感想 フォビドゥン澁川 『スナックバス江』1~6巻までで

スナックバス江 6 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
スナックバス江 6 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

 大体の内容「これが自在に生きていけるってヤングジャンプやるなあ……」。北海道の片隅にあるスナックバス江。そこには奇態な奴らが集まってくる……。という導入だと何かかっこいいですが、大体の場合どうでもいい話を声高に喋りたてる漫画。それが『スナックバス江』なのです。
 酒飲まないのでスナックに対するイメージが超絶の貧困具合なワタクシ。なので、こういうことするのがスナックなんだ。と間違ったイメージがぶっこまれかけました。いや、流石にこんな奇態なスナックが現実にあるとは思いませんよ? でも、ワンチャン……。と期待をかけたくなるくらいには、訳の分からないのが、スナックバス江です。
 いや、本当に分かっているんですよ? 突然RPGな勇者が仲間を求めてきたり、謎の演歌歌手がやってきたり、桃園の誓いが始まったり、勇者がラスボスと友達になっていたりしますから。
 でも、そういう部分は偶に脳の配線が逝かれただけで、実際はどうでもいい雑談を亜空間な展開させつつも、きっちりとしたツッコミで切ってとる。ギャグ漫画ストロングスタイルこそ、この漫画の真骨頂です。
 この部分がとにかく強い。ギャグ漫画にも種類はありますが、ボケに対するリアクションで話を展開し、ツッコミでとどめを刺す。このストロングスタイルが出来る漫画は強いですよ。
 そして、そういう漫画なのが、『スナックバス江』なのです。
 確かにボケや展開も上手いですが、それよりもとにかくツッコミが優れています。単発でカットするツッコミから、長尺で喋り過ぎギリギリのツッコミまで、縦横無尽疾風迅雷脚。中パンヒットから余裕でした。そんなスケールで送り届けられる漫画なのです。
 話の展開とか、殆どの話が最初の導入からはそうはならんやろ。みたいな奇態なムーブを見せる漫画なのですが、だからこそそこをツッコミでざっくりと切り分けていく。その神の手がこの漫画を破綻させずにギャグ漫画として成立させているのです。
 というか、本当にこの卓越したツッコミスキルがなかったら漫画成り立たないまであるくらいに、凶暴性の高いッボケや展開を見せます。勇者と魔王が友達の回のなんで成立しているのか分からない感じも、ツッコミが的確だからこそ、という解答が出来るのです。というかつり銭パカパカポイントを共有してるしな、とか言い出してもう何の話なんだよ! なのを超絶技法のツッコミで切り分けてくれるので、本当に助かります。無かった即タヒだった。
 かような仕儀なので、この漫画のツッコミは大変勉強になります。ボケと展開も凄いんですが、やはりツッコミがあって成り立つ、という部分が大きく、またボケが一様ではないのでツッコミも手練手管。それゆえに大変な学びを得たと思います(DOWNLOADING)。というか、マジで勉強になるので、ツッコミスキルを磨きたいという方には満場一致(オール俺)でお薦めしたいと思います。
 自分としては、やはり長尺でのツッコミが特段に学びが得られるところでした。文字数長いけど、きっちり一息で内容をツッコめるギリギリのライン、というのを一人チキンレ―スしている感じが、特にいいのです。
 個人的には、1巻収録の20話での話にするっと入ってくる人へのツッコミ、「会話の入り方がシームレスで不気味ですよ!」が大変好きです。出てきた人が本当にシームレスに話題に入ってくるので、最適のツッコミなんですよ。このツッコミをツイッター上で見たのが、この漫画を揃えるきっかけになったくらいなんですが、状況が分からないと何故このツッコミが優れているのか、というのが分からないだろうことが残念でしかたありません。とりあえず1巻を買ってみてください! とシャクティ声するしかない。
 ですが、このツッコミが綺麗に決まる様というのは、この漫画の素晴らしさと言っても過言ではなく、それが畢竟、ツッコミの上手さがこの漫画の上手さだ、と主張するに至るのです。なので、再度言いますが、ツッコミを履修したい、ツッコミが上手くなりたいという人は、とりあえずこの漫画の1巻を買って、読んで、判断して頂きたい、と何かの回し者のような言いざまをしてしまいたくもなるのです。本当に、このツッコミの冴えは惚れ惚れしちゃうんですよ。
 な訳で、ツッコミの力があるがゆえに、スナックの話なのにひたすら無茶苦茶なボケと展開をする。それが『スナックバス江』なのです。