感想 野上武志 『はるかリセット』1巻

はるかリセット 1 (チャンピオンREDコミックス)
はるかリセット 1 (チャンピオンREDコミックス)

 大体の内容「休む」。春河童先生こと天野はるかさんが、仕事の合間に休む話。それが『はるかリセット』なのです。
 この漫画は本当に、休む、ということをフューチャーした漫画です。というと、わりとはてな? という顔をされるかもしれません。休むだけが、面白いのかと。ぶっちゃけ、そんなの見れるクオリティになるのかよと。
 しかし、この作品に関してなら、こう言えるのです。
 出来る! 出来るのだ!!
 ということで、今回はこの「休む」というメインテーマでごり押してくる『はるかリセット』について詳しく話していきたいと思います。
 
 皆さん、知っていますか! 人間は疲れると休むのがいいという事を!
 という黒岩都知事構文をするくらいに、現代人は休むことについて後ろめたさを感じている、と言います。そんな中で、春河童先生、はるかさんがただ休むだけの漫画というものが投げ込まれました。それは、ある意味挑発とも取れるもんですよ。お前様は文筆業だからだろうがあ!? というタイプのです。
 ですが、自分と違うタイプの仕事だからと言って、そこにはそこの疲れる点、あるいは休める点がある。そういう意味では、人は仕事に疲れるのは普遍的な案件ですし、ゆえに休むのはこれまた当然の案件であると言える。そこをこの漫画はついてくるのです。
 はるかさんは案外仕事人間です。この漫画では休むところが基本であり、休憩をクローズアップされるのですが、それでもわりと端々から仕事人間であるのが見て取れます。館詰めでときめいているッ!! するくらいなのです。実際、はるかさん本人も休み下手で、というように、結構なことをしないと休みに切り替わらないタイプっぽいです。
 なので、この漫画はわりと結構な休息をやっていく漫画となっているのです。
 その一話目は、いきなり銭湯。そう、いきなりラ! なのです! ということで、本人はいきなりサービスな気は当然ないんですが、読者側はいきなりサービスかよ! サービスでコロコロするだけの女体かよ!! ってなるので、男なんてシャボン玉。って感じです。
 良く分からないことを言いましたが、とりあえずサービスか。と舐めないでください。実際その通りの側面もありますが、銭湯というのは一種異界とも言える。普通に風呂に入るだけでは得られないアトモスフィアがある。銭湯イズファンタジスタなのです。そこのとこを、特に饒舌になり過ぎないように、さらっと、しかしどっぷりやってくるのです
 そういう初手から入り、後は酒飲んでインド料理食ってうめー! でフィニッシュ。これが一話の大体の内容です。これ以降も、色々と手練手管で休む話がされます。
 正直、この漫画そんな長続きするのか? というくらいには、我々社畜には多彩な休みというのは想像できません。そこんとこを、この漫画は掘り下げ、こういう休みなら取れるかな? という雑感を抱かせる。あるいは、こういう休みも悪くないな、という羨望も抱かせる。そういう作品となっています。
 個人的には水族館の話が好きというか、羨望があります。水族館にはなんかロマンがありますからね。特に近場に水族館が、この漫画レベルのがないと、やたら羨望してしまいます。
 さておき。
 この漫画が優れている点は、先に述べたようにこういう休み、というのをきっちり提示してくる点です。あまりに休み特化過ぎて、全体的に弛緩した空気も流れているんですがそれはそれで好み、という方もいらっしゃるかと思います。
 そうです。休みの時くらい、肩の力など抜いて、気楽に楽しみたい。そういう最低限の休みを、この漫画は保証してくれる上に、更にもう一段はるかさんの休み方から、休むというのを掘り下げる。ある意味二段構えの構図がこの漫画には存在しています。
 ただおっさんが食べる、という図式の漫画がいつの間にか成立したこのご時世ですので、このお姉さんがただ休む、という図式もまた、いつの間にか成立する時世になったらいいいなあ、と感じつつ、この項を閉じたいと思います。