ネタバレ感想 増田こうすけ 『増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和GB』3巻


増田こうすけ劇場 ギャグマンガ日和GB 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容もなにもいつものアンソロジーだよ!
ということで今回も何作か取り上げるいつものパターン、やっていきます。

第46幕『懐かしのアニメ』

父が見た事がある、というアニメがカオス過ぎる! という、お話。
父のいう事がどうも『タッチ』なんだけど、それとはかなり亜空の位置にあるアニメをティムティムと描いていく、というある種の増田狂気の見せ場としか言えない回でした。父の記憶が一々あいまいというか、流石にこのアニメは違うだろ! ってなるんですが、本人は最後の最後までこういうアニメだった、って言い続けるというのもまた狂気。と思ったら最後に『タッチ』じゃない! ってなってて最初からそうだよ! って読者が突っ込むオチは見事でした。「メリー苦しみますってね」の段階で流石に気づこうよ! うろ覚えにも程がある!

第49幕『新人漫画家(ルーキー)があの先生に訊く!漫画の極意』

出る回が伝説的になりがちな夢野カケラ先生の新たな伝説回。
新人漫画家に色々とアドバイスを、というよくあるネタですが、当然よくあることにはなりません。新人の人の、夢野先生の言動の取捨選択が一々おかしく、そのせいで夢野先生が淡々とあれなことをいうキャラとして立ち上がってしまっていました。夢野先生が言った言葉は全部いまいち響かないというそれはそれで凄いものでしたが、新人の人の編集力で「僕は… …一人」とか「…漫画は描いてほしくないかな」という超ド級の何言ってんだこいつ台詞として立ち上がってしまっていました。また新たな道筋を作るかー。流石すぎる。

第51幕『フィアンセのさがしもの』

フィアンセが次にやろうとする仕事。それはダウジング! という話。
相変わらずフィアンセさんのダメ人間ぶりと、それに一々過剰な倒れこみをする女性の喜劇であります。前回コラムニストというには語彙の無さと見る目の無さが爆裂していたフィアンセさんの次に見つけたダウジングもまた、地獄だった(銀河万丈声で)。世の中に結構いる、という話かと思ったら町内にたくさんいる、という話をしだした時はくらくらしました。どんだけいるんだよ! というかそんな街怖いよ! 穴だらけだろ! そしてゴミ収集車って仇名、単なる中傷だろ!

第54幕『明日へのゲットゴール』

足を怪我したストライカーが、復帰する話。
とだけ書くと全くそれが面白い訳が分からんぞなのですが、これがもう、ある種世にも奇妙な物語的というか、よくこの発想になったな、という後から積み上がってくる不思議なギャグマンガなのです。というのも、その話の世界は我々の世界とは違い、例えばスポーツがサッカーしかなく、手術には脳からいじることになり、飲み物はレモネードしかなく、擬音はズギャアアアしかないのです。それが指摘されるたびに、ページをめくりなおすという行為をしないといけない、そして本当にその通りで笑うしかないという、またしても訳分からん名作なのです。なんだこれ。

第68幕『その剣を抜きし者』

選ばれし者は、しかしゲスであったのか? という話。
剣を抜いたら魔王を倒す者になるかゲスになるかという選択になるはずが、結局はゲスのまま魔王を倒してしまった、というのが面白い回でした。というか勇者にスローなんてちょっとしたら色々と影響が強い魔法が使えたばかりに……。こうやって駄目な方向に落ちていく話を描くと本当にとんでもない話を描くのが増田こうすけ先生の凄いところですわ。納得の落ち具合なんだもん。

とかなんとか。

全体的にやっぱり一線級というのはこういうものだなあ、というのを納得させれる、見事な仕事でした。一生どこへでも、ついていきます!