感想 ノッツ 『クルミくん NO FUTURE』

クルミくんNO FUTURE (IKKI COMIX)

クルミくんNO FUTURE (IKKI COMIX)

 内容を要約すると「未来はシャセイで見える!」。あえてカタカナにしましたが、ちゃんと言うと射精です。主人公クルミくんは、射精すると未来が見える能力者です。完全に下ネタじゃねえか! と慄き顔をされる向きも多いでしょうが、WAIT.ちょっと待ちたまえ。意外とそうでもないんですよ。行為自体を見せない展開なので、エロス! という方向は薄く、また絵柄もゆるい感じなのでこちらも、エロス! という方向ではありません。また全体的にコメディノリなので、そこでもエロス! という方向ではありません。完全に下ネタです。本当にありがとうございました。そんな能力者物っぽいのを下ネタでギャグっぽく仕上げる漫画、それが『クルミくん NO FUTURE』なのです。
 さておき。
 先に書いたとおり、この漫画は基本的にコメディ。ベタな能力者物めいた雰囲気に下ネタとグダグダで台無しに彩った物です。当然、能力者バトルという側面については全くと言っていい程無いと思っていただきたい。だって、未来予知と時間停止という能力物の二大巨頭が片や液を、片や小をそれぞれ出さないといけないという異常に使いにくいんだから、戦うなんて無理な話です。時間停止持ちがクルミくんを拉致するのすら難しいってんだから、相当なものです。と、言いつつも一応バトル展開もあるにはあるんですが、それがねえ……。本当に色んな意味で酷い展開となりまして、バトルとは、悲しみとは。とどこかの世紀末覇者が何かを捜し求めてた時みたいな気持ちに為らざるを得ませんでした。それ以後は特にバトル展開に突入したりしなかったので、懲りたのか、諦めたのか、どっちかになったんだろうか、と憶測を持ってみたり。あれはなあ、あれはなあ……。
 さておき。
 この漫画、コメディノリのまま終盤まで突っ走るんですが、最終盤で今まで話せてなかったけどこういう設定でありましたのよ!というのを矢継ぎ早に展開してきて、お、おう、という面食らいをかまされたりも。それが最初からの予定だったのか、単行本範囲も終わるから一気にまとめないと、と考えたのかは全く定かではないんですが、恐らくどちらもあるんだろうなあ。とは思ったり。成功しているとは言い難いので、特にそう思ったりも。しかし、コメディノリの部分は全体的に安定しつつも要所要所でシャセイ絡みの話も混ざって下ネタもちゃんと生きているのが素晴らしいですね。しかも、直接言う、描くんじゃなくて今までの設定から想像してああこれ言外に絵外に下ネタになってるな、というのが多くて個人的には大変楽しかったり。こってこての下ネタじゃなく、滲み出る下ネタとでも言いましょうか、そんなやり方であったりします。なので、下ネタは……、とか帯とか見てシャセイとか……、と思った方にもわりあいオススメしやすい、ソフト下ネタ漫画と言える漫画だったり。でもまあ、下ネタは下ネタなので、駄目! と言う方もいらっしゃるのは重々承知でありますが、でも少しでも大丈夫ならば、『クルミくん NO FUTURE』でぐぐる様検索したら載ってるサイトに行けるので、軽く見てみるのも一興かと思います。*1
 さておき。
 にしても、メインヒロイン格である栗ちゃんの天使さ、うぶなねんねっぷりは尋常じゃないですね……。自分をオカズにされても、嫌いに成らないって凄い聖女でありますよ。クルミくんがいい奴だというのもあるにせよ。それに作中人物にもイマドキいないだろこんな奴、とか思われてるくらいですし、実際こちら側からの視点でもねーから! と思わせるんだから、相当のものです。こんな心根の清い人が周りにいたら、俺はどんなに救われただろうか。あるいはだからこそ、創作の中にしか現出出来ないのかもしれないんだろうなあ。そんな事を考えさせられるいい子ですよ……。
 対するもう一人のヒロイン格である由鞠ちゃんは痴女一歩手前。あるいは一歩進んだ後。逃げたクルミくんを追いかけて、という目的の8割がやりたいという段階で痴女の烙印は押されるべきでしょう。しかし、そこにも色々と訳があって、だけどやっぱり痴女だよね……。そんな風に思ってしまいます。女の心変わらなさは恐ろしいのー!
 後、姐さんと呼ばれているモカナが好きな男の前でメロメロしてしまう辺りはなんか妙にツボでした。初登場時にヌクなるあれな発言をしてたのに、ここぞで恋愛耐性低いのがバレるという萌え展開。実際にメロメロしてて逆に不憫になってくる辺りが恐ろしかったですよ。この人、どこまで昇る……。この巻の締め展開でもまだ昇りそうだったし……。
 さておき。
 この作品、一応一冊にまとまるようにはなっているんですが、先に書いたようにとりあえずまとめるだけまとめた! という雰囲気も強く、ちゃんとした落とし所として綺麗に話の決着が付けられるのが見たいなあ、という思いに囚われ、感想を認めた次第です。まあ、Web連載で決着という方向でも特に困らないですが、どうせなら課金したい所です。続き、あれ。そんな事を思ってみたり。

*1:余談ながら、最近はWeb連載とかがあるので、とりあえず様子見とかするのが簡単になって素晴らしい時代になったものだと感じます。それゆえに狂った獣的な作品もちょくちょくあるのが困りものでもありますが、まあ不可抗力だ。