柴田ヨクサル 『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』1巻

 

【Amazon.co.jp 限定】東島丹三郎は仮面ライダーになりたい (1)(特典ペーパー付) (ヒーローズコミックス)

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  大体の内容「それは、仮面ライダーになりたかった者たちの物語」。東島丹三郎は仮面ライダーになりたかった。その為に定職にもつかず、バイトと鍛錬とライダーグッズ収集にあけくれ、ショッカーの登場を待ちわびる毎日を送ってきた。しかし、齢40に到達。ショッカーがいないことは当然だが分かっていた丹三郎はとうとう手持ちの仮面ライダーグッズを売却。身軽になり、これで仮面ライダーともお別れだ。そう思った矢先に、ショッカー強盗という事件が勃発。その場面に遭遇した丹三郎は、仮面ライダーのお面を身に着け、仮面ライダーとしてショッカー強盗に立ち向かう! というもう色々な意味で身につまされる部分となんだそれという部分がかみ合う漫画。それが『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』なのです。

 この漫画のアトモスフィアというのは変なところがあります。というのも、最初は単なる普通の人の強盗にショッカーの名前が使われただけだったのが、話が進むにつれて、本当にショッカーがいる、という地点へと突入するからです。実際にそれがショッカーのそれなのかは不明ですが、とりあえずいきなり戦闘員に変身したり、失敗したものを溶かしたりと、人智を越えた存在ではあり、なのでそれに遭遇した丹三郎があれは、ショッカーだ。と断定するのも致し方ない状態になり、そう言う前提で話が進みます。

  相手はわりと人智を越えた相手なのに対し、丹三郎や電波人間タックル(『仮面ライダーストロンガー』)に憧れるユリコさんなどは、鍛錬は積んだものの単なる人。でも本気のライダーごっこの為に築き上げられたその力で、とりあえず戦闘員は倒してしまう、というのでもうこの漫画どこに行くのかが不明となっております。仮面ライダーはいない、が、本気の仮面ライダーごっこはいる。それが平和を守るのか? どうなってしまうんだ? そういう雰囲気がこの漫画を特異なものにしています。

 その上で、この漫画の本当のショッカー、わりと意味不明のワードですが、の作戦状況も中々に特異です。『仮面ライダー』のショッカーは結構目立つ作戦をバリバリ実行しては、ライダーに見咎められるというパターンを突き進みますが、この漫画のショッカーはどうもそう言うのではない模様。人の中に紛れ込み、その数を増やしていく、という作戦っぽいのです。丹三郎の本物のショッカーとの最初の対峙と撃退の時に、ショッカー強盗を咎めて戦闘員が姿を現すことや、怪人らしい存在も戦闘員を倒した丹三郎を消したりはせず、倒された戦闘員を溶解するだけにとどめている辺りも、目立つことを嫌っているというのが見てとれます。完全にガチでショッカーやっている、ともとれるのです。これが話としてどう結実するか。というのが見どころとして立ち上がってきます。注目点ですね?

 さておき。

 この漫画は柴田ヨクサル漫画です。そう言って何が? となる方もいるでしょうが、端的に言ってもんすごいドライブ感で突き進むタイプの漫画家さんなんですよ! と言っておきたいところです。この漫画も、ショッカー強盗のおかげで仮面ライダーとして色んな意味で立ち上がる丹三郎の話の流れ方とか、タックルが好き過ぎたのと父の影響で本当にタックルとして色んな意味で立ち上がってしまうユリコさんの挿話の振れ幅とか、とにかくパワフルで、妙な納得をさせられる力に満ち満ちているのです。この無闇なパワー、ドライブ感は、その後のショッカー登場での丹三郎のテンションが無闇に分かるようになる部分で一つ結実しますが、それ以降もショッカーはいる、のはいいんだけどどうなるのこの話! という読者側の惑乱をよそに話が突き進んでもいきます。

 このドライブ感! と感嘆出来るか、なんだこれ!? となるかでついていけるかどうか、そもそも柴田ヨクサル漫画が楽しめるかのジャッジがされているかと思うのですが、わりと前提条件がギャグ調で呑み込みやすく、巻数からしても話にも入りやすいこの漫画から、柴田ヨクサル漫画に手を出すべきなのでは? などと錯乱してみたりもします。レッツ、柴田ヨクサル漫画!

 とかなんとか。