感想 道満晴明 『ヴォイニッチホテル』3巻

 大体の内容「不思議なホテルのお話、完結」。とある島にあるヴォイニッチホテル。そこで起きる不思議で不可思議な出来事をつづった漫画。それが『ヴォイニッチホテル』なのでした。
 長編と銘打ってはいるものの、基本的にそういうストーリーとしての縦糸は少なく、いろんなエピソードの横糸を紡いで縦へと駆動していく。そういう漫画であったかと思います。
 悪魔の話、少年探偵団の話、霊の話、ホテルの話、殺人鬼の話、殺し屋の話、そして魔女の話。それらが絡むようで絡まないようで、繋がっているようで繋がっていないようで、接触しているようで接触してないようで、とにかく複雑な絡み方をして、出来たのがこの話だったなあ、と。だから、最後になっても、案外するすると進んでいく、ハイライトというべき部分が少ない漫画でもありまして、普通なら噴飯ものとして感じるそれが、しかしこの漫画の特徴だから余計に愛おしくなるという謎の回路が働いてしまいます。縦糸と横糸が、密接ではないのに、いやだからこそ絡まり合っている、そういう印象です。
 私の言いたい事が分かりにくいでしょうが、この文章をつづっている本人も良く分かってない、なんか騙し打ち食らわされたような気持なので、その辺はお察ししていただきたい。特にスナーク関連がふわっと終わったけど、なんともやり切れないオチでもなく、本当にふわっと終結したのが個人的に驚きです。こういう話なら普通はガチっとですが、この作品ゆえに、がっちりと粛清! みたいなオチにはならないとは思っていました。しかし、ふわっと地獄行きになる様は本当にふわっとなのでふわっとし過ぎだと思いました。この漫画の生と死が非常に近しいレイヤーである、というのは1巻ずっと霊が普通にいる、見える人には見えるというのから分かっていたことではあるんですが、それにしてもふわっとにも程があります。さっきから俺も何度ふわっとって書いてるんだよですが、本当にふわっとしてるんですよ。スナークが悪魔と契約していて、ここで悪魔が出るか! というフリだったのにやることが殺ることではなく、男にモーションかける事だったりするふわっと感。そういう目的なの? というのは後で分かるにしてもそこまでの段階では意味不で、だから余計にふわっとしている。そのままその最期まで突き進む辺りが物が違うというやつでしょうか。
 そしてこのふわっと感は最後まで続き、最後にエレナさんがふわっとネタばらし。それに対するクズキさんの反応もふわっと。なんとうか、最後まで掴み所、掴ませどころがなかった、それが逆にいい感じに思える内容でありました。この漫画はこれで良かったんや。そんな事を考えつつ、この項をふわっと閉じたいと思います。