きららMAXが最強という。

まんがタイムきららMAX 2024年 05 月号 [雑誌]

突然の声明

 今のまんがタイムきららMAX誌(以下MAX)はおおよそ最強と言っていいでしょう。言い過ぎという批判も出るでしょうが、そこを抑えて、まず聞いてみてくれなさい。
 はっきり言って、現在のMAXは俺は最強だあ! と仮面ライダーレンゲルの声を出すほどの最強さです。ここまで隙のない布陣は、MAX史上でも類を見ません。たぶん。
 これは時により移ろうとはいえ、それでも暫くはこの最強布陣は続くので、MAXは今が芳醇の時と言えます。
 そのMAXが最強たる所以はいくつかありますが、今回は音楽系三巨頭の時代、ヤバの陣からの脱却、ゲスト少なめの誌面の三点をあげて話をしていきたいと思います。
 それではいってみましょう。

キングダム、カム……(音楽系三巨頭時代、れり)

 現在のMAXの音楽系三巨頭とは。
 今や知らぬものはないレベルな、はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』。
 ピアノ連弾を主軸に据えつつ、しっかりコメディな有馬『エイティエイトを2でわって』。
 解散から一転、再起を図る地下アイドル物のはんざわかおり『アイドルビーバック』。
 この三つが、音楽系漫画三巨頭です。音楽系としてますが、どれも基本はコメディとしてありつつ、各々の音楽性、題材が違うので、科としては同じでも目として違う感じ。それがきららMAXの芳醇さを色濃くしています。
 今一番きららMAXで有名、あるいはきらら全体でもトップのメジャー漫画になった、はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』(以下ぼざろ)は、いつの間にかきららMAXでは古参の漫画になってしまいました。この辺についてはまたいずれ語るので、ここではとりあえずそういうものだとします。しかし今のきららMAXの最強具合においてはこの漫画の存在は特段のものです。
 超覇権アニメの原作が、しかしアニメ化で特に変にならずに淡々と自分の仕事を続けている、という職人気質すらある漫画で、そりゃあ音楽系の一本ぶっとい巨頭だよ、なのがぼざろなのです。
 有馬『エイティエイトを2でわって』(以下88/2)はMAXに久しぶりに帰還された有馬先生の作。ピアノ連弾、というものをメインとして、青春とかコメディとかをやっていきます。きらら2作目、『きららファンタジア』の紹介漫画を入れれば3作目の有馬先生の持ち味というのが、この作品には横溢しています。
 基本ボケ濃いめのコメディなのに、真面目な部分では茶化さない。そこには真摯である。その匙加減が有馬先生の良さなのですよ。まあ、その前にコメディがわりとバタバタしててそれがまた楽しいんですが、それはさておき音楽系としてはベタなんだけどベタじゃない、といういい位置にある巨頭です。
 はんざわかおり『アイドルビーバック』(以下アイビバ)は『こみっくがーるず』で一時代を築いたはんざわかおり先生のきらら2作目。ある終わった地下アイドルが、その大ファンとまた再びアイドルをする、という話でまだ始まって1巻が出た辺りでこの文章を書いています。
 はんざわかおり先生の漫画は『こみっくがーるず』以前はちょっとあたおかな4コマを少女漫画で描いてたらしいとしか知らないのであれですが、それでもわりと無茶めの、辞めた地下アイドルが再度アイドルになる。というミッションがどうこなされるか、というのをかっつりやっています。だからこそちゃんと題材に向き合う、みたいなアトモスフィアがあって、その真摯さと、でもちょっと変なコメディ要素が合わさって最強に見える巨頭となっています。
 この三作が、実際今のきららMAXを見る上では重要な位置にある、というのも巨頭として推す理由です。それぞれが独自の視点から音楽について描く。ある意味では『けいおん!』以後の音楽系きらら漫画の潮流というのを、この三作で十二分に感じられる。それがMAXに偏っているというのが、中々に面白い事態だな、とも感じるのです。
 ついでに、まだ連載始まってそこまで経ってないのが巨頭に入るのも、重要な点です。ぼざろは7年目くらいで長期連載になっていますが、88/2もアイビバもまだ単行本1巻が出たばかりなので連載としてはペーペーです。それでも、巨頭とできるポテンシャルを持っているというのは、はんざわかおり先生も有馬先生もきららキャリアがあるから、と言えます。このきらら経験層の厚さも今のMAXの強みと言えます。

ヤバから抜けた先もまた、ヤバだった

 これは長年MAXを追っている方なら頷かれることと思いますが、この2年のMAXはヤバかった。いい意味で、ヤバかった。
 2年と少し前、原悠衣きんいろモザイク』終了を契機として、誌面にヤバい系4コマが乱立していました。
 大看板が失われた反動なのか、原先生が惹きつけるパワを持っていたのか。あるいはMAX編集部に何かあったのか。その辺は今となっては分かりませんが、とにかく変な力を持った漫画が、『きんいろモザイク』終了近辺で乱立したのです。
 その時にそのヤバさを勝手にレポートしたつもりになったやつが、
2022年中盤になって明らかになったまんがタイムきららMAXのやばさについて - オタわむれ 日々是戯言也blog
 になります。その時の空気を、ヤバの陣のアトモスフィアを勝手に感じていただきたい。
 さておき。
 とにかく一時期のMAXはヤバの極点に至る形になっていました。
 それから2年。
 ヤバたちは、次々と連載終了、所謂2巻乙を迎えていきました。
 現在残っているヤバは女の子×コズミックホラーのムクロメ『SAN値直葬!闇バイト』と女の子×ゾンビ×白魔法のバニライタチ『白魔導士はゾンビの夢を見るか?』。白ゾンは連載が安定してないので今後2巻乙になるかどうかわかりませんが、SAN値は2巻乙を越えて生きることが確定的に明らかになりました。きららMAXヤバの陣でもっとも鈍色の輝きを放つ、一番長生きしそうにないやつが一番長生きであるという、ある種の悪夢。でもまあそういう漫画だし、妙な生命力で生き残ってほしいです。
 さておき。
 そういうヤバの漫画が交代していく中で、最近のMAXは正統派なきらら漫画が乱立してきています。
 女の子×サウナの笠間裕之:宮月そこも『さうのあぅ!』。
 女の子×スポーツチャンバラの市川ヒロ:土管『スポチャン!』。
 他にもありますが、新連載組ではこの辺りが個人的には映えています。この辺りはヤバの陣のような異常な癖がおかしくなく、なので安心して見られるところです。
 とはいえ、ヤバの火が消えているかというとそうでもない。新連載にもヤバは当然のようにいます。
 それが 『へるしーへありーすけありー』、以下へへすけです。

軽くへへすけ紹介しつつ

 へへすけは簡単に言うと妖怪物ですが、吸血妖怪の、飛頭蛮だっけ? のヨモギさんが、ひょんなことから美大生の七草さんと共生関係に、というだけなら似た感じのは多々あるやつです。
 ただ、その七草さんの血が美大生特有の不摂生(偏見)でクソタレ不味い、というので、七草さんを正しい生活へ、という変な筋をしているのと、美大生の解像度が負の意味で際立っていて、ゆのっち蒼樹うめひだまりスケッチ』)は将来こうなるのか……。という亜空の感覚を持ってしまうのとで、かなりただ事ではない作品として、へへすけはあります。
 特に美大生の解像度の高さは本来の意味で天元突破しており、完全に美大の暗黒面だけど、へへすけの舞台以外のどの美大にもこれはあるだろうというのを感じさせるほどのものになっています。とにかく、あまりに現実味があり全くのエア美大ではない。確かにそこにある、あるいはあった闇が見えます。生活時間がぐちゃぐちゃになってても、他の学生にもぐちゃぐちゃな人がいるからそういう交友関係がとか、あまりに現実味があってリアルリアリティのレベルです。
 これを底辺というのか、上澄みというのかは個々人で意見が分かれるでしょうが、取り敢えず妖怪にすら血がまずいと言われる不摂生の段階で底辺というべきだと私は思います。
 さておき、今のMAXはヤバの陣の反動からわりと真っ当な漫画が真っ当に連載する、という形になり、一部ヤバの陣のDNAを深く受け継いだのはあるものの、変にハラハラしない誌面となっています。バランスが取れてきている、と言ってもいいでしょう。へへすけとSAN値だけでもヤバのウェイトがあり過ぎるからギリ平均ですが。

ゲストのバランスの良さについて

 ゲスト、というときらら系ではまれびと、というより連載できるかのライン探りと言えるとこです。全くゲストがないのも誌面の固定化になるし、でも沢山ありすぎても安定感がなくていけない。このバランスは難しいところです。読者視点からでも大変に見えるので、実際の現場はてんてこ舞いでしょう。
 実際、きらら本誌はゲストが多く、大体3割辺りで上げ下げしています。
 対してMAXは多くて最近は1割あるかないかで推移しています。
 この辺は、きらら本誌が休載する漫画が多い点も影響しています。休載可能性の常にあるのが3作くらいあってな……。その点では、MAXは単行本作業の入る時以外で休載は少なく、安定した誌面を形作っています。
 そして、ゲストの連載化も多い。上で挙げた『さうのあっ!』や『スポチャン!』もゲスト上がりです。ゲストがきっちり好感を持たれて連載化する、という正のフィードバックがはまってるから、現在のきららMAXは最強になっているのです。ヤバの陣を次々連載化してた頃とは隔世の感です。……へへすけは、まあ、うん。

まとめ

 音楽系三巨頭と、高め安定な新連載組、そして連載移行率の高いゲストの多発とが、現在のきららMAXを最強にしている、という話でした。上手く新陳代謝できた、というのが結局のところではあります。
 とはいえここは、それができたら、苦労はしねえ! とどっかの会長顔になるところです。早々、こうも上手くハマることはない。だからこそ、それができたMAX最強なのです。
 とはいえ、誌面は移ろうもの。次の波が来たら、MAXはどうなるのか。変わらず最強を続けることができるのか。まあ、なるようにならあね! という感じで、読者視点で今後も読んでいきたいところです。
 ということで今回はここまで。