大体の内容「女の子×異世界転移×ゾンビアポカリプス!」。女の子×ゾンビアポカリプスは『がっこうぐらし!』という先人がいる、という中でさらにもう一匙、異世界転移をぶち込んでイマドキさを出す手つきが素晴らしい、そういう漫画が『白魔導士はゾンビの夢を見るか?』なのです。
ゾンビアポカリプス物は手を変え品を変え、様々な媒体で紡がれるある種王道の一つになった世相ですが、その中で女の子をフューチャーした『がっこうぐらし!』がきらら系で名を馳せる形になりました。
その女の子×ゾンビアポカリプスに更に異世界転移を絡めるという手に出たのが、この『白魔導士はゾンビの夢を見るか?』(以下白ゾン)となります。
内容としては、ファンタジー世界にいたリルーちゃんさんが、とある事情で異世界である現代日本っぽい場所に降り立つところから始まり、そこで出会ったアヤさんとゾンビアポカリプスの世界を、ゆるく、でもきっちりゾンビ物としてやっていくことになります。
さておき。
白ゾンはきららに載っている漫画なので、大変ゆるい感じのものです。その最たるところが、アヤさんがゾンビアポカリプスに生きているにしてはかなりゆるい点です。リルーちゃんさんが現れてからその様相は顕著で、リルーちゃんさんが使う回復魔法のレサナで回復されると超気持ちい~! からの隙あらばレサナされよう、とするムーブを繰り出してくるのです。レサナが回数制限があるので、一応本当に隙がなければやらないんですが、それでも出来るなら……! と貪欲に狙うさまは大変なゆるさとしてこの漫画を印象付けます。
しかし、白ゾンのゾンビ物としての仕草は、きらら系というそのふわっとした見た目とは裏腹にきっちりしております。
そもそものゾンビアポカリプスが始まって半年程度という時期設定がまず絶妙。あまり長く開き過ぎると生存者が減り過ぎるか事態が収束している可能性もあるけど、短すぎると混乱が大きすぎるしレサナの力を考えればリルーちゃんさんが色んな意味で危ない。そう考えれば大変微妙且つきっちりした時期設定と言えるでしょう。
その上で、ゾンビの存在がきっちり危険なものである、というのを提示しています。レサナで倒せる相手、ではあるけどレサナには前述通り回数制限がある、というのでそれを如何に温存して立ち回るか、という相手にゾンビはなっています。更にレサナの効かないゾンビも登場したりなど、緊張の面はゆるい側面もありつつも、きっちり〆るところは〆る、という所作をなしています。
ついでに書くと、アヤさん含め、生き残っている人達のバイタリティはかなり高いです。だからこそ生き残っているというべきなんですが、それを含めてもこいつらたくましいな? って感じさせます。その筆頭は当然のようにアヤさんで、レサナ厨な側面やゆるさはありつつも、きっちり場面場面で有効な作戦を考え、きっちり実行するスキルを持っていて、女の子一人で生き残っていたのは伊達ではないと感じさせます。他にも、このタイミングでご懐妊している人がいるなど、全体的に生命力の強さというのを感じさせられます。この辺、きらら系ゆえの要素という感じもあります。ゆるさが翻ってバイタリティに感じる、というのは。
さておき。
既にゾンビアポカリプスものはある、というきららの土壌の中でもう一段深堀した作品と言えるかと思います。ぶっちゃけいうと、バニライタチせんせのゾンビ物スキー具合がところどころで、アヤさんのTシャツのロメロリスペクトとかあって、好きなジャンルを更にもう一段するという手管として見事なジョブとして立ち上がっています。お美事! お美事でございます! と言っていいでしょう。
ぶっちゃけ、話がきっちり完結するまで見たいので、世の中にもっと広まればいいや! と思うレベルで、今の、そう今のきららMAXでも頭抜けている一作です。いや、マジできっちり完結が見たい……。
とかなんとか。