釣言『無限のフロンティアEXCEED』のレベルデザインについて。

 釣言ゆえ、適当に語ります。

無限のフロンティアEXCEED』というゲーム

 まず『無限のフロンティアEXCEED』(以下EX)のレベルデザインより先にゲームデザインというのはどういうものか、という辺りを軽く触れましょう。
 まあ面倒なんで一言で言うと戦闘重視、という偏重であり、その戦闘も『殺られる前に殺れ!』という非常に脳筋臭の漂う体育会チックなテイストなものであります。
 それは特にボス戦に表れていて、気を抜くと敵に7割〜10割近いのダメージ叩き出される為、一体の倒し残し、少しの回復ミス、精神コマンド*1し忘れ、交代への躊躇がそのまま死に直結します。よって出来るだけ瞬時に敵を滅する必要、残した場合、如何にダメージを減らす工作をしておくか。またはダメージや戦闘不能をいかにすばやくリカバーするか、が鍵であり根幹で、戦闘にまつわるシステムの半分が敵をどう素早く倒すか、残り半分がいかに死なないようにするか、というわかり易い"生きるか死ぬか”で成り立っている。それが『無限のフロンティア』(以下ムゲフロ)なのです。そして、その続編である『EX』もご他聞に漏れません。*2

『ムゲフロ』における“レベル”

 さて、そういう気を抜いたら後ろからバッサリだ! な殺りつ殺られつつな『EX』ですが、では“レベル”とは、となると、それはそのまま倒しやすさ、死ににくさの総合値と捉えることが可能です。攻撃力やクリティカル率や技の威力が前者、HPや防御値や回避値が後者の具体的な指針ですが、それらをひっくるめた、総合的な力というのが、このゲームにおける“レベル”という概念になります。
 まあぶっちゃけ、普通のRPGのそれと基本的に同じものですが、それでも1レベルの価値というのは、他の作品より殺りつ殺られつつの傾向が強いこのゲームにおいては非常に高く、それゆえにレベルの上げすぎはギリギリ感の喪失にもつながる為、このレベルの制御、つまりレベルデザインというのが非常に重要視されるのです。
 その点で言うと、前作にあたる『ムゲフロ』は若干の問題をはらんでいました。

無限のフロンティア』のレベルデザインの問題

 それは、「敵の持つ経験値が、実は先に進んでも甚大な差が出ない」というものです。
 簡単に言うと、今いるのダンジョンで手に入る経験値と、その一つ前のダンジョンとで、手に入る経験値にそれほど大きな開きがない*3、ということです。更に必要経験値の上がり方も他のゲームに比べると非常に緩やかです。となると答えは一つ。
 先のダンジョンの敵が弱くなるまで、一個前の弱い敵でレベル上げすればいい、ということ。
 更に『ムゲフロ』は敵の出す金もあまり変化が無い、言ってしまえば金を稼ぐなら弱い敵なぶってヒャッハー!汚物は消毒だー! の方が楽な場面がわりと散見されたのも、このレベル上げ、あるいは上げ“てしまい”に拍車をかけてしまう部分もありました。このせいで、ボス戦以外は油断すると楽勝化してしまい、更には敵を倒すのに時間が掛かる事もあり、「戦闘かったりー」という印象を覚えてしまった、と言います。*4
 この辺のレベルデザインはしかし、『ムゲフロ』のゲームデザインの方向性、というか進行に関わる部分から考えると、致し方ないものがある、とも言えます。
 というのも基本、元の場所に立ち戻る機会というのが皆無なゲームだったからです。戻っても良い武器良い防具良いアイテムが手に入ることはほぼ無く、体力回復もどこでも値段は一律上がっていき、それに全回復ポイントも多い。後に戻る必要がどこにある? と言わんばかりのつくりです。*5
 そして実際、大体ダンジョンを逃げずに戦い、ボスに経験値等に倍率が掛かるのをして倒し、すると次のダンジョンに丁度いいくらいのレベルと資金になる、という風に戻らず突き進むプレイの方向でバランスを取ってる節もありました。
 そこから考えると、弱い敵をなぶる攻略は想定はしていてもレベル上がりすぎる弊害までは考えが及んでいなかったか、わかっててあえて無視したか、あるいはそこまで調整しきれなかったか、という解がいくつか導き出せますが、まあ些事です。

無限のフロンティアEXCEED』のレベルバランスの取り方

 一方、その続編たる『EX』はどうしたか、というとこの辺の問題にきっちりと対応してきました。こちらのレベルに応じて、敵から得られる経験値が低くなっていく、いわゆるレベル差補正を採用しています。また先に進んだ方が得られる金も多くなっているのもポイントで、金稼ぎも先に進んだ方がリスク分には稼げる、という風に変化しました。その為、基本的に前に進んだ方がリスクはあるがお得で面倒も無い、という仕組みに生まれ変わっています。*6
 そうであるがゆえに、ボス戦は大体丁度いいレベルでの戦いとなって殺り殺られ、また雑魚戦もこなさないとお金がたまりにくい、という風に、適度な緊張感を持って戦えるようになりました。
 この辺りは前作の反省点としてきっちり変えてきた、というのもありますが、『EX』では賞金首システム*7や偉大なる下乳大陸の人のおかし*8や絶対無敵領域の人の装備品を買いに、というもののおかげで戻るという選択肢が加わったがゆえ、とも見る事が出来ます。どんだけ前作が前のめりだったんだよ!って気もしますが、きっちりと前作の反省を踏まえているのはいいことだと思います。*9

レベル上げ、してく?

 さておき。
 この、前のめらせるバランスというのは実のところ、RPGにおいては必須のバランスではないか、と思っております。
 基本、RPG、ことJRPGといわれる分野においてはストーリーを見せる、魅せるものとなっておりますが、その時の最大の問題は、ストーリーの遅滞を招くレベル上げではなかろうか、といううがった見方をしてしまいます。
 うがった見方で、他に突っ込み所があるのは重々でありますが、しかし、ストーリーを魅せるというのにレベル上げの時間というもの、いってしまえば不純物が入りこむのは、やはりいかがなものか。小説や映画等にレベル上げは必要ない、という点から考えても、レベル上げを如何せん、というのがJRPGにおいてまずもって必須の問題意識だろう、とか思うのです。
 そういう意味において、『EX』のレベルバランス、ギリギリ勝ててギリギリで進んでいくというバランスは、見習うべきところの多いものである、と勝手に断言してみるのでした。
 とかなんとか。

*1:魔法みたいなもの

*2:今回更に『コンボを繋いだ方が正義だ!』という、前作でもあった部分が殊更強調されており、特にヒット数によって戦闘中の行動力である“com”が回復する為、コンボを繋がないと明らかにダメージも回復も目減りしてしまうので、ぶっちゃけ正直コンボ繋がないプレイは上級者向けとなりそうですがそれは余談です。

*3:たとえば300→400という風に、100くらいの差しかないことが多い。更に最終盤でも1000いかない

*4:その辺の雑魚が楽勝だと、ボスも油断無く行けばかなり楽勝なのですが、これまた余談。

*5:そのわりには「回復アイテムが同じ効果のが二種類あって最大で持てる量が15なのを実質30に出来るから、それを買いに戻る」とか、「SPがボス戦前で切れそうだから回復ポイントまで戻る」とか、かゆいところに手が届いてない所がありましたけれども

*6:基本的なRPGのMP代わりのSPが戦闘後で回復出来るようになったおかげで回復ポイントがほぼなくなり、全回復するなら出来るとこへ戻らないいけなくなったのも、そのダンジョンで遅滞しなくなる要因になっていますが、まあ余談です。

*7:手配書というフラグを立てると出てくる敵

*8:高性能回復アイテム

*9:上の注釈にある違う名前の同じ性能アイテムは、今回は取得限定でその分少し性能アップと言う風に変わっています。なので、アイテム自体は先に進んでも以前買えた物は同じように、そして先に進んだ方がいいアイテムが手に入るようになって、これまた前に進むように促していますが、それはまたしても余談です。