ネタバレ感想 三条陸:佐藤まさき 『風都探偵』6巻

風都探偵 (6) (ビッグコミックス)
風都探偵(6) (ビッグコミックス)

 大体の内容「今明かされる、ビギンズナイトの全容!」。『仮面ライダーW』本編や映画版、Vシネ版でも明かされなかったその詳細が、この漫画にてお披露目だ! というのが、『風都探偵』6巻なのです。
 この巻での形としては、幼い頃の翔太郎が鳴海のおやっさんと出会い、しつこく付きまとって最後には助手になり、そしてその後のビギンズナイトへと続いていく内容を、ときめさんに話していく、という構成です。なので鳴海のおやっさんが如何にスカルで活躍していたか、という部分は多く描かれないのですが、それでもその一端として幼い頃の翔太郎を助ける為に、相棒を殺したことで閉業していたスカルに再び、というので一戦、アントライオン戦を見せてくれます。スカルの能力が不死身、というのも驚きでしたが、それに頼る戦い方は全くしない、というまさしく大人な戦い方をしていたのが印象的でした。ぶっちゃけ遠にも近にも隙が無いので、流石おやっさんとしか言いようがない。
 そこはさておき、おやっさんは本当にかっこいい大人。翔太郎が憧れるのもすんなり理解出来る人です。事件的な部分での活躍というのはここでも多くは語られませんでしたが、翔太郎が初めておやっさんを目撃した場面の、ドーパント相手に引かない態度でも十分に出来る人だったんだ、と感じさせます。
 それに対して、まだ茹でてすらいない翔太郎も中々の気骨を見せます。ドーパントに対しても引かない、というのはおやっさんに触発されたのもあるんでしょうが、小学生くらいなのにドーパントに歯向かい、お前だけの街じゃない、皆の街だ! って言いきる辺りは素質があったんだなあ、と言えるかと思います。その言葉に、おやっさんの戦う気持ちが復活する、というのもまた良き哉。二人、繋がりあう運命にあったのかもしれません。
 それでも、すぐには翔太郎は助手とはされません。まあ、少年探偵みたいなのは道理上出来ないのは考えればわかるのですが、それでも食らいつくというのが翔太郎らしさです。最終的に、リンチにあっていた野球部員を、しかし暴力沙汰になったら試合が出来ない、というので庇いつつも殴られるだけだった、というので、我慢が出来るようになったか。と助手にするのですが、案外もっと前からしてもいいと思っていたのかもなあ、とは思います。そうでなければおやっさんなら穏当に、あるいはかげきにでも遠ざけることも出来たはずですし。そういう意味では待っていたのかもなあ、とも。
 さておき。
 話はビギンズナイトへと向かいます。ここでは、元は翔太郎は置いていかれていたのを、助手で培った探偵スキルでおやっさんの場所を知り、追いついてしまう、という流れ。本来なら翔太郎はいなかった、というのが、そこでの展開を見るに成程な、と。ドーパント相手の戦いは見せていなかったので、そういうのから遠ざけておきたかったんだろうなあ、と。でも、ここで完全にドーパントと関係していくことになる、というのは皮肉というか。
 その後はバタバタとしますが、翔太郎とフィリップが最悪な出会い方をしたり、フィリップの命名がされたりなど、細かい話がぽんぽんと出てきて、内容が詰まり過ぎています。特にフィリップがフィリップ・マーロウからなのがやっぱり! だったのは個人的には収穫でした。やっぱりそうかー、という納得ですね。おやっさん命名だったのが更に納得度合いを上げます。成程なー。
 さておき。
 その後の話はWでされているので割愛したいですが、それでも一つ、聞こえてなかった言葉が明かされます。
 それは、「似合う男になれ」。まだお前に帽子は似合わない。隠すものがないだろう、ということで帽子をかぶらせてくれなかったおやっさんが、自分の帽子を与え、その一言。まだ遠いけど、目指せ。そういう言葉で、生き方を託すという感じがあって大変良い後付けだったと思います。帽子はWでも小ネタとして使用されたのが、この言葉で更に意味合いが増して最高かよ……。
 そして、話は現時点に戻り、翔太郎はアルコールのせいで泣いたかと思ったら寝てしまい。こういう格好よくないところを、しかしときめさんにはきっちり見せていくという翔太郎のムーブが大変、もう、尊い。そこまで話す間柄になったんだなあ、と。そして、その後に登場するフィリップが、最後の〆、最悪の事件だったが、最高の出会いだったというのをして、この巻は大体終わります。総じていい明かしの巻でした。
 さておき。
 細かいネタとして、Wから風都探偵に繋がる道筋というのが見えてきます。そもそもフィリップが幽閉されてたのどこだよ! あんなでかい建物が崩壊したらすぐわかるだろ! 案件だったのですが、どうもこれは万灯たちの裏風都と関係がありそうな描写が、今回為されています。こちらの勘違い可能性もありますが、なんか普通じゃない入り方していたので、たぶん間違いはないかと思います。裏風都側が園崎家についてやけに知っているのも、関係があったから、と見るのが妥当かもしれません。この辺、今後も関わってきそうだなあ、と思いつつこの項を閉じたいと思います。