感想 海羽超史郎 『STEINS;GATE―シュタインズ・ゲート― 円環連鎖のウロボロス 1』

 内容を要約すると「鳳凰院凶真の戦いが、今始まる!(ジャララーン)」。正直承前として話が積みあがっていっただけ、というのが1巻目であるこの巻の印象ですが、しかし1巻ほぼ丸々使って積みあげたからこそのラストのまくりあがり方、絶望的な盛り上がりなので、その積み上げ、イエスだね! って言いたくなる出来栄え。というか、そのせいでもの凄い鬼引きになっており、正直に申しまして「ここで引くのかよ!」と叫んでしまいました。もうなんだよー! どうなるんだよこれー! 次が冬っていつだよそれ! 待ってろってのかよ! 待てねえよ! 気になるよ! ってことはあれか、ゲーム買えっていうお導きか! お導きなのか! とか叫びたくなるのでありました。
 さておき。
 承前として話が積みあがっていく、というのが上でも書いたようにこの巻の特徴なわけですが、その積み上がり方がゆるめの日常パートと、しっかりとした軸足のあるDメール実験パートで構成されており、実験パートが終盤の展開を引き起こし、日常パートがその展開を絶望に彩るわけですが、そのどちらも非常に面白い。どっちが欠けても積み上がりはならなかったわけだし、きちんと伏線も張られ、それでいてそれによる混乱のバランス感覚も素晴らしい。なるほど、この元のゲームが名作であるのは伊達ではない、と感じさせられます。その上で、海羽超史郎味も平常パートの積み上がりに貢献しているんだろうなあ、とは感じられます。『ラスト・ビジョン』で見せた平常のぼんやりしたゆるさ、というのが海羽味の一つ。それを上手く活用し、それゆえにそれの崩壊を惜しみ絶望の気持ちにさせてくれる展開の妙には唸る思いです。
 にしても、ってことで話をすり替えてキャラ萌え的な話をすると、どう考えても鳳凰院凶真ことオカリンが最萌えでFAなのでしょうか。だってオカリンいい人過ぎる。マッドサイエンティストぶってるけど中身は全然いい人じゃないですか。仲間思いだし、気配りも出来るし、マッドらしい所を使って周りをフォローしてやったりもするし。その上、知り合い面々からはマッドじゃなく普通にいい人として扱われてるし。ちょっと電波を気取ってる所もまた、なんか可愛いとすら。一時期ネット内であの言葉、「エル・プサイ・コングルゥ」が流行ったのも納得。いい奴でいいキャラ過ぎるぞ、岡部。
 さておき、いいとこで終わってしまったこの盛り上がりを、次の巻できっちりと収束してくれる事に期待したいです。というかちゃんと次で終われよ! また続くなよ! そうじゃなかったら、あるいはそうでもPC版買っちゃうんだからね!