感想 鎌池和馬『とある魔術の禁書目録』

灰村キヨタカ電撃文庫・570円・ISBN:484022658X
内容を要約すると「駄目かと思ったらなんとかなった」
超能力開発学園都市に住む少年の元に唐突に舞い降りてきた「魔法の禁書目録」の少女をめぐってなんとなく喧嘩するお話。
さておき。
素晴らしいですね、やり過ぎ感が。
超能力を科学的に解明して使用する学園都市という、それだけでおなか一杯になりそうなネタの上に「魔法」という別のロジックをぶち込んでくるさらにその上に、主人公にそれらをなんとなく対処できる能力を与えてさらにさらにその上でその能力以外で対処しなければならない課題を与えて、それでもなんとなくクリアさせていくという展開のまたまたさらにその上に台詞や言葉の端々に違う読み方のルビをぶっこみまくって一事が万事大げさに言いまわしてくるというのはどう考えてもやり過ぎで突っ込み所に事欠かないんですが、しかしそれゆえに我々青少年の中坊神経(by篠房六郎)をビッコンビッコン刺激してくるわけでこれはある意味今の中高生世代の「スレイヤーズ!」、または「あかほりさとるに相当するんでしょう。 そう思うと、売れている理由が良く分かります。
よくよく読めば見えてくるのですがというかよく言われていますが、この作品の持つ文体の雰囲気っていうのはかなり「エロゲー」の形に近いんですね。 台詞ではなく地の分が三人称でがりがり主人公の心情を語ったり、同じ言葉が台詞だったり地の文だったりという見せ方は確かに「エロゲー」のそれに近いわけです。 で、今は「エロゲー」黄昏の時代。 それが受け入れられた時代。 それゆえにこういう表現が当然のようにするすると受け入れる素地があるわけで、それがゆえに作品が受け入れられるという点でみると、とある魔術の禁書目録」という作品は「スレイヤーズ!」が受け入れられた時のような位置に今、いるのではないでしょうか。
ああそれと、絵の印象も十分に強い、というかかなりヴィジュアルイメージを絵に頼っている感があるのも特徴的です。 それゆえにこの絵師選択をした電撃文庫の仕事とそれに答えた絵師の仕事、ともにお見事ですね。