ヴァージニア二等兵 異世界居酒屋「のぶ」(1)<異世界居酒屋「のぶ」> (角川コミックス・エース)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)
対
転 異世界居酒屋「のぶ」 しのぶと大将の古都ごはん
(画像、文章共に物理書籍のページ)
『異世界居酒屋「のぶ」』。その同じ原作からでた二つの漫画。それがどのようなものなのか、というのを対と言いながら全然対しない形で語っていきたいと思います。あれです、『マジンガーZ対デビルマン』形式で、共に戦う感じです。同じ名前なので都合上、これから先は転版を“転のぶ”、ヴァージニア二等兵版を“ヴァのぶ”と表記します
さておき、それではいってみましょう。
第一ポイント「お互いの漫画の原作に対する立ち位置」
これは大変分かりやすいのでまず初手からやっていきましょう。
そもそも、『異世界居酒屋「のぶ」』が分からない、という方にはヴァのぶを。知っている方には転のぶを、という方向で出せるくらいに趣旨が違います。ヴァのぶは、原作をきっちりと漫画化していく漫画であり、転のぶは『異世界居酒屋「のぶ」』の描かれていない部分や本編ではさらりとした扱いの部分をクローズアップする漫画なのです。つまり、ヴァのぶが原作準拠、転のぶが副読本、といって差し支えない内容となっているのです。なので、『異世界居酒屋「のぶ」』を知らないで転のぶを読むのはちょっとハードルが高いと言えます。
とはいえ、どちらも高レベルの漫画化であります。ヴァのぶは原作の味を如何に綺麗に出すかを順守したものでありますし、転のぶはそこを突いてくるかー、嬉しいなー。という原作を知っているからこそ味わえる滋味に富んでいます。確かに転のぶから読むとハードル高いんですが、それで興味を持って原作を読んでみるのも全然おーるおっけーな仕上がりであります。ヴァのぶが真摯に漫画化している分、転のぶは違う角度から狡猾に攻めるという棲み分けが成立しているのです。これは上手いコミカライズの手管! しかし、転のぶはこの一冊で終了らしい話もあり、いや、まだ攻める手筋は残っていますぜ。と続きが描かれることを心待ちにしたいくらいです。ヴァのぶとも競合しないんだから、いけるんちゃうんですかねえ!
第二ポイント「話の内容」
第一ポイントと若干混ざる話ですが、それはさておきどういう話が展開されるか、というのを書き記したいと思います。
ヴァのぶは、先に書いたように原作準拠。原作であったことを、きっちりと漫画化しています。とはいえ、短編のまとまりが原作なので、どこを使ってくるか、というのが当然手練手管として立ち上がりますが、これについては要所要所をきっちりと押さえた見事な仕事。押さえる所過ぎて奇をてらっていないといえばそれまでですが、それでもきっちり見せられる仕事っぷりはお美事。個人的にはヒルダちゃん回のヒルダちゃんの一挙手一投足が素晴らしくて、押さえるべきを押さえているというのがどういうことか、分かっているのか! という誰かの言葉を思い出すくらいでした。
転のぶの方は、原作ではしていないけど、あっただろうこれがこぼれおちているだけではもったいない! というエピソードを描いているのが特徴です。原作及びヴァのぶではハンスとニコラウスの二人が居酒屋のぶに、という出だしですが、転のぶはその前、まだ盛ってはいない頃に、ニコラウスがやってくるという話で、完全なエピソード0なんですよ。今更追加するには地味な話だから、原作ではそうそうやらない、というのをじゃあここでやりましょう、とやった見事な仕事です。更にもう一段エピソード00とでも言える話もある辺り、その辺はここで描いておけば文句なかろう! というドヤ顔が見えるようです。
第三ポイント「しのぶさんと大将について」
ここはちょっと重要なポイントなのできっちりと書きます。しのぶさんと大将、どちらも原作及びヴァのぶではそれ程ごりごりと前に出てくることはありません。給仕と料理長、というだけです。所々出てくる場面もありますが、それでも他の面々より強く、というのは少ないのです。この辺は、のぶでの人間模様というのが重点であり、つまり店と客として、偶に混交するものの一線は引いている。影響があちこちに出るけど、喧伝した訳ではない。だから、しのぶさんと大将の存在感はあるけど無闇に濃くは無いのです。
それに対し、転のぶは結構主張が強いです。というのも、話としてしのぶさんと大将のことが中心に置かれる場合が多いのです。最初のニコラウスの話でも、客が来ないからしのぶさんと大将で話を動かしていました。また古都の味を知るために食べ歩きに、とか、エーファちゃんとまかないを、とか、お酒のことで絡まれたのが解決したから店中で無礼講、とか、微妙に店と客、という形に囚われない内容なので、畢竟しのぶさんと大将が原作やヴァのぶよりメインに置かれた形になるのです。それが、ある意味では『異世界居酒屋「のぶ」』らしくない、とも見えるのですけれど、そういう掘り下げも欲しい、と思っていたので完全なWin-Winです。ありがてえ。ありがてえ……。
第四ポイント「ゲーアノートさんは萌えるのか問題」
これについては、どうしても出番がしっかりあったヴァのぶの方に軍配が上がります。基本的に西洋人に近く彫りの深い古都面々ですが、その中でもヴァのぶのゲーアノートさんは素晴らしく鋭利さを感じさせる彫りを見せております。転のぶの方が若干若く見えるのに対し、ヴァのぶの方は彫りのおかげでしっかりとした年輪を感じさせます。その上で、仕事として算定してやるぞ! となっていたのがナポリタンで魅惑の世界にダイブ! しちゃって算定甘くなっちゃんだからもう。あの顔で、口元ケチャップだらけですよ。萌えるしかないでしょう! バブみさえある。
最後に
以上四つのポイントで見てみましたが、最後のは気の迷いです。でも、ゲーアノートさんは萌えるのでしょうがない。男のツンデレは見苦しいという主張を持つ方ですが、ゲーアノートさんは例外です。皆大好きなのも頷けます。というはなしはさておき。
この二つを読むにあたって、基本としてはヴァのぶから読むのが正しい戦法だと思います。転のぶが劣ることは全くないですが、隙間にこぼれおちた話が転のぶの基本なので、原作知っておいた方が、その隙間を感じ入れると思うのです。そう言う意味では、やっぱりハードルは高いのが転のぶかな、と。後、特に飯の方の美味そうさについては言及しませんでした。これは見た人で感じ方変わりそうだからですね。個人的にはどっちも美味そうでした。で、終わってしまうのもありますが。
さておき。
とりあえずお試しするならヴァージニア二等兵版『異世界居酒屋「のぶ」』、原作も見て落ち穂拾いするなら転版『異世界居酒屋「のぶ」』、という使い分けでいいかと思います。というか、転のぶは続き出てもいいのよ?
とかなんとか。