大体の内容「このJK、凶暴につき」。
やさぐれアラサー三人女は困っていた。どいつもこいつも微妙に先がないどん詰まり気味。特に表と裏、どちらの格闘団体からもドロップアウトしてしまった天馬さんはガチでどん詰まりであった。
しかし、ふとしたことから天啓を得た天馬さんは、裏の格闘団体の立ち上げを目論む。そしてそこの目玉になりそうなJK、本郷姫奈さんを見つけ、自分側に引き込むのだが……。
この漫画は一応格闘漫画のほうに分類できる漫画です。しかし既にサンドロビッチ・ヤバ子原作で格闘漫画はあり、対象が女になった以外で引きがないと単なる二番煎じです。
というのはサンバ陣営も重々承知しているのか、この漫画は三種のレイヤーが折り重なってできている、意外とテクい漫画になっています。
まず、格闘漫画としてのレイヤー。これに関してはMAAM絵で格闘漫画できんのか!?などと、その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ。というくらいにはきっちり格闘漫画として見映えするものがありました。殴ってるし蹴ってるし当たってる。
ただ、本郷さんが強すぎて、1巻後半まで試合はほぼ瞬殺という展開になり、なのでもうちょい戦ってるとこ見たいなあ? みたいな気持ちにさせられます。
とはいえ、そこもまた重々承知、0話の段階で瞬殺過ぎんだよって話が出てくる漫画なのです。
また、本郷さんが天馬さんとやり合う場面などで引き分けな展開もしてたりします。この辺の分かってるんだぜ? なムーブは正直好みです。好感度高い。
さておき。二つめのレイヤーは団体運営のレイヤーです。天馬さんが腐れ縁二人と女性のみの裏格闘団体を立ち上げるわけですが、そこでどう運営するか、みたいな話がちょくちょくあります。893の頭(ただし弱小)のコネでコンパニオンもってきたり、対戦相手を探してきたりと、三人の出来ることが組み合って、団体を運営していきます。
ここが他の格闘漫画と趣きを異にするとこです。あんま興行師の向きでやる漫画少ないですからね。
更にその運営をどうするかの中で、本郷さんをスカウト(半分拉致)することでこの漫画は起動していく形になります。
この話の中で、この団体運営は派手さはないけど重要な部分です。如何に本郷さんで儲けるか、というのが、しかし後述しますが本郷さんが一筋縄ではいかないので、そのせいで運営面で支障をきたしたりします。そういう部分がこの漫画の足元として下支えしていたりするのです。地に足がついてるってやつです。
最後の三つめが、本郷さんの謎に迫るレイヤー。
本郷さんは、この漫画のメイン格ですが、とにかく謎が多い。
昔、ヤバい宗教団体に属していたことがある。
その団体が作ってた神経ガスを持ち逃げしたのではという疑惑がある。
そもそもそのヤバい宗教団体が過激化したのは本郷さんがはいってからだとも言われている。
なので官憲の方もマークしている。
など、とにかく本郷さん周りは不穏です。
そして本郷さんも何考えてるか分からんヤバいなやつです。本人も不穏。
ここがどうなっていくのか、神経ガスはどこにあるのか。そういう謎を追う面も、この漫画にあります。
というか、本郷さん、格闘能力高過ぎるのは百歩譲っていいとしても、あれだけ強者に飢えてるやつがお嬢様やれるわけないやろ! と言う部分があります。辻で格闘家ボコってても不思議がない、というかむしろしてないほうがおかしくねえか!? まであるのです。
そう言う意味において、この漫画の主軸としては存在感十分だけど、扱いきれるのか、という亜空方面の心配があります。
本郷さん、とにかく何考えてるのかわかりません。強いやつに飢えているくらいしか、読者に内面を見せません。謎なのです。
格闘漫画として、主人公がここまで謎なのも珍しい部類で、そこも狙ってるのはわかります。といっても、この漫画どこに着地するのか分からないので、どうなるのか。
この三つのレイヤーが折り重なることで、ある意味で普通の格闘漫画では断じてないもの、と言えるものとなっている。
ならなんだよ、というとわりと訳のわからないもの、としか言えません。
というか、格闘漫画ってとりあえずのゴールあるのが多いけど、この漫画のゴールは分かんねえんですよ。何が勝利条件なんだ。どこにシュート叩き込むつもりなんだ。
そんなわりとわけわかめな漫画、それが『一勝千金』なのです。