感想 てっけんとう 『うちのざしきらしが』3巻

 大体の内容「学とわらの再会を願って」。偶にいい話があるものの、基本は高度に高度な茶番劇だった『うちのざしきわらしが』も、この巻で最後となります。でも、最後は切ないような、暖かいような終わり方をしており、それを持ってこの漫画を秀作として世に流布すべきだと思う、そんな漫画なのであります。
 先に茶番劇の話をするとこの巻のわらが死んだ!? と言いつつ寝ているのがバレバレの状況で皆がずっとテレビミステリーノリで話し続ける回の茶番度は本当に高過ぎて、この漫画の色々あった茶番劇の中でも間違いなくトップギアの入ったド茶番が繰り広げられます。出てくる皆が皆茶番しよう茶番しようとする為、本当に話の流れが無茶苦茶ながら、逆にそれが故に茶番としてきっちり成り立っているのが特筆点。茶番してるとこの漫画の人達は活き活きするよなあ。という感覚も持ってしまいます。この話を切り出した夕美さんとそれを受けて広げ出した学さんの二人は、他の回でも折々で茶番形成する人でもあるので、そう言う意味では二大スター夢の競演感すらありました。これ以外でも大福の皮だけをわらに食わせる回でもいい話だな―という雰囲気を出す茶番がくり広げられたりするので、ある意味お似合いの二人なのかもしれません。
 という前振りをして、この巻でその学さんと夕美さんがやっとこくっつく話をしていきたい。夕美さんが学さんに気があるのはその登場回、つまり1巻の段階で知らされていて、それが回数こなす毎に明確になっていた訳ですが、その気持ちは、2巻の花見回で知られていた、というのが個人的にそこちゃんと覚えてたんだ! という気持ちに。こういうのってうやむやになり易い所なのに、ちゃんと気づいてたんだなあ、学さん。その割に付き合い方はそのままだったから、すっかり気づいてないのかと思ってました。気づいてて、その行動に色々思う所があったのだろうか、でも崩さなかったのか、と思うと学さんが大人物に見えてきます。もう一度告白されるまでどうするか決めかねてたのはヘタレ要素ですが。とはいえ、夕美さんがあの、終始茶番を仕掛けようとするスタイルなので、上手く切り出せなかったのもうなずけたりします。でも、バレンタイン回のあの可愛い、「私はチョコより甘いですよ!」とか目撃してまだ考えてたのは。と繰り返しになるのでこの話題はこの辺りで。
 さておき。
 この漫画の終わり、というのはよく考えつかなかった、というよりこのままわらが学さんのとこで茶番していくままで過ぎ去るのでは、と思っていたのですが、ちゃんとこの巻で決着をつけてきます。崩壊するアパート。そこに取り残された学さん。そしてわらの最後の力で、学さんが助かる、というのがどうにも、やるせない。終わってしまう日常として、アパートの崩壊が大変なインパクトとして立ち上がってきます。ここでどうなってしまうんだ、からの終わりへの展開。別れてしまうというのはこうも切ないのか。そう思ったりしました。とはいえ、ちゃんとその後の流れでわらがもしかして、という終わり方をして、また学さんとわらの日常が復帰するのかなあ、というのが仄かに見えたのはだから大変嬉しかったです。それを見る事はかなわないけど、妄想するくらいは出来るかな、とか思ったのでした。だから、いい最終回だったなあ、と。わらと学さんの未来が明るい事を願って、この項を閉じたいと思います。