ネタバレ?感想 沢真:柴田ヨクサル 『ヒッツ』7巻

ヒッツ(7) (ヒーローズコミックス)
ヒッツ(7) (ヒーローズコミックス)

 大体の内容「点と点がつながり出した、んだけども」。殺し屋モノ、というくくりも、コメディというくくりも、そこからはこの漫画は逸脱し始めている、そんな印象なのが『ヒッツ』7巻なのです。
 6巻の狂乱の夜から一夜明け、ひとまず普通の生活に戻る、かに見えた矢先から、新たに学校に赴任してきた先生がいきなり怪しさと胡乱さを爆裂させてきます。というか文字通りに爆裂させるので、この漫画結構なんでもありだけど、そろそろその辺を全開にしてきたな、という印象になりました。
 しかし、この爆散、なんか見覚えがあるな、と。ここは読者視点では今まで情報が与えられているがゆえに、あの話と接点があるのか! ってなるとこです。
 与えられた点と点が、にわかにつながり始めた訳ですが、問題なのはその点と点をつないでもどういう絵図になるのかとんと分からないことです。
 これはまだこの漫画の展開、今後が全然分からんこともありますが、そもそもこの点とその点をつないで絵ができるの? というくらいに謎のつながりとなっているのが混乱の元です。
 特に波川先生の復活という点と、それが最強の兵士だという点、そして爆散の点のがつながってるんだけどこの謎の描線は何? 感の強さは異常です。
 これ以外の部分も色々な点として、線を描けるようにはなっていますが、つないでいいのか? と困惑する点も多く、この漫画のイカれ具合が如実に現れた格好です。
 この辺の、何を考えついているのか分からないけど、考えついているのは間違いない、という曰く言い難い感じは、柴田ヨクサル味としては1000%の仕上がりと言えます。
 今までの柴田ヨクサル漫画であった考えているのは分かるけど、それが何かは明かされるまで分からん、という部分が、ほぼ野放図にできるネタであるが故に通常の10倍の力でお出しされている、というのが『ヒッツ』の様態と言えます。
 今回の巻ではヒッツに新たな力が、みたいなのもぶっ込まれて、何故ヒッツというコンビが生まれなければならなかったか、という部分への回答が匂わされてますが、ここも新たな点だけどどうつなぐの? みたいな点で、ますますこの漫画が訳がわからなくなってきています。まあ、そりゃあ同一人物だから、そうなるのも一理あるんだけどさあ!
 着地する場所がもやがかかっている。でも、着地点は考えついているとしか思えないムーブなので、やはり柴田ヨクサル先生は天才だな、となるばかりです。
 人間関係の交錯もやはり天才か……。となるくらいに、強引に一箇所にまとめてるけど、その過程は自然になされています。この際立ち具合もこの漫画がごちゃごちゃしてるのにすっと分かるという特異な点を補強しています。
 この匙加減、中々どうして。印象に残りやすいムーブを初手でかまして、後はちまちま補強する、という言うは易しなやつを華麗にやってのけています。原作も作画も、どちらも卓越しているからこそできる展開と言えるでしょう。
 というか、内容とか人間関係とか印象操作とか、柴田ヨクサル先生が全開すぎる。沢真先生もよく振り落とされないな、というレベルのじゃじゃ馬ですよ。まあ、沢真先生が振り落とされたらこの漫画終わる訳なので、耐えてくれい! としか言いようがありません。ほんと頑張ってるよ……。褒めるしかない……。
 そんな訳で、話の核心はチラチラ見えるけど、本当にそれでこの漫画の描きたい絵図に到着できるのか。そもそも我々は本当に絵図の完成形が出たらちゃんと理解できるのか。そういう部分をたぶんに感じさせる無茶な漫画が『ヒッツ』なのです。