感想 わだぺん。 『℃りけい 3』

℃りけい。 3 (ヤングジャンプコミックス)

℃りけい。 3 (ヤングジャンプコミックス)

 大体の内容。「理系女子高生の日常」。この3巻では2巻みたいに特に大きなイベントが無いので*1、尚更その日常というものを上手く描かないといけないというターンでしたが、これは綺麗に決まっておりました。なんでもないがある、というのは最近の萌え系のベタ基礎タームですが、たとえば水着回を執拗なスク水描写でこなしてみたり、たとえば図書館の書庫で女の子二人がぐったりしてみたり、たとえば部室で女の子がドゲザーしてみたり、たとえば女の子が色々と寄り道してみたり、そんななんでもないような事が幸せだったと思うんだなあ、と感慨に耽れる物がありました。
 そんな基本萌えを主題にした風体の漫画である所の『℃りけい』ですが、もう一つの主題である所の理系部分のアプローチもモチのロンでありまして、しかしそれをどう見せるか、という問題は出来るだけさらっと、でもじっくりと、と相反する二つの要素で構成されています。たとえば医学の悲惨な歴史をお化け屋敷的ホラー調でさらっとしたり、たとえば汗について彩さんがグダグダと解説したり。基本はさらっとしつつも自己主張という形ですが、じっくりする辺りは大体彩さんとかがグダグダとする形になります。この作品のカルマを一身に負う彩さん…。
 さておき。
 この巻ではトノエさんが彩さん宅に行ってその女子力の無さを嘆いてみたりする#15「旧友…?」が宜しかったと思います。彩さんに萌えるクラスタなワタクシなどには、女子力がマイナスベクトル向いてる感じの彩さんもそれはそれで麗しく、女子力なんてなかったんや! と叫びたい衝動に駆られたりもしました。家でジャージの女の子って素敵やないですか? それがパソコンの調子が悪いからそれに対して徹夜かまして原因究明してるとか、チキンラーメン+ご飯+卵という駄目な食事してるとか、もうキュンキュン来ません? こういう辺りがオタの悪癖というか、俺の悪癖というか、でしょうけれども。でも、駄目な事もちゃんと見せてくれるって、素敵な事だと思うんですよ! 
 他にはスク水に執拗な、偏執狂な、ぶっちゃけ引くレベルの描写力を使い切ってどうしたんだとか思った#17「泡…?」も良かったと思います。というか、白衣スク水の彩さんが良かったという印象が強すぎるせいで内容は特に思い入れがなかったりもしますが。いや、でも本当にスク水のしわ描写が凝っていて、でもこれだけ濃い描写したら次は無いだろうなあ、というのもまた理解出来てみたり。それゆえの凝り様だったんだろうなあ、とも。
 もう一つ挙げると#20「寄り道…?」は蘭さんメイン回というなかなか珍しい回が印象的。小学生相手にBASICから覚えなさいとか教える蘭さん、というのだけでかなりお腹一杯になる回です。あんな理系お姉さんと知り合いだというだけで、小学生の未来が心配になるレベル。絶対ある意味で道をたがえるよな、あの小学生…。
 まとめると、今回は散漫とも言える巻でしたが、それが逆にいいアソート具合を見せています。キャラが1、2巻で固まったから、そこから派生して個別回してるだけでも十分、というのは、なかなかの円熟味ではないでしょうか。個人的には理系ネタを切らさず、且つ更なる円熟を期待したい所です。

*1:一応、最初に学園祭編後編が入ってますが。