ネタバレ?感想 沢真:柴田ヨクサル 『ヒッツ』3~6巻

ヒッツ(6) (ヒーローズコミックス)
ヒッツ(6) (ヒーローズコミックス)

 大体の内容「うわあ! いきなり話が交錯するな!」。基本的に何をする漫画なのか、という部分が色々あり過ぎるという、非常に状況が交錯している漫画ですが、3巻から6巻まででそこに更にいろんな要素ぶっこまれて情緒も状態もぐちゃぐちゃになります。駒谷さんと満島さんの過去とかぐちゃぐちゃになるー。
 なんですが、この漫画が柴田ヨクサル原作ゆえにそのぐちゃぐちゃが一点に収束する可能性をみせてきます。まだ可能性なので、空中分解する可能性も全然あるんですが、でもこれは収束したら名作になれるのでは? というアトモスフィアを有しているのが、『ヒッツ』なのです。
 ネタバレはあまりしないとこなので、何が何なのかは、見てください! とシャクティ台詞が出ますが、とりあえずヒッツのトミタ君二人(実質一人)の6巻現状だけでも異常です。
 駒谷さん関係、やまたのさん関係、唐墨さん関連、満島さん関連、石田さん関連、あとまだあるな……。というくらいに色んな関連性にコミットしているので、よくよく考えなくても状況がごちゃごちゃしすぎです。
 しかし、これがすっと読めるのがこの漫画の稀有というか頭お菓子好きかい? レベルのおかしさなのです。
 色んな要素が折々に混ざってくるんですが、それについてはちゃんと読者が飲み込める展開の仕方をして、しかし折を見てヒッツの方に話を戻して話に絡めてくる。
 新要素も、内容が入らない程短くはなく、しかし本筋を忘れる程長くもなく、マジで程よいとはこのこと、というレベルの導入がされます。
 この辺、要素の取捨選択がマジで匠の域で、あのぬいぐるみみたいなのがそういう意味を!? とか、あの人がここで!? とか、満島さん全体がおかしすぎねえ!? とか、唐墨さんがどんどん魅力が上がっていく!? とかここまで込み入っているのに要素に無駄がないし、魅力的。
 展開自体は本当に色んなことが入ってきては、己の位置を確保して読者の脳の容量を責め抜いてくるんですよ。でもその情報の入れ方と放置し方が絶妙。
 こちらの記憶力の残滓になっているとこを励起してくるパターンがマジで多く、ん!? あれが!? みたいな気づきを読者に与えることで、その反動で記憶に刻まれる形を狙ってくるのです。
 この記憶に刻む展開のアップダウンは今の漫画界でも頭一つ、いや二つくらい抜けています。読者の記憶力というのをどうやれば操れるか、というのがパーペキな理解があります。柴田ヨクサル、恐ろしい人!
 さておき。
沢真:柴田ヨクサル『ヒッツ』1、2巻感想。あるいは漫画モンスター柴田ヨクサル - オタわむれ 日々是戯言也blog
 というのを前に書きましたが、今回挙げた読者の記憶の操りも含め、柴田ヨクサル先生が漫画モンスター過ぎます。マジモンスター。
 が、それでもこの漫画をきっちり仕上げているのは沢真先生である、という部分はしっかり理解したいです。
 『ヒッツ』はほぼ完成ネームまで柴田ヨクサル味で作られてんじゃねえのかな漫画ですが、そこにちゃんと沢真味も発揮されています。とりあえず人体の感じが柴田ヨクサル味とは違うので、その点でかなり沢真味がそこだ、ということが出来るかと思います。
 柴田ヨクサル先生の、特に色事絵というのは、なんともいえない独特の味わいで好き嫌いもあるタイプです。
 しかし、沢真味でそれをだいぶ飲み込みやすく、現代的になっているのです。
 柴田ヨクサル味もエロイんですが、ややねっとり、もっと言えばちょっと口に含みにくい味わい。
 でも沢真味はきっちり現代的にエロく、且つ魅惑的です。それがかなり高い効果を出している漫画なのです。この希釈というか方向性の変化が沢真味の本領と言えるでしょう。
 というか、なんで柴田ヨクサル味だとなんか強烈な味わいになってしまうのか、という疑問点も浮かびますが、それはまた別の話。
 さておき。
 柴田ヨクサル味、というのが存分にありつつ、ちゃんと沢真味もある。でもやっぱり柴田ヨクサルはすげえ。そういう感じなのが『ヒッツ』なのです。7巻まだー?