感想 服部昇太 『邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん』


邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん (マーガレットコミックスDIGITAL)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「プレゼンという名の暴力!」。進学校で映画同好会を立ち上げた小谷洋一。彼は懊悩していた。映画を語る同士が欲しいものの、進学校ゆえにそんな浮ついたやつがいない! なので同好会は彼一人。語りたいのに語れない!
そんな時、その門戸を叩くものが。それが邦吉映子さん。最初は話せる相手が、と思った洋一だったが、映子さんは普通の映画好きとは違っていたのです。そう、彼女は邦画○○○○、邦キチだったのです! という形で始まる邦キチ漫画。それが『邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん』なのです。
人には偏りがあります。平均的な人というのはそれはそれで平均に偏っているのです。という戯言はさておき、この漫画は最近とみに多くなった映画ネタ漫画です。が、この漫画ではほとんど邦画についてしか語られていません。それもこれも、映子さんが邦キチだからです。そのキャラクター性をぶっこんだことで、この漫画は映画ネタ漫画としてその偏りによって異形という状態になりえてしまいました。それもこれも、映子さんがあまりに邦画が好きで、そしてあまりにも邦画以外について知らな過ぎるからです。そして、邦画が好き過ぎて、この女、歪んでいる! レベルのプレゼンをぶっこんでくるのです。
それが一番よく出ているのが、洋一が傍から見ていてあまりの様子に「プレゼンという名の暴力!」という名言を吐く、実写版『テラフォーマーズ』を見ず知らずのちょっと強面の、『ドリーム』や『グレイテスト・ショーマン』を押してるけど、人たちにプレゼンする回。強面さんたちが多様性! と言っているところで、『テラフォーマーズ』も多様性! 原作には色んな人がいて、でも映画版は都合で全員日本人に! という段階で多様性全破棄じゃねえか! というのに全く気にしないまま嬉々としてプレゼンを続けて、強面さん達がこんな話いつも聞いている奴おかしい! まで言い出すところが最高です。邦キチのヤバさが一番出ている回と言えるでしょう。それ以外でも暴れん坊将軍が出てくるというだけで既に頭おかしい案件のオーズ映画での松平健の重い芝居がいいとか、『貞子3D』の蜘蛛貞子とそれが増殖するけど石原さとみが戦闘慣れしてと言い出したりとか、とにかく邦画ヤバい。と思わせる漫画となっております。見たい見たくないで言うと見たい、でもおっかなびっくり方向で、という気持ちにさせる点は、映画ネタ漫画としては成功しているんですが、それを含んでも映子さんの邦キチっぷりはヤバく、洋一が被害者だ! というのもよく分かるものとなっています。
とはいえ、映子さんは結構可愛い。好きなものを滔々と語る、それがやや頭がおかしい方向性だとしても、というのは人を輝かせます。そして邦キチな映子さんをもってすれば、実写版『デビルマン』すらいいものに見えるからこまります。奇跡、という言葉を出せば大体奇跡だと思いますけどね! その邦キチをもってしても問題点を言い返せなかった『キャシャーン』の問題点の闇の深さも一つ見どころですが、基本楽しそうな映子さんを見れるとそれだけで楽しかったりします。
そういう、ある意味邦キチ一点突破な漫画、それが『邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん』なのです。