感想 鈴木小波 『ホクサイと飯さえあれば』2巻


(上記リンクが物理書籍のページ、下記リンクがkindle版のページのリンク)
ホクサイと飯さえあれば(2) (ヤングマガジンコミックス)

 大体の内容「やっぱりどこでも飯さえあれば」。今回のブンさんはアグレッシブです。人見知りであるのにちょっとした手違いが元とはいえ喫茶店にアルバイトに! その過程で、自分の未来へと繋がる道をほんのりと見始める、そういうちょっとしつつも大きなロードが敷かれ始めたのが、『ホクサイと飯さえあれば』2巻なのです。
 とはいえ、ブンさんの飯に対する飽くなき飽くなきさは、漫画を見せられて生まれたそういう道筋を完全に理解する前に花火大会→出店で食べるへと最初向かう辺りが流石過ぎますし、その後出店が無い故にその回のメイン食、たこ焼きを作っている中で自分の中で何かヒットするものがあって、といういちいち食が根底に繋がり過ぎんよぉ、という言葉でしか形容し方の無い食との太い繋がりっぷりです。それだけブンさんにとって食は大事なのは理解可能ですが、その根底というのが無いから作る、であったのがなんとも面白い部分で、ちょっと普通の道筋と違う物があるなあ、という印象を持ってみたり。無い物を描く、自分だけの漫画なりなんなりを作る、というのは誰しも仄かに期待する、そう言う物が自分にあると期待する世界の話です。普通はそうはいかない。しかし重要なのはブンさん、この8年後の話とされる『ホクサイと飯』(感想)で実際に漫画家になっています。つまり既定路線。先を知っているからこそ、この後この人がどういう道筋で漫画を描くに至るのか、というのが一つ気になるチェックポイントとして立ち上がってきた訳ですよ。でも、今はまだほんのりとその芽があるようで、という状態なので、色々と期待して到着を待ちたいチェックポイントであります。
 さておき。
 今回良いなあ、というのは当然全部ですが、その中で選り抜くと、梅の物を作る回、喫茶店で働くことに回、そして花火大会回でしょう。花火大会回は先に書いたような状態なのでするーしまして、まず梅の物、つまり梅干し梅酢、そして梅酒を作る回の話。この回は絢子さんと凪が初顔合わせで絢子さんが色々誤解する回でもありますが、それ以上に梅酒を作る理由、というのが良かったです。ブンさんがサプライズで今日誕生日! って言いだしてサプライズ違う!? ってなるんですが、その後今日は19歳だけど来年は20歳。そのお祝いに梅酒を一年漬けるんだ。というのがなんか、いいご褒美やなー、と。そういうの、自炊ラ―らしいプレゼントであります。そのまま、来年どうブンさんが飲むのか、というのが気がかりになって、またチェックポイントが増える訳ですよ。
 もう一つの喫茶店では、ブンさんの人見知り力が高まりを見せますが、色々あって少しは仕事出来るようになる、というのが大変いい感じ。変な店員だけど、それがうちの喫茶店だから、というマスターの山茶花さんがクールでした。14歳男子が良かった、と常々言ってるのでちょっと残念ですけども。そして、この繋がりで花火大会、及びお客の漫画家さんの漫画に触発される回へ至るので、この漫画のターニングポイントとしては大きな部分でもあります。これから先、ブンさんはちゃんと仕事していけるんだろうか。というのは、大丈夫そうだな、と思えるのも、この回の締まりの良さです。あのマスターの元なら、やってけるでしょう。
 という訳で、色々チェックポイントがある巻でしたが、でも基本は全く揺るいではいない点はちゃんと書いておかないといけませんね。今回もブンさんは食欲旺盛で自炊欲旺盛です。特に特別編での皿を洗いながら使うという手抜きなんだか無駄なんだかのとこは最高に輝いておられました。うん、ぶっちゃけそのスキル無駄! ちゃんと洗っておかないといけないでしょ! そりゃ皿洗いはクリエイティブじゃないかもしらんが! という変なお叱りを入れてしまいたくなる、でもちょっと楽しそうという場面でありました。こういう部分があるから、この漫画ってしまってるんだよなあ。とかなんとか。