ネタバレ?感想 奥たまむし 『どれが恋かがわからない』1巻

どれが恋かがわからない 1 (MFC キューンシリーズ)
どれが恋かがわからない 1 (MFC キューンシリーズ)

奥たまむし 『どれが恋かがわからない』
 大体の内容「同時多発的百合モテ!』。
 主人公である空池メイさんは、高校卒業時に百合的な意味で好きだった親友に彼氏ができたことにより、失恋。なので、大学では彼女作る! と力強く心の中で宣言します。
 ですが初手から意気込みが強過ぎて逆にがっつがつといけず、あわや大学ぼっち? となったところから、教室で出会った白沢リリと巡り合い、そしてここから順繰りに計5人の女性と出会っていきます。
 彼女らに対してこれは恋心か!? というのを覚えてしまうのを五連続する一話から、この漫画はスタートします。そういう同時多発的百合モテ漫画が『どれが恋かがわからない』なのです。
 奥たまむし先生と言うと、爽やかな百合というジャンルの方という印象で、この漫画もその影響下にある部分が大きくあります。これについては、メイさんが大変さっぱりとしたとろがあるからでしょう。
 百合というと後ろめたさというのがあった時代は去りました。少なくとも、百合漫画の世界では後ろめたさとはまた違うアトモスフィアの暗さと言う感じになっていると勝手に感じています。
 そこに対して、奥先生のそれは陽性なとこがあります。これは狙ってやっていることだと思いますが、それゆえに、この漫画はとんでもないゲインを得る形になっています。
 これは女の子が好き、という点に対して疑問点を持たない、と言った方が正確でしょうか。ここで男じゃなくて女の子が、という向きにならないというのが、現代百合的である、という台詞を吐けるものかと思います。次代は動いているのです。
 さておき。
 ここでさっぱりした百合しかいけない訳ではない、というのが奥先生の手管の強さです。これは5人の女性たちが、お互いをメイさんを支点として交錯する場面で、お互いの存在を知っていくがゆえにメイさんの女性関係が危(ヤバ)い! とどこかの歌舞伎町四天王顔で戦いてしまいます。この辺のじっとりとしたとこもきっちり出来る、というのが奥先生の強さだと勝手に思っています。
 というか、今はまだ5人に対してほぼ均等に恋心がある状態で、自分のどきどきが誰に対してなのか分からない、と言うのが、今後の火種としてかなりのこれはかなり揉める理由になりそうではあります。
 女性陣の5者5様の、メイさんに対する気持ち、というのも中々に偏っています。というのも、5人が5人とも、ある一つの五感で相手が好き、という謎のフェチズムで攻めてくるからです。
 最初に逢うアイドルのリリさんは触覚。
 次に逢うマリア先生は視覚。
 演劇の音響をしている湊さんは聴覚。
 キス魔先輩といわれるカリンさんは味覚。
 そしてルームメイトのカオルさんは嗅覚。
 五感で相手が好き、それもメイさんが、ということで、怒涛のフェチ漫画としての側面もこの漫画は持ち合わせています。
 こういうタイプで井上和郎あいこら』を思い出す人がこの漫画読んでいるか不明ですが、あの漫画の方向性が、一人の男が色んなパーツ持ちを、だったのが、色んなフェチ持ちが一人の女性を、という方向になっている、というのが面白い。フェチ持ちを使うとラブコメは色んな濃さを持てる、というのが如実に出ていると言えるでしょう。
 『あいこら』では視覚的、一部聴覚的もありますが、に終始した部分を、この漫画は意図してではないんだけど、更に発展させた、というので、それだけでエッジが鋭くなっています。特に味覚どうするんだよ、の点をキス魔で済ませる手管には脱帽です。
 これが男女の関係だとかなりデカいムーブになるキスを、女性同士且つキス魔の設定によって、キスする方がかなり軽くキスするようにしたのがマジで盲点でした。キス魔! なんと聞こえのよい言葉か―――。
 さておき。
 この漫画、メイさんが明確に五人から好意、それもくそでか感情になりそうなくらいのを向けられている、というのがいつか爆弾になる、と思っていたら1巻最後でもう既に弾けろ! ってくらいに爆発寸前です。これは百合ラブコメだから、なんとかなるんでしょうが、五人も好きな人がいると弾けの早さが桁違いなんだな、と変な感慨すら覚えます。
 はたして、メイさんが本当に好きなのは誰なのか。あるいはこいつらころころしあい始めたりするんだろうか。そういうギリギリを攻めてくるだろうけど、その攻めがどこまでやってくるのか。
 そういう部分を期待しつつ、2巻を待ちたいと思います。