感想 湖西晶 『うしのこくまいる!』2巻

 大体の内容「最後に愛は勝つ。ただし勝ち過ぎぃ!」。呪い代行業の日常であったこの漫画、最終的に下地さんと参さんの愛の劇場となって完結を迎えました。電撃的に見えて全体的にやる事はきっちりとした終了劇で、内容的に過不足なく感じる、見事な〆のテクを見せ付けられた格好です。元々湖西漫画として一つの頂としてあった漫画だと勝手に思っていましたが、その終了も湖西晶せんせの一つの頂と勝手に目してもいい出来栄えでありました。エロチックな部分もあるというのにそんな綺麗な終わり方をした漫画、それが『うしのこくまいる!』なのです。
 湖西せんせというとエロ要素、という穿った見方をしてしまうくらいには『かみさまのいうとおり!』に、そして『うしのこくまいる!』に馴染むッ! 馴染むぞッ!! しておる我々(勝手な全体化)ですが、この巻でも当然エロ要素はしっかりと存在していますので、綺麗に終わったと聞いてエロ要素はっ!? となった方もご安心ください。触手から藁水着とないすばでーから緊縛、そして女体盛りまで各種取り揃えられております。こういう分かりやすいエロ要素をてらいなく入れてくるサービス精神はいつも脱毛(脱帽と同時に毛も抜ける)ですが、しかしどうにもそのエロ要素が強く感じないんですよね。それもこれも、愛の話となっていくからであるのが原因であります。
 そう、愛。ラブ。あれもラブ、これもラブ、そして下地さんと参さんと捧さんのラブ。下地さんの方は鈍感力全開でラブというのを強く持っているという描写は最後の方までされず、基本的に捧さんと参さんのラブの方向がメインでありましたが、それが徐々に強くなっていく様というのが、エロ要素をほんのりに魅せる効果を生んでいたように思います。特に捧さんは報われないラブというものの儚さと美しさを見せ付けてくれます。そう、報われない愛は美しいのです。その報われなさが限界に達して、この気持ちを呪いで消して欲しい、という段にまでいく辺りは本当に儚く、美しく、そしてそれが達成されなかった事で諦められる、と言う捧さんは本当に素晴らしいです。気高い物すら一方的に感じますし、気付かない下地さんにめちゃ許せんよなーッ! という気持ちも励起されます。
 しかし、下地さんは下地さんで参さんの事を家族として、愛する人として想っていたのに気付き、戻ってくるよう、ある呪いをかける辺りは確かにこの漫画のクライマックスとして正しくありました。参さんの呪いには反動が起きるという設定もきっちり使われて、〆としては素晴らしくどうなっちゃうのー!? という余韻を残したものでありました。いい味わいだわー。その余韻を生む為に、身代わりで呪いの反動をキャンセル出来る四谷ちゃんがこの巻の大半で登場出来なかった、というのなら、受け入れられるよ。四谷ちゃんは受け入れられ無そうですが! でも、呪いの反動が、というのはこの漫画の肝でもあったのだなあ、と、四谷ちゃんいなくて反動喰らいまくりで楽しい内容だったのを見て思ったり。四谷ちゃんとは……。悲しみとは……。
 とかなんとか。