画の良さ、というのは色々あります。ですが、最大のものは歴史の闇に葬られたけど実はこうだったんだよ! という、歴史物だけが持てる歴史の間隙を打つ脚色の妙と、爺主人公という点が、特に記すに値するものであります。一つずついきましょう。
歴史の間隙を突く、というのは後世の作家に平等に与えられた、癒し、と言えるのである。と偉い人は言いました。全くその通りだと思います。歴史としてはこうあるけど、その裏は全く違うかもしれない。何か、未知のことがあったかもしれない。そういう隙をつくことは、色んな人がやってきた、ある意味基本の動きであります。
これを、この漫画もして、色々やっていますが、その中で吉田松陰の扱いが独特で目を引きます。4巻以降のあの人、ここはぼかします、もそうですが、史実だと明治以降に繋がる人物たちの育成を、という人ですが、この漫画だと黒船を強奪してしまおう、という無茶苦茶な行動を起こします。それが阿呆の戯言ではなく、しっかりとした実行力を持って行われ、それにペリー側の目算なども絡まって、爺忍者のやることが増えて大変になる、というシナリオとなっております。この辺の組み立て方は実際巧みなので、勝手に評価が高くなってしまいます。
次に爺主人公。沢村甚三郎は凄腕忍者。でも五十八。週刊少年サンデー史上最高齢主人公です。ちなみに現在の連載で更に年代が進んだので記録更新中です。そんなジンジイですが、先に言ったように凄腕忍者です。黒船破壊工作をきっちり妨害したり、開戦の発端になりそうなのをきっちり潰したり、警備の厳しい黒船にするりと侵入を成功させたり、ペリー配下のヤバそうな相手も軒並み倒しいったり。その様ぶっちゃけチートレベルですが、ところどころできっちりと爺である、という、己の衰えを感じる描写もあったりします。でも、それでもなんとかしてしますというのがこの爺が凄腕たる所以です。もうほんと、身震いするくらい強くてかっこいいのです。この人物設計だけで、この漫画は成功している。と爺好きとしては思ってしまうくらいです。
しかし、この沢村甚三郎、実在の人物だったそうで。実際に黒船に忍び込んだらしく、それはかなり想像を刺激します。実際、大柿先生も刺激されて色々考えていたみたいですが、しかしその年齢は、五十八。大柿先生がツイッターで上げていたラフでは壮年くらいのがあり、年齢知らなかったからそう妄想してたんだな、と理解させられます。と同時に、五十八と聞いてひっくり返ったのだろうなあ、という邪推も働きます。
しかし、ここでこの年齢をいじる、ということをしないのが大柿ロクロウ先生の卓抜したところです。むしろ爺の方がいいんじゃないか? という点に気づいた優れた視座。そしてそれをきっちりと使いこなす剛腕。この漫画家、凄腕なのでは? と思ってしまったのもむべなるかなです。個人的に、今後も見ていかないといけない漫画家さんが一人増えましたよ。
さておき。
とりあえず、歴史の闇を突く話が好きな人や、忍者アクション好きな人、あるいは爺好きには全くもって全力でお薦め出来る漫画であります。特に爺好きにはこういう爺主役漫画少ないので100%中の100%で推しておきます。ジジイ好き、全員買え!
とかなんとか。