感想 乃花タツ 『なり×ゆきリビング』2巻


乃花タツ なり×ゆきリビング 2巻
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

 大体の内容「大人の緩やかな時間って素敵です」。大人の女性の奇妙な同居生活のお話であるところの『なり×ゆきリビング』も、この巻をもって終了の運びだぞこの野郎馬鹿野郎! というのに、その内容の方は全くペースを乱さず、崩さず、たじろがず。最後まで緩やかなペースを維持して、え、これで終わりなの!? というある種驚愕のラストを迎えるのが『なり×ゆきリビング』2巻最終巻なのです。
 驚愕のラスト、と書きましたが特に波乱があった訳ではありません。
 むしろ逆です。
 逆なんですよ。特に何もない、宅呑みするだけで総まとめも何もなく、本当にただその日の一コマ、というだけなのです。
 ここではあえて、貫き通した、という言葉を使いたいところです。かなりさんとゆきさんの日常は、これからも色々あっても同じペースを維持していくんだ、というのを貫き通したラストなのです。
 実の所、この最終回は雑誌の方で見たんですが、見た後で「来月はどういう話かなあ」というのが浮かんできて瞬時に「いや、違う、最終回!」と訂正しないといけないくらい、特に変わったことは起きないし、大上段なテーマもない回なんですよ。
 でも、だからこそ、このかなりさんとゆきさんが今後もいい感じに付き合っていく、というのが分かる。色々あるだろうし、激しい展開もあるかもしれない。でも、この緩やかな雰囲気は、常にどこかにあるんだ。というのを思い知らされる。そういう最終回なのです。
 これはある意味では2巻で終了だからこそ、出来たことなのかも。色々と積み重なったら、また違う方向に行っただろうことは想像に難くない訳ですし。その辺が描かれなかったからこそ、このラスト。そう思うと、なんだかとっても、ありがてぇじゃねえか……。とCV稲田徹で言ってしまう気持ちになりましたよ。
 さておき。
 この最終回を迎える前も、特に大きな波乱はありません。
 ちょっとした旅行だとか、かなりさん風邪ひいたとか、そういうのはありますが、どれも緩やかな、そして確実なつながりを感じさせる形に向かっていきます。
 個人的には熱海に小旅行に行って、ゆきさんが好みそうな部屋の小物(昭和テイストの)があるとこ選んでよかったー。ってなっているかなりさんの場面がとても印象に残っています。自分はどこに行っても楽しいけど、ゆきさんは明確に好きなものがあればいいだろう、と考えたかなりさんの、とても小さいサプライズ。でもそれが綺麗に決まっていくのが素晴らしい。お互いのことが分かってきているのがちゃんと出ている部分で、大変良かったです。
 そんなわけで、ある意味では2巻終了だからこそ出来た緩やかで唐突で、でも今後も変わらずを感じさせるラストになったのかもなあ、という、『なり×ゆきリビング』なのでした。