感想 鈴城芹 『JC探偵でぃてくてぃ部!』3巻

 大体の内容「さらば愛しのでぃてくてぃ部」。こういう部活漫画にありがちな、廃部の危機! と言うのに対してあまりにもさらりとした対処の仕方をしていて、しかしそれがむしろこの漫画らしいとも言えて大変面白く読めた、そんな最終巻が『JC探偵でぃてくてぃ部』3巻なのです。
 この巻の内容については、色んな事件に巻き込まれて、学内探偵でぃてくてぃ部面目躍如って感じでした。お悩みから学内ガチ事件、長のフォローなど、色々とありましたが、やっぱり大げさな事件は起きないし、ちょっと問題があるのはもみ消されるし、で実績作りにはどうなの? でしたが、しっかりと学内では定評を受けている形になっていって、それが最終回の、私達が居ればでぃてくてぃ部だ! というノリへと繋がり、大変綺麗な着地点に到達した感があります。今までの苦労は無駄ではなかったのだなあ、というのが分かって、廃部の危機への対処のゆるさに「!?」ってなってた自分が馬鹿みたいです。ちゃんと、しっかりと、でぃてくてぃ部が既にここにあると気付いていなかったのです。それが最後に分かって、良かったですよ。それだけで、なんだかとっても、ありがてぇじゃねえか……。(CV:稲田徹
 さておき。
 今回の事件では、謎の密室トリック回、事件簿21「微笑みの爆弾」と詩さんの最強お母さん登場回、事件簿23「育ってきた環境が違うから」がマスト。
 事件簿21「微笑みの爆弾」は、突如起こったプチ爆発事件の謎にでぃてくてぃ部が挑む! という本格派。探偵物というより刑事物、鑑識物に近い立ち回りでしたが、大した事じゃないから警察も入らない、というのででぃてくてぃ部が色々と調べていく回でした。物証を集め、推理し、事件の概要を見切る照葉さんでしたが、トリック! というのに夢中でそこで何故問題が起きたかより先に調べるべき、被害者の裏取りすっかり忘れる辺りがいつも通りで安心しました。解決編もちょっと込み入っていて、被害者側に因縁つけられる形になって凝ってるなあ、という印象。まあ、最終的に詩さんの一撃と根回しで大体解決するんですが。この辺の落とし所は見事だなー。というか、やっぱり詩さん強すぎない? JCだからまだ男子と女子では力差が出ない局面だけど、にしたって相手ガタイいいのに蹴り一撃だし。強すぎない?
 と思っていたら、その詩さんを上回る強さが語られるお母さま、京さん登場の事件簿23「育ってきた環境が違うから」が。この回は京さんが無理難題、具体的には女の子らしくしろ! と元から女の子らしくしている詩さんに言ってきて、流石に無理難題過ぎてケンカ別れとなり、詩さんが家出をする形に。詩さんから語られる京さんの強さ描写がアトモスフィアがおかしいのでゲラゲラでしたが、何故そんなに女の子らしさを? という展開に入りそこから、なにか裏があるのか? と調べる展開でしたが、結局良く分からず、当たって砕けろ展開に。したら、家出なんて女の子らしい! ってオチに。京さん、ハードルの高さがおかし過ぎます! それでオッケーって! 女の子らしさとは一体……。まあ、良く聞く話だけどさ、ケンカして家出ってさ。でもさあ……。
 さておき。
 最終回となったので総論的な徒然を。ってもまあ、JCであるのと探偵であるのを、上手く混ぜた漫画であったなあ、という印象です。JCだから、上手く一人では出来ない事が大きくて、そこを三人で上手く仕上げるけど、やっぱりJCだよね。という部分もきっちりとあって良かったです。最初は依頼はあんまりないから首を無理やり突っ込んでたのが、徐々に依頼が広がっていく形だったのもいいです。とはいえ世界の狭さと広さを上手く扱えない感じは最初ありましたが、途中から狭いながらも上手く回るようになってから、楽しくなったと言えましょう。でも、もうちょい人間関係から生まれる問題とか、あっても。三人娘の話もそれぞれありましたが、『名探偵マーニー』のように、人間関係の進展によって更に依頼の幅が広く、って感じではなく、案外閉じてたよなあ、とも。学校の外に出ての調査というのが多くない作品だった点が、そう思わせるんでしょう。でも、JCがうろちょろしてたら危ないもんなあ。JKならいいのか、というとちょっと違うんですけど、まあJCよりはいいだろうという感じはありますか。
 JCだから、というので迂闊な部分も結構あったなあ、と思い返したりもします。3巻でも人間関係調べないでトリックに夢中、とかありましたけど、その辺の脇の甘さというのが、JCだから、というので理解出来るのはいい感じだったかと思います。免罪符、と言うと違いますが、それでもそういう部分が目こぼし出来たのはやはりJCだからだよなあ、とか。もうちょい、この三人+1+1の話は見てみたいと思いましたが、最終回のでぃてくてぃ部最後の事件のように綺麗に泥臭く終わったのを見て、この終わり方も綺麗であったろうと思うので、十分に満足してこの項を締めたいと思います。ぼんぺいゆ!