感想 沙村広明 『波よ聞いてくれ』2巻


沙村広明 波よ聞いてくれ(2)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「ミナレ、光雄と決別!」。の前にまた光雄にキュンキュンしていたミナレさんの姿はお笑いだったぜ。まあ、相手がやたら女殺しレベルが高いのもあるんですが、そこにほいほいと連れ回されて、金関係が改善されている、持ち逃げした金も半分返ってくる。というので憎さが薄れていくミナレさんの姿は本当にお笑いと言うか、おちつけー! とパラガス声にもなるものでありました。そんなミナレさんが光雄と決別するのが、『波よ聞いてくれ』2巻の一つの要点なのです。
 さておき、先ほどからおちつけー! と読者が言いたくなったミナレさん。ほいほいと光雄の部屋まで行ってしまいます。今日楽しかったなあ、ってなるミナレさん。本当に落ち着けー! という読者の声は当然届きませんが、しかしミナレさんは未だに女を食い物にしていると言う証拠物件を発見! 光雄に、天誅! という流れにするっと持っていかれます。爽快! なんかもやもやした感じがあったから余計に爽快! この辺りのカタルシスってやつは素晴らしいですね。ミナレさんがやった技がどういう筋力なんですか!? でしたが。色んな意味でどっちもダメージありそうな技でしたよ。
 そんな壮絶な別れ話の前後で、ミナレさんがラジオDJとして仕事を開始します。その第一回目の架空実況で、今回の光雄の件が絡まってくるのですが、それはさておき、実は光雄の件は第二回目に向かっての助走にしかすぎませんでした。その一件を最初から録音して社会的抹殺する! と考えていたミナレさんに、Dの麻藤さんが録音したのをうちにもってこれるか? という意見を出していたのです。それを受け入れたミナレさんは、光雄との一件を一部始終録音したのを麻藤さんに手渡し、そして第二回に向かって走り出すのです。光雄を埋葬しろ、という麻藤さんの言葉の意味は、次の巻で明確になるでしょうが、しかしこれどういう話に持っていくのやら、という出だしを見せられます。設定がおかしい! でも、ちょっと気になる。そんな内容になりそうです。
 さておき。
 主線のラジオDJとしての部分以外も色々と波乱含み。惚れられている男にはその男が好きな奴がいるし、そのせいでぎくしゃくだけどやっぱりカレー屋の仕事は生活考えると止められないし。その辺りのぐだぐだ感はいいものですなあ。そういう部分をきっちりコメディとして仕上げているのがいいと言えます。台詞回しと状況回しできっちり笑いを取ってくる、といいましょうか。この巻最大の迷台詞、

「お前のソレは報道か?」
「「報いへの道」と解釈するならそうでしょうね」
「トンチはいいから」

 はタイミングと言い言葉面といい素晴らしかったです。この辺の台詞センス、コメディセンスはやっぱり沙村先生独特の良さがあります。光雄を埋葬するとしたラジオドラマ、いったいどうなっていくのか。そもそもミナレさんはラジオで食っていけるのか。そしてラジオでどうなっていくのか。その辺の栄枯盛衰が楽しみであります。