ネタバレ?感想 隆原ヒロタ:青木潤太郎 『また来てねシタミさん』1巻

また来てね シタミさん(1) (週刊少年マガジンコミックス)
また来てね シタミさん(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 大体の内容「ご当地殺法ご賞味あれ!」。ちょっと特別な観光旅行会社「ミミミ観光」。旅行予約のやり方も、ある番号に3分かけ続けていたら初めて、というもの。それは当然、まともな観光旅行会社ではありません。「ミミミ観光」、そこは暗殺を斡旋する、死への旅路という、ある意味では正しい観光会社なのでした。
 そこで暗殺業を営むのが、表紙の娘さん、シタミさん。彼女が、あちこちの県に行き、その土地にありふれてあるもので暗殺を行うのです。それも名付けてご当地殺法!
 ということでシタミさんがこの世の悪をご当地殺法で暗殺していく漫画。それが『また来てねシタミさん』なのです。
 シタミは暗殺者なので、当然バックボーンがありますがありません。暗殺者として精製されたという過去があり、それ以前の過去は、シタミさんの描いた絵しかない、ということです。
 子供を暗殺者にして、というやつなら定番ですが、そこに旅行成分を組み合わせる事により、その見た景色にいつか会えるのか、という部分が明確に立ち上がっているのが、と言うのと合わせてこの漫画の特色となっています。
 そう、旅行! この漫画の面白さは旅情と暗殺が絡まりあうことにあります。監視カメラのゆきとどいた今どきに! 暗殺者なんてやれるのかい! という部分は旅行成分からの暗殺の仕方、ご当地殺法に繋がっていきます。つまり、相手が殺された、とならなければ、当然監視カメラなどの精査も行われない。そして、そこにあっておかしい物でなければ、そもそもクソ悪いやつら。勝手に死んだんだろう、という風に処理される。そういう、今どきにあってこその、ご当地殺法なのです。
 当然、殺法として通じるのか? というやつはあります。1話目のシジミの殻で殺せるのか? 殺せるのか? 殺せるのか殺せるのかい! ってなるんですが、漫画としてのハッタリが完全に決まっていて、成程、殺れるのね。とするっと納得させられます。その辺りの手際は見事と言っていいでしょう。個人的には北海道回のあれは流石にギリギリアウトじゃねえか? とか思いましたが、ご当地ゆえに確かによく置いてあるんだろうなあ、というのもまた分かり、そこの振れ幅でクツクツと笑うばかりでした。
 この巻で一番ハッタリ力の効いた暗殺は、阿波踊りからの八極拳での暗殺でしょう。踊りの中に入り、その動きから自然と接近からの接触、そしててつざんこうめいた暗殺技! 様々な意味においてご当地殺法の振れ幅を感じさせるところです。そもそもいくらなんでもそれで殺せるのかよ! なんですが、相手は死んでいるので死ぬんだ……。という納得しかありませんでした。両義的にタツジン!
 さておき。
 シタミさんが組織で暗殺者として育てられたので、当然その絡みの話も出てきます。組織自体は何故か崩壊したらしいのですが、その残滓、作られた暗殺者たちは日本に散り散りになっている模様で、あるいは敵対者として相対します。北海道回のユキミさんとか、徳島回の某かとか。そこともまた火花を散らす形になるのだろうか。という感じですが、それならもうちょい長く続いてほしいもんだなあ、全部見たい。という感じには大きくバックボーンとして存在する場所であります。
 さておき。
 この漫画はどの辺りの系譜としてみるべきか問題というのが、私だけにあります。暗殺者の話、となればやはり必殺シリーズな訳ですが、そことはやはり現代であるという点で大きな相違があります。というか、江戸期みたいな頃よりも確実に楽に早く正確に、旅をすることが出来るからです。必殺シリーズにも股旅なタイプのシリーズもありますが、これらはある程度先にどの辺りを通っていくか、つまりある旅の中で暗殺を行い、また旅を続ける訳です。それに対して、現代はちょっと遠くても日帰りすら可能な時代です。なのである場所を求めて色んな所に、も可能になる訳です。
 それが可能になったがゆえにこの漫画は成り立つ、と考えると中々面白いのです。それも色んな県に行くから、色んな観光をするし、食べ歩きもします。ある意味観光案内みたいな側面もあります。昔以上に観光というのがやりやすいからこそ出来る仕手ですね。ついでに、食べ歩きするのはたぶん相棒のカザミさんに美味しかったものを、という部分もあるんだろうなあ、というと若干のキマシ塔も建立されるのもよいです。シタカザ、ありですわよ。
 さておき。
 それであっても、暗殺方法がトンチキになるのが楽しい所です。やはり1話目のシジミの段階からトンチキ具合が凄く、それで殺れる、んだあ……。となるのですが、それ以降もやり方はトンチキというか、殺れる、んだあ……。ってなっていくのがいいです。そこの説得力は相当高いので、トンチキな殺しが見たい方には大変お薦めなのですが、自分みたいな、そういうタイプの人がいるのかどうかというと謎なのが難でしょうか。この殺ったから殺った! 感は見事なので、好き者は寄って集っていただきたい所です。
 さておき、次の巻ではどんなトンチキ暗殺が為されるのか、あるいはバトる展開になるのか。そこを含めて楽しみな一作であります。出来ればネタ切れで四苦八苦するくらい長く続いてほしい。案外ネタは切れないかもしれませんが。
 とかなんとか。