ネタバレ感想 船津紳平 他 『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』3巻


金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(3) (週刊少年マガジンコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「金田一……、金田一……!」。天才探偵たる金田一一に挑むことになる、凡人な犯人たちの苦悩と苦労。それを、殺人事件であるということを束の間忘れて楽しむ漫画。それが『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』なのです。
今回は大枠で二つの話を収録しています。いつも通り苦労する犯人達をあざ笑うように、一つずつ見ていきましょう。

金田一少年の殺人』

金田一が、殺人を!? という衝撃の展開から、その逃亡ときっちりと金田一に罪を擦り付ける犯人の策謀に戦く話だったのに、裏から、犯人側から見るとものすごい泥縄な事件であることが発覚する話です。そりゃ、最初の殺人の脱出トリックが扉を合わせたら逃げられた! ですからね。しかも、そこを単純に逃げる形にはせず、またしても体力面のチャレンジになっていたのが個人的に楽しかったポイントです。金田一少年シリーズはちょくちょく体力面でチャレンジしないといけないトリックがあるのが浮き彫りになります。
その後の伝言を追いかけるというのも、泥縄度が高いです。が、それ以上に金田一の情報の聞き出し方が画になり過ぎているという犯人側のツッコミが個人的にツボでした。確かに、必要に迫られているから真に迫っているんですよ。でも、それをきっちり指摘されると、いやあこれで犯人じゃないってどんだけ画を持ってるんだよ。という案件でした。というか金属パイプをもってとか、後ろ手をとってとか、誤解される画過ぎる! 読者と犯人しか見てない画なのが勿体ないレベルですよ!
後、オチの犯人インタビューでの犯人の発言も一々目線がおかしくて、最後まで堪能できる回でありました。

仏蘭西銀貨殺人事件』

葬送銀貨が贈られた人物が、死ぬ! その壮絶なトリックとは!?
というので、こっからはトリックが思いつかないなんてボケは無し! と言った側からトリックが思いつかない……。という高度なボケを見せつけられますが、しかし今回のトリックは大変奮っております。
自分と似たような境遇だから、上手く追い詰めたらやってくれるに違いない、という本人も言っているように薄氷のランウェイを歩くトリックなのですが、それでもその展開を構築する辺りは、ボケは無し! と言っただけはあると思いました。基本祈るばかりとはいえ。
なのですが、そこでトリックのコーディネートとか言い出す辺りがこの漫画らしいのですよ。しかも、そのコーディネートの衣装が微妙に悪く、この人が上に就けなかったのはこのせいか、とすら思わされました。違うんでしょうけど、流れからしてそう見えてしまうレベルで酷いコーディネートだったのです。
しかし、この回は犯人視点で見ると面白い趣向に感じました。他の回もそれはそうなんですが、この回は基本犯人が直接手を下さないので、異色具合が他より際立ったように思います。祈るのが基本とはいえ。こう見ると、金田一少年シリーズって変わった趣向が多かったんだなあ、とも。そういうのを選りすぐりだというのもありますが。

さておき

次回の巻はとうとう『魔術列車殺人事件』。つまり地獄の傀儡師の登場です。待ってました! なんですが、地獄の傀儡師の格がどうなるのん? という不安と期待が入り混じります。変に下がると嫌だけど、変に下げるのがこの漫画のミソなので、そこのところが上手く回るか。きになるところです。さてどうなるか、と記述してこの項を閉じたいと思います。