感想 田口仙年堂「吉永さん家のガーゴイル<6>」

日向悠二ファミ通文庫・640円・ISBN:4757721331
さてさて今回のお話は和己兄ちゃんの学校で巻き起こった騒動とその顛末であります。 ある演劇の台本をめぐって起こる怪事件。 犯人からのメッセージ、「八年前のジャンバルジャンが見ている」。 繰り返される脅迫。 学校で本当に起きた「八年前の事件」。 姿の見えない脅迫者。
はたしてその意外な正体とは? そしてはたして、この演目は無事に演じられるのだろうか?
と、サスペンスな展開を見せつつ、きっちり「今」と「八年前」がかみ合って見事にすっきりとしたラストへと導かれます。 このかみ合いが本当に特筆すべき見事さで、台本をめぐる因縁が分かってくる中盤からラストまで一気に牽引されました。 ある台本とそれにまつわる深い因縁。 しかしだからこそ、「この劇は成功させなくっちゃだめだ!」という気持ちに読んでる方がさせらました。 そしてその気持ちを見事に昇華するラスト。 いや、本当に良い。
さておき。
この本を読んで思ったのは、
「ミステリーというのは単なるお話の手法でしかない」
という事でしょうか。
ミステリーの仕方が見事に決まって驚かされて、しかしその驚愕がそこだけで終わらずに、ちゃんと以後の行動への動機として間接的――読者側に――残るという、まさにお話の為にミステリーがあるというお手本みたいなお話でした。
ミステリーって言われるものって大体「謎」を理解しようとする事を面白さに繋げるものなので、謎」の為にお話があったりするんけど、それゆえ「謎」が解けると面白さが格段に落ちてしまうモノが多いと思います。 しかし、この話の場合、「謎」が解かれてもお話の面白さは如何ほどにも揺るがない、いやそれどころかより一層面白さが際立ってくるんですね。 その辺が本当にすごいなあ。
それにしても、ジャンバルジャン姿の双葉の可愛さは尋常じゃねえなあ。 ああラブリー。