感想 塩野干支郎次 『プニプニとサラサラ あるいは模型部屋の少年と少女における表面張力と毛細管現象』3巻

プニプニとサラサラ 3 (3巻) (ヤングキングコミックス)
プニプニとサラサラ 3 (3巻) (ヤングキングコミックス)

 大体の内容。「少年少女と、模型の青春は続く……」。完全に打ち切り、だというのになんかこれはこれできちりと終わったような気にさせられる、それがプニサラ3巻なのです。
 先述の通り、この漫画完全に打ち切りエンドなんですが、しかしそれすら予定に組み込まれていたのでは? というくらいに巻き進行なく、終わっていきます。あくまでマイペースといえばいいのかもでしょうが、あまりに急ぎを見せないその姿は、いっそ恐ろしいものではないか? とすら思ってしまいました。それくらに、本当にペース配分が変わらなかったのです。
 特に、終盤であるエアブラシ編に至って、それは極致に到達します。撮影の都合で南の島にいる文夏さんが偶にインサートされる以外は、エアブラシの話をきっちりやっていくだけ、というある意味バランス感覚が優れていないとできない配分でされるのですが、ここですらペースはマイペース。急いだところが全くありません。ここは基礎だから、しっかりやらないと、という心配りを感じさえします。そういう場合じゃないんじゃないですか!? なんですが、塩野先生の歩みに淀みも遅滞も拙速も雑さもありません。あくまで丁寧に。そういう所作、嫌いじゃない。
 さておき。
 最終巻ですので総まとめみたいな話をしますが、先にも書いた通りに、本当にペースが変わらなかったなあ、と。最後の最後で匠海くんと文夏さんのあわい関係を、最後まであわいままで、しかしこれは脈あるな? という風に維持したのも凄いですし、模型ネタとしては大体基本はやりきっているのも凄いです。逆にこれ以上長くなってやることがあったのか? という気もしますが、その辺はマニアックなネタに深堀出来たらしたかったんだろうなあ、という面もあったので、案外やれたのかなあ、とか。
 しかし、もうちょっと女の子とキャッキャウフフの模型生活、見たかったなあ、とは思います。大体のラッキースケベは行ってしまった後なので、そこは限界だったかもですが、そこがメインの漫画じゃねえから! とも思え、そういう意味ではこれ以上ラッキースケベを開発する方に舵が切られなかったのだけでも、良かった。それで満足するしか、ないじゃないか……。と妥協満足するばかりです。
 それにしても、模型ネタガチガチにしつつも、女の子で干渉帯を作る、という現代的な作風でしたが、それがうまく両輪として回っていた、というのが最後まで維持されたのは良かったです。模型ネタは門外漢なのでへー、でしたし、女の子要素はふひっ。でしたし。その上で粛々と打ち切りを受け入れ、そしてこの漫画で出来る事を全く忽せにしなかった。そして最後に向かえる、匠海くんと文夏さんの、なんかこういうのよいよな。という読後感を感じさせるあわい。見事なお仕事だった、と言えるでしょう。短い一作でしたが、十分なものだった。そう書いてこの項を閉じたいと思います。