ネタバレ?感想 高橋慶太郎 『デストロ016』2巻

デストロ016(2) (サンデーGXコミックス)
デストロ016(2) (サンデーGXコミックス)

 大体の内容「サキが出て殺す!」。とはいえ、今回はサキはあんまりやってないです。やってはいますが、やってはいません。この二律背反な言葉を案外簡単に使わせてくれるのが、『デストロ016』なのです。
 個人的な懸念としてですが、この漫画は緩くなるのでは、というのがありました。『デストロ246』でも超強敵として描かれたサキの過去、というので、二つの理由で緩くなると思っていたのです。
 一つは、246までサキが死なないのが確定事項ということ。246でも死んじゃいませんが、その前段階の016で死なないのが確定的に明らかな訳です。この部分で、どうせ死なないんだろ、という高くくりが励起してきます。んなのハラハラしねえって!
 しかし、016、というか高橋慶太郎先生は手練れでした。サキが死なないなら、サキ以外が死んだらいいじゃない! という方向性に舵を切ってきました。この2巻前半では運悪く、ある意味では運良く、仕事で重大情報を、それと知らずに知ってしまった人を救出するミッションが入ります。この知った人が男! ということで、この人が死んでしまうのでは!? というハラハラ感を、我々にたたきつけてきます。
 このシリーズ、男の人の死亡率が高過ぎるというか、246では話に関わった男は全員死んでいるので、そこをもって、まさか助けられないとかそういう話になるのか!? となってしまうのも無理からぬと思っていただきたい。仙崎さんの秘書の人とかも、いつかいきなり死ぬのでは? と思わされるのがこのシリーズの恐ろしさなのです。
 更にみのりさんという庇護対象がサキにはあるので、そっち面でピンチになる、というのもありそうですが、局面局面で保護対象の男、となって今後もハラハラさせられそうです。
 二つ目としては、基本強いので負けるというイメージが出来ずにハラハラしないのでは? があります。
 これについては、もう最強主人公なら最強主人公で圧そう。という漆黒の意志が随所にみられます。なんか弱体化とかしたり、弱みを見せたりとか、こいつには必要ねえんだよ! という圧倒的強さで話がごり押されていきます。
 このごり押しをただのごり押しと見るか、ランクの高いごり押しと見るかでこの漫画に対する姿勢がジャッジされますが、どっちにしろごり押しじゃねえかよ! という言葉も出てきます。でも、そのごり押し、嫌いじゃない。
 何事も最強主人公では駄目、というのはありません。隆慶一郎原作:原哲夫画の『花の慶次』をご覧になれば、最強主人公が最強ムーブを押し通るのが如何に良い物なのか、というのが分かると思います。色んなとこで、最強でも限度がある、というのをでも最強だからで押し通る痛快さというのは、今の世にチートとか最強とかが乱立する現実を見れば、最強で押し通るのはやはり良い物なのだ、ということになるでしょう。
 そういう訳で、ハラハラする、と言う要素をがっつり潰していく漫画となっている016ですが、246との接点、あるいは『ヨルムンガンド』との接点も出てきました。前者は当然なんですが後者はあいつが出てきた時にファッ!? ってなりましたよ。まさかの地続き設定! 著作者=本人だから出来るムーブ!
 そっちはさておき、246の接点は、帯にもあるように万両苺、それと紅雪が登場します。苺はまだ小学生なのに、父親を殺され、そしてそれの調査込みでやってきたサキがたてついても恐怖心が出てこない、怒りしかないというガチのヤベーやつで笑いました。完成度高いなこいつ! ガキの頃からやる時はやる人だった系か! ハッキリ書くと空条承太郎か!
 その苺を助ける、というのが2巻後半からのミッション。前半で危うく死にそうだった人の情報から狙いを付けたやつが絡んでいるので、単純に人助けではない辺りが上手いですね? サキが人助けって趣味が合わないとしそうにないからなあ。
 もう一方の紅雪はCIAに飼われる前の、1巻で出てきた中国系の暗殺集団の一員として出て来て、それからCIAに飼われるようになるいきさつが語られます。暗殺集団としては使いにくい武器だったらしく、今回はCIAの人の殺害に遣わされたものの、やる前になって混乱してしまっているという流れでした。ミサイルみたいなもんとして使ったんだ、とCIAの人が言っていたので、その殺傷能力というメリットもってしてもかなり持て余していたのが伺えます。
 ここから、てなづける方に、と話は向かっていきますが、これは紅雪には良いことだったのかなあ、という考えが浮かんだり。あのまま、戻るとこもないままミサイルみたいに撃ちっぱなしで野垂死ぬとこを、でも過酷な生を生きることになった訳で。ここんとこがいい悪い、というのは無さそうというのがこの漫画らしいっちゃそうなんですが、中々考えちゃうところでもあります。
 さておき。
 CIAが秘匿していた情報から、何やらよからぬ手段を使おうとしているらしい893を、サキはやれるのか? なんか格闘漫画しだしたけど、とりあえずサキが無茶強い以外の情報が入ってこない! という状況で3巻にバトンタッチです。果たして、この話はどう決着するのやら。気になるというか、サキの人生楽し過ぎるだろ! と書いて以上。