『シン・仮面ライダー』のネタバレ感想を書きます。

この項について

 『シン・仮面ライダー』を観てきたので、感想をネタバレバリバリでやっていきます。未見の方への配慮? そんなものはない。少しでもネタバレ、嫌。という方はブラウザバックしていただきたい。どうなっても知らんぞー!
 警告はしましたので、ネタバレしつつ、普通に感想、というよりピッときたとこの羅列で語ってまいりたい。色々ピッときたのです。
 それではいってみましょう。

優しい主人公、本郷猛

 シンライダー、そのメインたる人物の本郷猛。その人物造形は、優しい男、というのが全面に出ていました。ある意味では甘い男であり、そこが弱点だとも明言されます。実際、ハチオーブ戦ではそのせいで倒しきれなかったりもするし、一文字戦でもそれが出ちゃってピンチになる。しかしその優しい男が、改造されたとはいえ人間を殺すことになり、でもそこからショッカーから世界を守る為に戦う決意を持つ、というのは素直に飲み込める展開でした。
 そして、その優しさでルリ子さんの信頼を得た、というのもまた飲み込めます。最初は冷徹な装いをしていたルリ子さんが、最終的には所謂デレに突入するのも、この本郷猛の優しさなら当然だな、と思わされます。それが分かっていたから、緑川博士も本郷猛を計画に組み入れた。それくらい、本郷猛は優しい男なのです。
 そんな優しいヒーローが最後にああなる、というのは悲しいものがありました。次回作構想とか立てられない時代かもなので、ここできっちり終わっておくか、という感じで本郷猛の話が決着してしまうのは、それでも見ていて切なくなるものがあります。もっとこの本郷猛の話が見たかった、と思わされるくらいには、魅力のある人物像になっていた、と言っていいでしょう。案外途方もない手で再登場、とかあるのかもですが。

ルリ子さんについてのいくつか

 本郷猛はキーマンですが、この話の他のキーマンとして、ルリ子さんはいます。このキーマン具合は思った以上で、ショッカーの作戦に対するメタとしてがっちり絡んでいたりします。
 ただ、その作戦を起案したのがルリ子さん、というのもあるので、そこを潰すのに動くというのが泥縄感もありました。とはいっても、ここの起案した話とかはさくっと口伝です。シーン回想とかは全くない。この辺一々語ったりしないで、サクサク進むのがこの映画です。そういうことなのかー、みたいなこっちの勘繰りが必要です。
 さておき。
 それにしても、ルリ子さんが最初クールビューティーだったのに、本郷猛を信頼していく流れとかが結構しっかり描写されているのが良いです。特に内心のモノローグとかはないですが、話の流れから信頼が積み重なっているなあ、というのが理解出来る仕組みがきっちりしています。それゆえに、後半の展開は地味に来ます。開かんと欲すれば、まず蓋をすべし、というのが良く分かるやつです。最期のマフラーのくだりとかねえ……。隙をしょうざぬ二段構えでしたよ……。
 さておき。
 本郷猛とルリ子さんの関係性も良かったです。寝たのか? とか言われても、そういうんじゃない、信頼なんだ。って返してててえてえでした。普通ならラブで済ますとこを、信頼で、というので、そういう関係性、良いな! ですよ。シン特撮シリーズの中ではそっち、つまりラブに寄るのでは? と思っていたんですが、そこをこうスルーしてくるとは。海のリハクの目になりますよそりゃ。

最低限の情報量の一文字隼人

 上でさらっと言及しましたが、仮面ライダーならこいつが出ないと嘘だよな、な一文字隼人の登場はびっくりしました。尺的にどうなるんですか!? でしたが、その尺ゆえに最低限の情報量での活躍でした。
 最初敵として、というのでライダー対決! には中々滾りました。一文字がまさかでしたから、ライダー対決はグッときますよ。しかも後発だから腹のベルトに風を受けなくてもいい、変身ポーズすればいい、というので変身やってくれます。よくよく考えるとベルトに風の方が理屈に合うな? とは思いましたが、変身ポーズは七難隠すって言いますもんね。変身をお見せしよう。ならもう七難隠しますよ。
 さておき。
 一文字、マジで唐突の登場なので、本郷猛より掘り下げる時間が少ない、という難点があります。もうちょいじりっと洗脳解く流れでも、とは思いましたが、尺ないからね。
 でも、ここできっちり、一文字にも何か絶望があってそれを多幸感で埋めてた、というので、洗脳が解ける時にギャン泣きしてたのに、その後は意外と飄々、『仮面ライダー』初期一文字めいてて、この感じの中に、あんなギャン泣きする絶望が、と思うと味わい深いです。この最低限の情報だけでも、一文字の人物像がちゃんと生まれてて、上手いな、と思いました。

仮面ライダー0号戦

 最後の戦い、チョウオーブこと仮面ライダー0号戦は、相当の泥試合感があって、『ゼイリブ』の眼鏡をかけろ! のシーンを勝手に彷彿としていました。こっちはマスクを外せ! でしたが、今までのしっかりした殺陣で戦ってたのが嘘のようにジタバタでした。
 しかし、ダブルライダーでも0号は中々倒せない。サイクロンを犠牲にエネルギー供給断ったけど泥試合。大丈夫かこの展開! でしたが、意外とこれはこれで、でした。それまでわりと戦闘はスタイリッシュにやってたので、その反動というか。やっぱ泥臭くするのもありやろ、という知見でしょうか。最後に確かに記憶に残るものがあったかとおもいます。泥仕合としてですが。
 というか、最初仮面ライダー0号のベルトを見た時に、ダブルタイフーン案件!? V3!? って個人的にどよりましたよ。0号とか言い出して、ホッとしたレベルです。ここのくすぐり方上手いなあ、です。勝手に惑乱してましたからね。手玉に取られてます。

神宿り過ぎ細部

 神は細部に宿るとはいいますが、この作品は細部に神宿り過ぎです。細部がメイン以上に主張し過ぎず、しかし存在感があるので、見てて細かく楽しかったです。
 個人的に一番良かったのは、『仮面ライダー』でカメレオンなのかカメレオン男なのか、な名称不明案件である死神カメレオンが、死神班の作ったカミキリカメレオン、となってその死神! ってなったとこです。制作班の! そういうのもあるのか。これは同時に死神班、つまり死神博士がいることも示唆しており続編があるならそこを擦ってくるかしら、となりました。
 他には、怪人ことオーブは銃でも倒せる、というのが示唆されていたけど本当に銃で倒せるんかい! なとことか、ショッカー下級構成員が終盤出てこないのはハチオーブの施設破壊したからか、とか、緑川一家の関係とか明示されないとことか、色々あるので再確認してみるとまた何かありそうです。

まとまらない

 まとめていこうかと思ったんですが、色々と思うところが多くてまとまらないので、このまままとまらない、として終わりたいと思います。いい悪いでいうと俺は1200点(10点満点中)、といういいと悪いで答えろよ! 案件というか、すげえ刺さったので悪く言えねえ、という感じです。サソリオーブのくだりが基本いらなくない? というか、そもなんだったんだサソリ? というかはあるんですが、基本楽しかったので、俺は1200点(10点満点中)ってなるしかないのです。
 あれです、細部のとこが細かく細かくいい為、その細かいとこをカカッと書いてしまいたくなるんですが、細かすぎて良く分らん感想になりそう、というのもあるんです。立花と滝の名前がそこで出るか! というのと、その名乗ったのがお前らか! という辺りをくだくだしたくなるけど、抑えていんです。まとまらないから。
 全体的に多くの人にとってよい映画というよりか、俺は好きな映画、というやつだったなあ、とは。俺が面白かったから他はどうか知らぬ! です。とはいえ、ラブみたいな展開が一番ありそうなシンシリーズでそこに至らなかったり、『シン・ウルトラマン』よりヒーローという側面と戦うことという側面が強いので、そこの観点が合うと楽しいですな。『仮面ライダー』の初めてがこれ、というのなら羨ましいですな! という感じで、やはりお茶を濁すことにします。したらな!