感想 高尾じんぐ 『くーねるまるた』2巻

 大体の内容「今日もマルタさんは元気です」。ポルトガル人マルタさんが、東京の片隅で悠々自適に過ごす漫画、それが『くーねるまるた』なのですが、この陽性の気というのは、当てられますね……。施川ユウキ『欝ごはん』が陰性の気であてられたりするのと、真逆の力を感じます。つまり陽性の気なわけですが、この悠々自適感というのは、我々の忘れていた物というのがどういうものかというのを分からせられる、様な気がする! という謎の勘働きをさせられます。家計が苦しくても、マルタさんは全く焦る様子はありません。身の丈にあった生活を、ただ過ごしていく。そこに苦しさと言うものは、見えなくは無いけど、満ちてはいない。それに負けていない。清貧、と言う言葉はあんまり使いたくないんですが、この場合はどの言葉よりそれがドンピシャであります。そんな清く正しい貧乏生活。それもまた『くーねるまるた』の要素なのです。
 さておき。
 にしても、マルタさんの日本への順応ぶりは、先についつい清貧という言葉を使ってしまうくらいに、高い物があります。日本の風物に詳しいのもありますが、それ以上に日本の生活に長けているので、この人、どこまで日本の生活に馴染んじゃってるんですか!? という驚きの場面もちらほら。ぬか床を借りて漬物作ってたり、つぶあんのあんまんじゃないと! だったりとかは、本当に慣れ親しんでいるというのが分かる所です。そんな中で一番日本に馴染んでるなあ、と思ったのは25話の、布団で春眠する姿。布団で寝ている、というだけなのに、それだけなのに、日本に馴染んでいると思わされる、いい絵でありました。
 さておき。
 色々と登場人物も増えてきているのも、この巻のトピック。出てきてもあくまで添え物のような出番ですが、それでもマルタさんとの関係というのが良好で、ついでにその影響で色々と物事が起きる、というのもあって、作品世界の広みに影響を与えています。その中でも、この巻から登場の神永先生は、何をしている人かについて語られる意外とレアなお方。お医者さんなのに、美大を目指している、というのと、出てくる時は大体酔っているというのが、二律背反のようで綺麗に融合してるというので、なんでこんなキャラの立った方が出てくるの!? とか思いました。でも、お医者さん仕事に行く姿は酔っている時とは比べるべくも無い、とてもきりっとしたお姿をしておられて、正直ファンになりそうです。こういうギャップに弱いんですよ……。その後も都度都度出てくるので、今後も出番があるのかなー、とか思ってみたり。正直、安定感のあるマルタさんより、不安定な部分があるから気になるかもしれない……。
 とかなんとか。