- 作者: 庄司二号
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2013/11/27
- メディア: コミック
- この商品を含むブログ (5件) を見る
大体の内容「財津原葵は、帝王へと登りつめる、のか?」。そもそもにおいて帝王ってなんだよ、というのはこの漫画がしれっとほったらかしにしてきた一大テーマ。今回はそれに肉薄する回もある、という誉れ高い巻ですが、ぶっちゃけ最終巻なのが、『TEI OHー!』2巻なのです。
最終巻ですので、帝王についてちゃんと答えよう、という意思が見えるには見えるのがいい所なんですが、我々余人をして全く伺いしれない頂であるその語の意味については、具体的には示されません。ただ、婉曲には仄めかされている部分もあります。それが葵さんが生徒会に勧誘される回と、帝王の穴編二回です。
生徒会に勧誘の回では、この漫画において我々が思っていた、学校の頂点なら生徒会でいいんじゃね? という疑問にようやくメスが入る、記念すべき回なのですが、そこでの葵さんの回答は、しかし要領を得ません。しかし、得ないがゆえに、生徒会が目指す頂ではない、というのがあわいとして見えてくるのです。そこは確かに学校の頂点である。が、それは帝王とは違う、というのが提示される訳ですよ。この土壇場においても明確ではないがゆえに、帝王という椅子は気高いのである、というのが言いたいのだと勝手に邪推するくらいです。しかし、それでは帝王とは具体的に何なのか。
そこに対しての仄かな回答は、発明部襲撃編の最後と、最終シークエンス帝王の穴編二回にあります。
発明部襲撃編は、発明部がなんか攻めてきた! というのから生徒会長が絡んでの一悶着。大体バタバタとした内容で、いつものこの漫画らしいノリの回なのですが、そこの最後で、葵さんが襲撃者天城さんに、説教を、そして諭しを与えます。この部分はちょっと長めなんですが、きちんと相手の事を考えて怒り、そして諭しており、この部分を持って、帝王の一側面とはこれなのか? と思わされます。導く者としての帝王、という側面が見えてきていると言ってもいいでしょう。これが回答の一つ。
最後の話になる帝王の穴編は、先輩方の手紙の場所に行ってみたら帝王の穴が出来ていた、という無茶な展開から始まる一大スペクタクル。その中で、葵さんは色々な試練を乗り越えていくんですが、そこは単純な力や知恵だけではない、ともすれば瑣末ではないかと思えるような部分で乗り越えるのが肝。カリスマ勝負をノリとハッタリで乗り切ったり、決断力勝負を勝負の仕掛け方から見て解決したり、と言った展開です。まともに勝負しろよ! とも思うですが、しかしそこで与えられた試合をまとも一辺倒で攻略しないのもまた、帝王と言うものへの回答なのでは? とも邪推可能です。最後の支配力勝負での、ただ従わせるだけではない、という部分、状況を好転させる行動、という言葉がしっくりくる勝ち方などは、その証左にも見えました。これもまた帝王のあり方、というのがしっくりきそうな案件であります。
さておき。
帝王とは結局なんなのか、というのはこの漫画は回答をしてはいませんが、でもやはり気になる部分であります。邪推だけで語るなら。皆を良く導く者、というのが一番しっくりくるのかもしれません。それは生徒会では出来ないのか、という点が微妙ですが、言わせてもらうなら、もっと広い視野、広い範囲で帝王として君臨する、という部分は学校内だけの生徒会では不可能な部分であり、あるいはルールを根底から変える場合も持ちえるのが帝王であり、生徒会はルールを順守する場所でもあると考えれば、それは微妙に食い違うのかな、とも思えます。それゆえに、帝王部は生徒会とは相いれないのかなあ、とも。まあ、完全な邪推ですが。
さておき。
この漫画の良さは上記帝王とは、という部分だけではないのは皆さんも薄々勘付いておられると思います。この漫画の笑い所は、帝王部の面々の突飛な行動と、それに対する葵さんの的確なツッコミにあります。それが顕著だったのは、この漫画でついつい第4の壁を越えてみたりする最大の問題児、琴音さん回でしょう。色々と明らかにされる琴音さんのまともな私生活とちょいちょい入るボケ所に、葵さんが的確としか言いようがない見事さでツッコミを入れて対応していく様は、この巻の最大の笑い所と言って差し支えないでしょう。最終的に琴音さんが服を破り散らかすという謎展開にもなって、この漫画の振れ幅おかしいなあ、と思わせてくれました。こういうキャラ回を、複数人が回す回とかも見たかったですよ。合わさったら、どういうケミストリーをするのか。それは出来る漫画でもあったと思うんですが……。
とかなんとか。