ネタバレ?感想 木々津克久 『フランケン・ふらん Frantic』9巻

フランケン・ふらん Frantic 9 (チャンピオンREDコミックス)
フランケン・ふらん Frantic 9 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「既に精神的グロの匠としての地位を確立しているというのに」。まだまだ、俺の精神的グロから逃れることはできないぜ! という木々津先生のイカレ顔が仄かに見え隠れするのが、『フランケン・ふらん Frantic』の9巻なのです。
 『フランケン・ふらん』シリーズには高い精度の精神的グロ、映像的グロもあるけど、それよりも高濃度の精神に来るタイプのグロを叩き込んでくるものです。
 その矜持を、9巻最初の話、53話『その女、再び』できっちり魅せてくるので、もう駄目。やめてください! タヒんでしまいます!
 その女、とは黒須間さん。以前ふらんさんに不信感を持ち、何をしているか、というのを暴こうとした過程で、研究所を破壊した人です。
 そして、その研究所の研究が、自分の娘の病気の進行を抑えるものだった、というので絶望してしまった人です。
 この話を、53話最初のページできっちり見せる、というので、皆忘れているよね? という木々津先生のご厚情が発動していますが、あんなに精神的グロになる話を忘れている訳ねえだろ! というのが読者側の言い分です。
 ふらんさんに不審をもって、その端緒をつかもうとしたという点はふらんさんの存在がヤバイのである種当然出る反応のひとつではあります。その過程で研究所を破壊してしまったのも、そこにあったのが見るからにヤバイやつだったのと、行きがかり上というので、ある種仕方ない。
 なのに、その結末が娘の病気が進行してしまい、意識不明になってしまった。というので、自業自得というにも自己責任というにもあまりにも辛い状況になった、そんな精神的グロをかっちり見せておいて忘れていますよね? じゃないんよ。まであります。
 そして、その回では黒須間さんはふらんが作ったものを探して奔走するのですが、その技術は実は以前あったGの帝国の巨人(正体はGに捕まってしまったジャーナリスト。動きをGに制御されている)の制御システムになっていました。その上でGの帝国の巨人に大ダメージを食らってしまった黒須間さんは、その巨人と同じシステムを移植され……。
 という超トンチキ話ですが、やはりGに動きを支配されるという恐怖と、更に最後に普通にやっていればそれが手に入ったのに、という精神的グロをかましてきて、精神的グロの波状攻撃になっています。
 この畳みかける精神的グロの攻撃にはまいりました。基本トンチキ話だけど、Gに操られるのだけでも嫌すぎて精神的にグロいのに、もう一段あるのでかなりのダメージでした。
 一応、9巻のおまけ漫画でこの話のエピローグが語られるんですが、そこもそこで普段はしない汚物系のネタをガンガンぶっこんでくる!
 ぶっこんでくる!
 ぶっこんでくる!
 そうぶっこんでくる!
 そこをガツンだ!
 みたいな勢いでゴリゴリに汚い話をしてきて、マジで酷い。この漫画を読んでいる人達、それも単行本を買っているならこれくらい大丈夫だよね! みたいな配慮が行き届き過ぎています。そりゃあ、『フランケン・ふらん』買ってるような身だから、それくらい大丈夫だけどさあ! その信頼をこんな使い方しないでください!
 という感じでトンチキな話でも精神的グロを横溢させる木々津節150%の9巻でした。他の話も、『金田一少年の事件簿』が昔パクったネタのこの漫画流をかましてくる回とか、アーノルド・シュワルツェネッガーが妊娠した映画を思い起こさせる回とか、精神的グロもイカレ具合も存分にある回が充満していて、木々津先生のビンテージが芳醇の時を迎えてやがる! としかいいようがないのが『フランケン・ふらん Frantic』9巻なのです。