感想 楯山ヒロコ 『椿さん』7巻

椿さん 7 (まんがタイムコミックス)

椿さん 7 (まんがタイムコミックス)

 大体の内容「椿さん、一件落着」。この漫画『椿さん』もこの巻にて最終巻となります。草野家の日々とその生活に見合わない椿さんのオーバースペックがこの漫画の原動力でありましたが、稔さんも就職に向かっていたり、草野父も帰還したり、そこで跡取りは稔さんに、となったりと色々と終わりに向けて推進して行きます。それでもやっぱりバタバタ騒がしいのが、『椿さん』という漫画の味なのです。
 最終巻なので思いつくまま気の向くまま書いてみたいと思いますが、やはり『椿さん』はその題名通りの椿さん一点突破が良くも悪くもだったと思います。あまりに椿さんがインパクトが強いので、他の人が割を食う形であったなと。でも、椿さんの力の前では、その割食っているのがむしろ輝かしく見えるという謎の現象もありまして、つくづく椿さんあってのこの漫画であったなあ、という理解がなされます。そう言う意味では、この漫画は正しく『椿さん』であったのだな、ということが出来るでしょう。有能だけど堅くないどころか大きな茶目っ気がある和服美人の家政婦さん、っていう言葉だけでは語りきれない、そんなアグレッシブな椿さんが好きでした。
 それ以上に、この漫画の得意な点、オチが一番騒がしいというのも好きでした。オチというのは話の流れやギャグの仕上がりなどに色々と得心がいく、収まることがその要件ですが、この漫画のオチはうん、分かったけどどうしてそうなるの! と最後に広がりを見せるのです。この巻ですと、身の無い蟹を送られて、送った相手は「さぞ悔しがってるだろ」というののオチとして出汁取ったというので十分なのに椿さんが蟹で鎧めいたのを、というボケがきっちりぶっこまれてくるのがそれに当たります。オチに最大のボケがぶっこまれる、というのが正しい表現かもしれません。そういう観点からすると、この巻最後の、この漫画の大オチは、オチに三本使った見事なボケ倒しだったのだな、ということも考えつきます。最後まで椿さんは椿さんを貫く、その証の名前公開からの全力ダッシュ。そう言う意味で、この漫画らしい、椿さんが出て、椿さんがして、椿さんが終わらせる! というのがきっちりと最後まであったのだなあ、とかなんとか。
 さておき。
 稔さんと萩さんはどうなるんだろう。ラブとかあるんだろうか、と勝手に思ってた所だったんですが、連載分ではそういう方向にはあまり行きませんでした。一応、描き下ろしの所で稔さんが萩さんがちょっと可愛い所があったので、可愛かったな。とか言ってますけど、これは脈とか以前の問題ですわ。まだまだ連載が続いてても決着することはないな。と理解出来て、それが逆に安堵に繋がりました。続きの無い中でそういう煮え切らないのぶっこまれたら、うげら!? ってなってしまいますよ。そこを、まだ先は長いんだなー、で終わらせてくれたことで、満足するしか、ないじゃないか……。と妥協満足する訳ですよ。でも、もうちょいそういう話も見たかったかなあ。そういう漫画じゃねーから! ってのは確かにそうだけど、でも、もっとやれなかったかなあ、と。きっちり終わっているけど、好き故にそういうことを思ってしまうのです。思うのくらいはさせていただきたいです! と書いて、〆の言葉とさせていただきます。