感想 とよ田みのる 『金剛寺さんは面倒臭い』2巻


金剛寺さんは面倒臭い(2) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
(画像のリンクが物理書籍のページ、文章のリンクがkindle版のページ)

大体の内容「今日もハピ☆ハピね!(安元声で)」。面倒臭い系女子金剛寺さんと、天然無垢系男子樺山君のただの恋路。それが『金剛寺さんは面倒臭い』なのです!
今回もベタ基礎は金剛寺さんと樺山君の恋路が突き進んでいくだけなのですが、そのメイン筋のテンションの高さと、脇筋のテンションの高さが基本交わらないのに交わっている、という1日30時間という矛盾! レベルの矛盾を、しかし完全にものにしているからこの漫画は恐ろしいのです。もうちょっと正しくして言えば、メインのテンションの基礎の、更に基礎に脇のテンションがある、とでも言いましょうか。この前提の前の前提にある、というか。でもそれらは交わることはない。でもある。そうならなかったからこその今がある。そう言う感じです。すいません、言語化が難しくて……。
さておき。
今回もメインの恋路はメインの恋路で金剛寺さんが可愛すぎて困ったり、樺山君が可愛くて困ったりで面白いですが、やはり脇の方に気がいってしまうのがスレた漫画読みの悲しいサガ。しかし、そういう視線を持つと、この漫画が重層的に見えてきて、更に楽しめるから困ります。スレっからしにやたら優しいマンガであるのも、この漫画の良さなのです。今回でその良さが出ているのは、地獄とデートの話の第7話『地獄なんてどうでもいい』、HUG! の第9話『〇〇にはそれだけの力がある』でしょうか。
地獄とデートの話『地獄なんてどうでもいい』は、地獄で謎の鬼に合う地獄パートとデートのデートパートの二編が混合してあるという頭がこんがらがる内容。でも、きっちりと頭に入るという出来栄えなのでもうなんだこれです。ちなみに、地獄の謎の鬼の言葉の解読が出来ると、地獄の場面が全て一転します。そういう風にぱっと見のおどろおどろしさが一転する、というのがこの漫画らしいなあ、と思いました。というか、あの鬼はそういう……。
HUG! な第9話『〇〇にはそれだけの力がある』はあまりにも堂々と「これは伏線であるッ!」と宣言してくる上に、それがきっちり成程! と感嘆せしめる決まり具合で、確かに力があるんだ! と思わされます。結婚して愛する娘が出来た、とよ田みのる先生だからこその言葉である、とも思えます。本当に力を実感しているからこその、言葉だと。だからこそ、力強く間違いなく心に響くのです。
さておき。
この漫画の面白さは、やっぱりナレーターのテンションがおかしい、所謂マッドアナウンサー案件であるからでしょう。ぶっちゃけナレーター氏が全てを知っているからゆえに出せる、情報の引き出し方、そしてその言い方のテンションが全部おかしくて、全部可笑しい。マッドアナウンサー概念の出来ることをしっかりと熟知した腕前です。どこかでとよ田みのるの『シグルイ』って言われたのも、そのナレーション、マッドアナウンサーっぷりがしっかりしているから、というのもあるかと思います。しかし、作品の方向性は『シグルイ』とは真逆! こういう方向でもマッドアナウンサーが可能だ、という例示は、しかし今後の漫画界にどういう影響を与えるのか。油断なくいこう。そう思いながら、この項を閉じたいと思います。