感想 サンカクヘッド 『干物妹!うまるちゃん』5巻

 大体の内容「色濃くなっていく美妹生活と、相変わらずの干物妹生活」。二面生活を続ける、と書くと何か問題があるような雰囲気が醸し出されますが、これをオンオフと書くと途端にわかる。になる訳ですよ。オンとオフ、そしてU・M・Rという三面目をも使って、つまり色々な側面を持って生活を送るうまるちゃんの話。それが『干物妹!うまるちゃん』5巻なのです。
 基本的に干物妹側面を、美妹との差を見る物だったこの漫画ですが、美妹側面もここにきてよりクローズアップされてまいりました。それもこれも橘シルフィンフォードさんの影響は大きいと言えましょう。うまるちゃんの第三面であるU・M・Rとの関係が色濃い橘シルフィンフォードさんですが、それがより美妹の面にも展開し始めたのがこの巻での特徴であります。それもこれも、美妹うまるちゃんとライバルになる! というのが、漫画の影響でライバルになる=友達! という回路だったのが判明。それ故に立ちはだかってきたのか、と分かると、今までの張り合いとか、今回の巻でのサッカー対決なんかもその延長線上なのかと理解出来てなんだか変な気持ちが湧いてきます。なんやこの子、ちょっと変だなとか思ってたけど、そういう背景があるのか! というのが。まあ、前に名前伏せての格ゲー大会で名前言っちゃってたとかやっぱり変ではありますけれども、前から変わりかけていた見方が更にが変わりました。
 さておき。
 この巻で重要なのはクリスマス会回でしょう。都合二回に渡ってお送りされるクリスマス会回ですが、上記の橘シルフィンフォードさんが友達になりたくてライバルに、の話もされますし、その橘シルフィンフォードさんの言葉で海老名ちゃんがタイヘイ兄になにやら、言う! で次回になったりと、結構今後に影響する補助線が引かれています。特に海老名ちゃんは何を言うのか。あるいは、それが今後明かされるのか。言ったけど、読者側には知らされないのか。とか気になる部分が大変あります。海老名ちゃんは今までの素振りからタイヘイ兄に気持ちを寄せている訳ですが、それを明かすのか、というのは本当に大きな部分ではあります。人間関係にかなりでかい物がぶっこまれた! で次回なのでマジ生殺しです。早よ6巻早よ!
 クリスマス会回でもう一つ重要なのは、橘シルフィンフォードさんがその会にU・M・Rを呼んだ、というのにU・M・Rたるうまるちゃんは知らなくて、え、どういうこと!? ってなる所と、それの解決でしょう。このU・M・R問題、種を明かせば勿論別人ではなく、メール来てたけどクリスマスだから遅延してた。なのでした。別人!? とか戦いた俺もそれには安堵。ここで偽物登場されても困りますしね。そしてその後の解決なんですが、これは連載の方には無く単行本描き下ろしで行われます。ちゃんとU・M・Rとして現れるうまるちゃんマジいい子。友達が欲しい、が叶った橘シルフィンフォードさんのその涙は、故に尊い。本当に、いい話だなー。こういう手管が出来る漫画家さんだと理解はしてましたが、得心にまでは行ってなかったな、というのが今回の良さによるその得心で分かったり。サンカクヘッド先生、やりおるわ。
 後、うまるちゃんが意外な事に自分から友達になる、というのに気恥ずかしさを覚えて、という回も重要な回です。この回を経由して、クリスマス会回に繋がるので重要度は高いのです。いつもは横で恥ずかしそうにしている海老名ちゃんの言葉が、うまるちゃんを後押しするのも良いです。海老名ちゃんもしっかりしたええ子やねんな……。これでタイヘイ兄に何を言うのか、だよな……。←結局そこに戻る
 さておき。
 重要じゃない話もこの漫画では重要です。と、のっけから若干意味不明になってますが、何でもないようなことが幸せだったと思うんですよ。特に干物妹時は特に重要じゃないという重要性があるんですよ! 何もないからこそ何かあると際立つんですよ! と言っておきますがとにかく重要な所じゃなくても重要さを持って読むべきだということで、特に重要じゃない回を上げると、やはり耳かき回とずる休み回が至宝。耳かきが折れてさあ大変、とか、ちょっと学校行きたくないからずる休む、とか、本当に些細な事なんですが、それが大変楽しめるというのはやはり大きい訳ですよ。耳かき回は最後のページのしてもらう側からする側に、ずる休み回はちゃんと最後に自分からずるを明かして怒られる所と、重要ではなくほんのちょっとの事だけど、でも忽せにしない展開の妙を感じました。どっちもすとんと腑に落ちるんですよ。この読後感の良さも、漫画美味くなっているという実例でしょうかね。このノリを活かして、アニメ化もしっかりしていただきたい所です。とお定まりの言葉で〆ようかと思います。