感想 木々津克久 『フランケン・ふらん Farntic』1巻

フランケン・ふらん Frantic 1 (チャンピオンREDコミックス)
フランケン・ふらん Frantic 1 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「相変わらずの木々津節、短編を添えて」。VS開田さんの好評を持って、あのふらんが帰ってきた! グッドエンドでもトゥルーエンドでもビターエンドでもバットエンドでも、その味わいには言い方はありましょうが、しかしここはひとつ木々津エンドという言葉を持って、その内容についての言説に終止符を打ちたい。という訳の分からないムーブをファンに誘発させるのが、木々津克久という漫画家なのであり、『フランケン・ふらん Frantic』という漫画なのです。
 『フランケン・ふらん Frantic』という漫画は、完全に『フランケン・ふらん』の続編です。しかし再登板であるというのに「皆さん、覚えておいででしょうから特に出てくる人物、特にふらんについては語りませんよ。いつも通りだとは見せますけどね」という所作をぶっぱしてきます。確かに、1話目の流れでふらんというのがどういうモノであるか、というのはしっかりと語られます。ゆえのそれで十分だろ、という所作です。ですが、いくら何でももうちょっと新規ユーザーに配慮があっても、とも思いました。しかし、よくよく考えてみると我々ファン読者側が知っていることは、1話目以上のことはほぼない、という事実にぶち当たります。都合、『フランケン・ふらん Frantic』は3話しかないのですが、その3話の情報の総合で、ほぼ100%『フランケン・ふらん』という漫画はこういうのだ、と提示しきっているのです。ふらんが超絶の医療テクと底抜けのお人よし(婉曲表現)なのと、斑木博士があちこちで何かしているのくらい覚えておけば、ほぼ問題ないのです。後、沖田とかヴェロニカとかガブリールとかいたなあ、くらいしか予備知識は必要ない。そういう意味では、『フランケン・ふらん』が如何にタイトな出来だったのか、というのを感じさせられます。
 さておき
 この漫画から『フランケン・ふらん』に侵入した人は、そのオチの得も言われぬ味わいに困惑したかもしれません。木々津漫画侵入がこれならなおのことです。『フランケン・ふらん』は木々津漫画である『名探偵マーニー』や『兄妹』とは延長戦上ながらも、それよりも更に強いオチの味わいを持っています。それも美味ではなく、えぐみ。アクが強いと言った方がいいでしょうか。導入でも書いているように、オチ具合が既存のそれよりも独特で、まさしく木々津エンドという言葉がしっくりくるのです。特に、医療という側面があるので、前掲二作に比べて絵としてのグロがそれを倍加させます。2話目のいきなり解体されているヴェロニカとか、この漫画のノリが久しぶりだったので木々津漫画に慣れ親しんだ自分でもしばらく思考停止してしまいました。なんかおかしいぞ? と。これが初見の人だと、困惑というよりそういう解体が起きているという事実にすら突き当らないだろうくらいに唐突ですが、しかしこのグロさが2話ではジャブだったりするのが侮れません。その後のQOEの話のグロさは、絵的なグロさに精神的なグロさも合わさって、後味が悪すぎるにも程があります。意味が分かったら胸糞案件なので、嫌いな人はてきめんに嫌悪感で汚染されるレベル。でも、うん、これこれ! となってしまうのが木々津漫画に毒されたものの末路、キギツストの末路なのです。マーニーも兄妹も好きだけど、やっぱり映像的にガチのグロで攻めてこないと!
 さておき。
 先述の通り、『フランケン・ふらん Frantic』は3話しか入っていません。残りは読み切り2作とVS開田さんです。読み切り二作の方はちょっと木々津漫画にしてはアプローチが違う感じで、平素の話に見えてファンタジーな感じ、しかしグロい。という言葉にするとわけのわからないものです。個人的には犬の話の方が好きですね。実際に会話で来たら、というファンタジーががっつり縊りころころされるとこがいいです。
 VS開田さんは『開田さんの怪談』の方のVSの前の話。開田さんがふらんについていって酷い目に遭うという話です。バトル要素がないけど開田さんの勝ちみたいになっているのが好みです。この話で見ると、開田さんってかわいいなあ、でありますし。徐々にミステリアスから年ごろの少女の側面を濃くしていった過程の一端という感じです。そしてふらんは相変わらず可愛いというより不穏を感じさせます。底抜けのお人よし(婉曲表現)の部分が本当に不穏なんすよね……。根底からして普通の人とは遠隔地にある精神ですし。そこが本当にこの漫画をオンリーワンにしているなあ、と感慨を持ったところでこの話終わり!