感想 椿いづみ 『月刊少女野崎くん』5巻

月刊少女野崎くん(5) (ガンガンコミックスONLINE)

　大体の内容「こいつら青春満喫してんなあ……」。と言う事で、後半に演劇部の合宿に一緒に行こうというのが混ざりつつ、でも基本的におバカな彼らの日常がつづられる漫画、それが『月刊少女野崎くん』なのです。
　今回もラブなんだけど高度に馬鹿になっている面々によってお送りされるこの漫画ですが、この巻では若松君と千代ちゃんがなんというかこう、ちょっとやばいね君たち……。という雰囲気が醸し出されています。鹿島君と堀先輩が平常運転でこれで平常ってハチャメチャだな、この二人と思ったりもするんですが、前者二人の変化は重要なのですよ。とはいえ、若松君と千代ちゃんとでは位相が違うのではありますが。
　若松君はその気持ちがまだラブなのか分からないとはいえ、とても複雑な三角関係、つまり若松君がローレライが好きだけどそれは瀬尾さんであり、若松君は瀬尾さんは嫌いであり、でも瀬尾さんは若松君の事相当気に入っているのであり、というごちゃごちゃした関係しており、この漫画のテクニカルさをきっちり体現しているのですが、今回は折々で瀬尾さんと絡む事になる若松君の行動がそれでも邪険に扱えないという優しさによって、更にごちゃごちゃした事になっています。

文脈から抜き出すと何をやっているのか分からなくなる好例

　そのごちゃごちゃさに、更に更に鹿島君と瀬尾さんが付き合っていると誤解するのが混入され、更に訳が分からない関係性になっていくのがこの巻での瀬尾若松の素晴らしさです。一応誤解は解けるんですが、そもそもその誤解をどうして心に強く刻んじゃったんだ、若松君。というのでもう。嫌よ嫌よも好きの内、って奴でしょうか。電車で一つの場所に一緒に座る、ってやっちゃうしなあ。
　対して千代ちゃんは明確に恋心発露してるタイプなので、その行動に対する納得性は高いのですが、ちょっとその恋心に忠実過ぎる為に場面場面で言動がおかしくなっております。

文脈から抜き出すと何を言っているのか分からなくなるの好例

　他にはベタだ、ベタをするんだ！　って妙な使命感に燃えたと思ったら小悪魔がいい、から何故か瀬尾さんを見習って男っぽいというかやさぐれっぽいのをやってみて、でも結局ベタちゃんとしたらめでられてやっぱりベタを！　ってなるとこも素晴らしく迷走してて好きです。
　そんな事をしながらも、おバカな話のその端緒というか千代ちゃんがどうして野崎くんを？　というのが、今回になってやっとこきっちりと提示されます。アニメ1話でそれとなく匂わす場面がありましたが、その実態が力強いバカさ加減だったのが妙に好感度を刺激してきます。千代ちゃんと野崎くんが揃うと、なんかそれちょっと考えたら分かるだろ！　みたいな光景がたまによくあるんですが、今回の内容もそういう類の、カバンを柵の反対側にポーン！　したはいいけどそっちいく方向と逆！　って完全に頭が……。と思ってしまいました。実際の所、野崎くんが徹夜明けで脳が動いてなかったという理由があるんですが、それをさっぴいてもバカさ加減が素晴らしい案件でした。この後不良が優しい事したら理論で千代ちゃんころっといっちゃってるのも合わせて、この漫画らしい出会いだなあ、とか思いました。
　さておき。
　今回の巻のミコリンはツッコミ役が多かったですが、当然要所要所で効いてくるのがミコリンです。

もうちょっと気楽でいいだろ。

　今日び田舎の女子高生でももうちょい隙があるだろ、くらいの慎重さであります。学校の演劇部といつもの面々となんだから！　全く知らない相手と行くんじゃねえんだから！　どんだけ警戒心強いんだよ！　という流石のミコリンなのでした。と書いて項を終えたいと思います。