ネタバレ感想 船津紳平 他 『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』6巻

金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(6) (講談社コミックス)
金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿(6) (週刊少年マガジンコミックス)

 大体の内容「やっぱり今度も金田一……っ!!」。金田一一に行きがかり上挑むことになった犯人たちのレクイエム。それが『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』なのです。
 今回も作品ずつに感想をカカッとやっていきたいと思います。

異人館ホテル殺人事件

 警視が犯人且つ金田一側のお役立ちなサブキャラが殺される、というわりと他ではない要素がきらりと光る逸品である、異人館ホテル殺人事件。その犯人である不破鳴美の前半生の終わり際、自殺手前からこの回はスタートします。
 それにしても、こうやって実際に話として出されると、不破鳴美になるところ、つまり既に本当の不破鳴美は自殺していて、その死体以外の、成り代わりが出来る一式がそこに揃ってあるところの都合の良さにはくらくらが来ます。原作ではするっとだったものが、より詳しくギャグ調で処理されると堪りません。天涯孤独じゃねえとすぐばれるんだけどそういうオチだよねそんな都合のいいことが、からの「あった」つまり本当の不破鳴美が天涯孤独であったというので都合良過ぎぃ! 案件です。偶然って怖いね!
 ここまでお膳立てされた形になった不破は第二の人生を決意。自分の前半生を狂わせたシャブに対する憎しみと、一度死んだようなものだからという死ぬ気パワーで警視にまで上りつめます。その意気で自分をシャブ狂いにさせた売人を、と思ったら、その売人は殺されており、ということでこの異人館ホテル殺人事件は開幕します。
 この話の良さは、不破が警視という地位を利用して色々ごり押していくこと。キャリアパワーを使って、少々の問題は権力で片づけていく、という権力が犯罪を犯したらヤバいなあ。という重複表現すら出てしまうごりごりを見せてきます。そういうところを見せつつ、キャリアの部屋の荒らし方よ、とか小ネタもかましくるんですが、最大のごり押しは警察だから捕縛から尋問の権利はこちらにある! とするところでしょう。その上で自分でまいて収穫する自給自足行為で真犯人とした人物を殺し、これで私の復讐は果たされた、となるのですが……。この後の、権力をかさに着たもの、ケンリョカストの末路が素晴らしかったです。そりゃ国家権力の上の方が出てきたら負けるわ……。力を上回るにはやはり力……。ってなりました。それと、オチの方の、つまり捕まった後の犯罪者コメントでの、金田一、シャブやってる。発言も至言でした。金田一の犯人誘き出し案、毎度ぶっとんでるもんなあ……。

墓場島殺人事件

 犯人が2人! という部分と、どこをどう考えてもこの殺人事件の為のお膳立てが奇跡としかいえない、という意味で金田一少年作品の中でも相当のレアケース具合な墓場島殺人事件。まず犯人2人の繋がりから話はスタートし、この二人の蜜月っぷりを見せられるという、よくよく考えなくても殺人事件と乖離が激しくて困る、そういう回となっております。
 正直、この回の犯行の舞台、墓場島で運よく犯人両者ともが合う口実が可能、という点だけでも相当奇跡的で、そのレベルじゃないと犯行出来ない、というのならいっそやめておけば良かったのでは? という疑問すら立ち上がってきます。それだけ二人の復讐心が強かったのは、村を全焼させられた、というので分かりはするんですが、それでもこの奇跡が無ければ成立しなかっただろうに、とも思うのです。ある意味酷い天の配材とすら言えます。
 そもそも、村を焼いたサバゲチームに潜り込む、は分かるんですが、もう一人の方が普通の高校生していた、というのが復讐にどう結び付くと考えたんだろう、というのを思わずにはいられません。一応成ったからいいようなもんですよ。繋がらなかったらいつまでも復讐心を持って付き合ってたのかよ、案件なのです。
 さておき、この回はそこを見るよりは、犯人2人の愛の劇場を見るのが本筋。途中で知らない間柄という呈で片方の頬を強く張ったら、強過ぎたか!? とか内心で困惑したりしてましたが、基本的には2人はラブラブ、というのを最後まで見せつける形だったかと思います。繋がりがバレたのも、砂糖を多く置いてしまったからですし。それを見るに、やっぱり殺人なんてやめておけば、と思わずにはいられない回でもありました。

速水玲香誘拐殺人事件

 高遠、犯罪者指南者デビュー回。なので終始高遠好みで彩られた回となっています。彩られ過ぎて犯人さんが終始高遠の影に怯える、仕方間違ってないか? という風になっている回でもありました。自分が犯人じゃないからって高遠が趣味的過ぎるせいで、犯人さんが全ツケを食らう格好。そもそも金田一を呼んでくる必要ある? というね。完全な高遠好みですよ。最高の犯罪は最高の探偵の前で、というか金田一と相手しないならノらないし。とでも言いたげでした。本人が殺人するならそれでいいけど、他人にさせるのにそれ、というのが本当に高遠好みとしかいえません。高遠、ぶっちゃけあいつ単なるヤバイ趣味人ですヨネ。それの鴨にされた犯人さんには同情の念しかでませんでした。
 そういう回ですので、犯人さんは常に高遠好みで惑乱する格好。最初に犯罪計画を教えてもらった時はこれは凄い、ビューティフル! ってくらい感銘してましたが、見るとやるとは大違い。指示に対する理解が足りてなかったり、髭のミスなどもあり、最終的には犯人と断定されてしまいます、が、それ以上に不幸が犯人を襲う! というかなんであの時紅茶飲んだん? ということの解答がされます。それはなんとなく飲みたくなった、なんだかそう誘導された、というもの。その場に高遠もいたので、なにかしらのなにかしらがなにかしら。はい、ぶっちゃけ理由不明のままでした! この漫画にしては謎のまま残してきたなあ。前に何故か暴走して告白してしまったやつもいたけど、その類っぽい扱いでした。
 後、犯罪者インタビューで「この敗因語るシステム何なの?」というド直球を投げてきたのは笑いました。今言うかそれ! 最初から自然とやってたから、読者側も馴染んでたけど、確かにこれは意味わからんシステム! ファイルシリーズ終了とケースシリーズ開幕を合わせてネタにするメタネタ具合も合わさって、一つの区切りとしてはしっかり出来た回になったかと思います。それにつけても高遠……。何かあっても高遠には相談すまい……。

氷点下15度の殺意

 小ネタは小ネタらしく、しかしきっちりネタにはする。そういう回です。人一人殺そうとしたのに? はけだし名言でした。偶にはこういう話もね? ですが倫理観! という面ではどうなのか案件であります。

さておき

 速水玲香誘拐殺人事件の犯罪者インタビューでも発言されていますが、ファイルシリーズ全事件が終了。次の巻からケースシリーズへの突入が告げられます。その辺はちょっと読んでないので、どういう話なのか今のうちに調べて読んでおくべきかしら。わざわざ探すの大変だから、気にせずこれを読めばいい気もしますが。
 とかなんとか。