こんぱる&ふじしまペポ『のむラリアット!』を称揚する文章

のむラリアット! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)

この項について

 皆さん、知っていますか! 『ごくちゅう!』でにわかに熱視線を集めているこんぱる&ふじしまペポコンビに、既に違う作品が、しかも単行本が出てるという事を!
 ということで、この項はこんぱる&ふじしまペポ組の既刊であるところの『のむラリアット!』を取り上げ、これマジおもろいから、今からでも単行本買ってみて! という話をずーずーやっていくものとなります。

『のむラリアット!』の魅力について

 『のむラリアット』については、既に感想を書いたりしています。
感想 こんぱる&ふじしまペポ 『のむラリアット!』1巻 - オタわむれ 日々是戯言也blog
 そこで、きらら部活物としての良さと、女子プロレスという地点を見つけた点で膝をバンバンババンと叩きまくりました。
 さらっと書くと、部活物としてはまだ商業誌では誰も掘ったことがない女子プロレスモエ4コマという地点を掘っているだけでアドなのに、部活物としても女子プロレス物としても十全に出来ているという、これがきららMAXにあることが一種の奇跡めいた光がある、という話です。最後盛りました。
 さておきそれ以外でも『のむラリアット!』は大変仕上がりがいい。感想の方ではさらっと済ませた、プロレス漫画としての魅せ方及び、キャラクター造形の二つの系統を論述することを、この項ではやっていこうかと思います。

キャラクター造形から見る『のむラリアット!』。

 まずキャラクター造形から見ていきましょう。
 まず、高校一年の野村桃・みるく姉妹。全体的に群雄劇なところのある『のむラリアット!』ですが、一番メインといえるのが、この桃・みるくの双子の姉妹です。 
 みるくさんは青春を燃やせるものを探している子。対して桃さんは女の子ハァハァ出来るものを探している子。この一見方向性が真逆と言うか桃さんが虚数軸入っているというかな二人ですが、この二項が内容にかなりきっちり組み込まれています。
 それが、高校一年で既に未来のスター選手と目されている空条翼さんとの出会いです。桃さんが怪しい挙動だった為に、みるくさんが襲われているのでは? と翼さんが割って入ることに。
 で、その流れのままプロレスのデモンストレーションを見せられ、スター選手である翼さんの動きに魅せられるみるくさん。そして、その翼さんが女の子だと知って魅せられる桃さん。ここに、交わらないように見えた二項が問題なく共存する形をとるのです。ついでに、この流れの中でみるくさんの瞬発力と、桃さんのタフネスが見いだされる、という部分も過不足なく行われており、きちんとプロレスすることに向けた種まきもされています。
 その次の話から、徐々にキャラクターは増えていきます。まず三年の先輩、海音さんと恵さん。片や言うわりには無茶はしないキャンキャン系狂犬、片やおっとりに見えて実は怒るとの大魔神系。次に二年のスター選手でサバサバ系の星さんと星さん好き過ぎる系ありすさん。先の三人を含めた七人をメインに、この漫画は展開されるのです。
 この七人になってのケミストリーはまだ進展途中で、連載分でも中々な仕上がりとなっています。2巻を震えて待つ前に1巻を読みなさい。
 というのはさておき、個人的には基本めげない桃さんの加入によって、下級生を虐げたいってしていた海音さんが結構ちゃんとしてくる、というかみ合わせが大変良いと思いました。色々と危なっかしい指示もしたけど、それを反省したのか、人にさらっと謝れるようになって……! と恵さんを感動させるまでに至ります。桃さんと海音さん、結構犬猿の仲だけど、それが逆にいいように作用した、っていうのが分かる仕上がりなのもいい。ビバ! キャラ関係性!
 そういう糸の繋がりもありますが、個人に強く焦点が合う場面もあります。それが、みるくさんの初試合。そこで善戦したものの、負けてしまったのを、みるくさんが自身のせいだ、って落ち込むところが良いです。もう、単に見て楽しむものから、実際にやって負けて悔しい、情けないまで思うくらいに、女子プロレスに染まっている、というのが分かるところだからです。青春を燃やすものに、みるくさんは完全に出会った瞬間でもあります。で、ここで出る翼さんがまたいいんだ……。というのは実物を見ていただきたいところです。
 上記のように大きく魅せるところもありますが、細かく魅せるとこもあります。恵さんの怒ると怖い所は、その前段階で大体終わってどうなったか見せてこなかったり、海音さんの帰宅の足がリムジンで金持ち!? だったり、翼さんが食いしん坊キャラであるのが偶に匂わされたりなど、ここも大筋では描かないけど、そういうのなんだ、としてきます。それもいいんだ……。ある尺を全開に使うテクニックは見習いたいレベルです。
 さておき、次はプロレスとしての、の方へ。

プロレスとしての『のむラリアット!』

 プロレスそんな詳しくないんだわ、と先に言っておきますが、それでも十二分にプロレスの妙味を出してくるのも、この漫画の稀有な点です。
 まず基本に立ち返りましょう。この漫画は、きらら系の漫画。それも4コマ漫画です。
 つまり、大きくコマを使うことが制限されているのです。大ゴマが使えない。となると、大きく映したいものが出来ない、ということになります。女子プロレスとはいえ格闘系で、それはかなりの足かせかと思います。
 まあ、最近制限を無視するタイプの漫画も跋扈していますが、そことは違って、あくまで4コマで出来る限り、偶に逸脱するけど、それでも4コマという部分を出来るだけ尊重しているのが『のむラリアット!』の極めて偉大な点なのです。
 その上で、一番試合映えする翼さんの得意技は、ダイビング系なのです。つまり、トップロープから飛ぶ、大きい画面を取りたいタイプ。
 しかし、4コマなのです。それで表現できるのか?
 出来る! 出来るのだ!

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 個人的には『のむラリアット!』1巻のベストシーンだと思っていますよ、ここ。4コマからの逸脱を最小限にしつつ、いかにダイナミックに魅せるか、というのを考え抜かれた1本です。ジャンプでは小さく、回転ではコマを最大限に使い、最後は大きく魅せる。対比!
 そういう大技の見せ場もありますが、もっとベタにプロレスするなら積んでおくべきスキルを習得する部分の地味な面白さも見所です。
 プロレスは受けの美学の格闘技。つまり、攻撃を受けた後の受け身がちゃんとしてないとヤバい。というので地味な受け身練習とかしだします。そこがちゃんと理にかなっているから、大変地味なんだけど、へえ、そういうのあるんだ、というプロレスニュービー向けの要素もちゃんとある点も大変いいものがあります。
 こういうとこで置いてけぼりにしないで、ちゃんとその辺の理を明確にする、って手法としてはベタですが、中々それが出来ないので、本気(マジ)崇拝(リスペクト)です。
 それから、プロレスの面白さは動きのある所ばかりじゃない! というのをきっちり魅せているのも、この漫画が仕上がっていると思う一因です。ステージ衣装のこととか、タッグの決め方とか、そういうのも結構楽しいんだ、って魅せ方をしています。
 特にタッグ決めはこの組み合わせで上手く行くん? という不安要素も残しつつも、このキャラとこのキャラが組み合ったのかー、ってなるので、こういう部分を楽しみにしているプロレスファンがいるのも納得だったりしました。ここまででキャラクターを積み重ねたところから、こうくるかー、ですから。
 中でも桃さんとのペアの人が、だったのはやっぱり究極するとあの二人仲いいよな? ってなって、面白かったです。そういうのもタッグの見方で、プロレスの楽しみ方なんだなあ。

〆だからなんか書いとけ

 ということで、『のむラリアット!』も楽しいですよ! というお薦めの為にずーずー書きました。
 感想書いた時とはまた指向が違う内容にしましたが、結局部活物としても女の子物としてもプロレス物としても青春物としてもコメディ物としても、全方位において隙が無い、しっかりした作りのきらら4コマ漫画、というのが総評でしょう。
 個人的に「てめーはもう推しだー!」レベルで推しなので、『ごくちゅう!』でこんぱる&ふじしまペポペアを知った人に、これはほんと面白いから! って無闇に推したい。推し事! となってこの項を急遽書いた次第です。マジで面白いから、騙されて読んでみてください。騙されて!
 と最後台無し感しつつ、この項を終えたいと思います。したらな!