感想 道端千揺『MEDIGIRL』1巻

MEDIGIRL1 (バンブーコミックス)

MEDIGIRL1 (バンブーコミックス)

 大体の内容「これが、医学部の真実! ……だよな?」。きょーこ、しーちゃん、のっちのちょっと奇妙な医学部生活、それが『MEDIGIRL』なのです。
 特殊学部系という言葉が今生まれました。どういう意味かと言うと、普段目にしない、特殊な学校、あるいは学部物の総称です。この類は色々ありますが、自分の好きな漫画でいえば獣医学部物の『動物のお医者さん』や農業高校の『銀の匙』、音楽大学の『のだめカンタービレ』、若干違うけど、『℃りけい』もこの類と言えましょう。この類型は普通の学生生活とは軸足がずれているのがポイント。一般の事とは違うがゆえに衆目を集める、というのは、所謂職業物にも共通する部分ですが、学生生活という部分がここでは大変な肝となってきます。一番多感な時期に行け/かなかった学校、というのはそれだけで大変興味深く見えるものです。普通科の学校同士でも、違う学校の話は大変興味深かった方もいらっしゃるでしょう。況や違うタイプの学校をや。そういうちょっとした、でも大きい好奇心を刺激してくれるのが、特殊学部系なのです。
 という冗句はさておき。
 そういう特殊学部系のこの漫画の舞台は医学部。その言葉を聞くだに、しっかりしている人達ばかりなんだろうなあ、というイメージに囚われる所ですが、この漫画は開幕である一話目の最初の登場人物、つまり主役のきょーこさん登場の段階でいきなり遅刻しております。その後の一話丸々でも、きょーこさんはずぼら加減がとんでもないというのが開陳されていきます。特に人の名前を聞いた次の瞬間に忘れてもう一度聞く辺りの迂闊さ加減は凄いです。かっこいい名前ですね! って言ってさほど間をおかずにもう一度聞いてますからね。記憶力どうしてるの!? のっちの名前はちゃんと覚えたのに! っても、あれもあだ名をつけたから覚えられたけど、って事なのかもなあ。あだ名で呼べる人にはあだ名付けちゃうのも、そういう理由もあるのかもしれません。いや、普通にすぐ覚えろ。そんなきょーこさんがメインなので、案外医学部の人も普通に学生なんだなあ、という感覚を持てたりします。その辺をするっと見せるテクはしっかりしている漫画なのでありますよ。
 そんな訳で結構ずぼらなきょーこさんが粛々と且つざわざわと大学生活を謳歌するのですが、その大学生活もまだ序盤戦、教養教育があるという段階なので、最初からがつがつ医学を学ぶって訳でもないので、特殊学部系としては序盤はそれっぽい話題がある学生物感が強かったりも。しかし、次第に医学部らしい話が多くなってきて、まさしく本番となります。骨やら解剖やらのネタはマニアックになり過ぎないように、そういうネタだけど分かりやすく、あるいは砕けているなどの配慮されており、ぶっちゃけあまりよく分かってなくても読んでいける漫画であります。その辺の配慮、イエスだね! 後、先にも書いたずぼらなきょーこさんの図々しさとずぼらさも、この漫画が堅苦しくならない、なりようがない一因でもあります。この辺のキャラクター設定の妙味もまた、この漫画の良さ。キャラクターが濃過ぎず、しかし薄過ぎずの塩梅で、そして男子ではなく女子でメイン面子を構成しているのも、この手の漫画としては標準の読みやすさを確保しつつ、女子は少ないからこそのネタもありつつ、という多様性にも寄与しております。メイン三人娘のバランスも良く、先に書いたずぼらでちょっと医学生としては危うげなきょーこさん(わりと巨乳)に、そのフォローしたり突っ込みしたり空手したりするしーちゃんさん、小さいけれど頭は一級である意味医学生らしいゆっこさん、となっており、この三人が色々と体験していく事で、我々も医学部を知っていく、というのだからこの辺をテクいという言葉で表現するのは理の当然と言えるでしょう。そういうテクいながらも、あるいはだからこその読み易さと楽しさのある漫画、それが『MEDIGIRL』なのです。