感想 とよ田みのる 『とよ田みのる短編集 CATCH&THROW』

 大体の内容。「とよ田みのる初の短編集!」。五作中三作が同人誌からの収録らしいですが、そんなのとは縁遠い自分には大変嬉しい収録であります。それでは、一つずつ軽く感想を。

『素敵な面倒さん』

 呪いのせいで表情が変えられない面倒さんがひたすら可愛いという凄い一点突破。無表情キャラが感情を上手く表せなくて、というのを呪いと言う形で処理しつつ、それが地味に解ける所までやる、という良い所で終わりやがるよ全くよー! とにかく面倒さんが可愛いので面倒さん可愛い。そんな頭の悪い感想しか出ないくらいの一点突破です。というか面倒さん可愛い。もー! どうせ好きになるなら末永くな!

「CATCH&THROW」

 田舎の島にやってきた転校生の外国人。その子とのフリスビーでの対話の話。
 とよ田みのる味が恐らく今一番凝縮している一作。あとがき漫画でも描かれていますが、ラブコメでマイナースポーツでコミュニケーション。それは今までのとよ田みのる漫画のエッセンス。それが一作一短編で全部盛りなんだから濃密としか言い様がありません。ある意味短編だからこそ煮込めたとも思える、そんなさっぱりとした味わいとしみじみ感動出来る内容で、これが『面倒さん』の後に掲載されていて良かった。じゃないと他のだとたぶん『面倒さん』の余韻に負けてたんじゃないかと思うんですが、ゆえにそれを上回る濃さで攻めてきた今作は、二番手以外にありえなかっただろう、とも。

「ヒカルちゃん」

 合わせ鏡から現れたヒカルちゃんは、ユカリちゃんの現実を侵食し始め…。
 とよ田みのるキャラというのはある種の一貫性を持ち、そしてそれを突き崩す物/者が現れるというのが基礎パターンですが(断定)、それのホラー調での仕上がりがこの作品となろうかと思います。とにかくはた迷惑、というのを越えて、完全に破壊者なヒカルちゃんが一貫性を破壊していくさまはやはりホラー。というか、無茶苦茶しおるなヒカルちゃん…。というのが直裁な感想です。しかし、それをユカリちゃんは撃退して、少しの変化を得たわけで、そういう意味ではとよ田みのる味の一端ではあるなあ、と。こういう事も出来るのかー。

「等価な二人」

 月に無理やり連れてこられた娘と月人の邂逅。そして、等価交換!
 明確に原作があるという、とよ田みのる漫画では初じゃね? という事態なので、当然味わいがちょっと違います。胸タッチとかあるしな! そういう中学生スメルも出せるんだなあ、というのが正直な感想。最後の笑えばいいと思うよ、辺りがどういう等価交換で出来たのだろう、とか謎が多い部分もありますが、一人の女の子の未来を救った月人、その後の無様っぷりがあっても、かっこいいものがありました。

「片桐くん」

 一貫性のあるキャラの一貫性が強いタイプの漫画。告白された事で微妙に崩れるけど、そこまでの崩れは無いパターンというのは、『ラブロマ』にも通じる流れであるかと。テクを身につけて描かれただけあって、それほどの起伏が無いのに読ませる出来ですが、小話としては平坦だな、という感想も抱いたり。最後の片桐くんの笑みが重要な漫画だろうなあ、とも。