感想 ざら 『しかくいシカク 1』

しかくいシカク (1) (まんがタイムKRコミックス)

しかくいシカク (1) (まんがタイムKRコミックス)

 大体の内容。「カメラのある女子学生生活!」基本的にオタな視点が入る物は細かく細かく、深く深く行こうとしがちなもので、同じざらせんせの「わがままDIY」(感想)も主としてはパソネタを深く潜行する、いわばそっち系の漫画なのですが、それに対してこの漫画、『しかくいシカク』はそういう面構えはしれっと見せず、でも全くないわけでもない、そういう絶妙のネタ加減の昇華で我々にカメラのある学生生活、と言うのを見せてくれます。基本的に素人ばかりゆえに出来る漫画と言いましょうか、見る方もそこまで深度が無いのを把握して、ならば素人ばかり集まるのが妥当ではないか、一緒に覚えていけばいいじゃないか、という美しい腹の決めようがそこにはあります。
 こういう深度の関係を計れたのはある意味『けいおん!』以後、女の子がちょっと特殊な部活に入る物以後、ゆえに出来た事でもありまして(断定)、その"以後”と言うものを確実に物にしよう、我が物にしよう、俺参上!とするざらせんせの野望の鬼だ!面は並大抵の物では無いのはこの漫画を見れば確実に分かることです(断定)。
 そういう面構えなわけなので、その連載プレイも大変慎重。前作『ふおんコネクト!』が初連載だったのもあってペースを上手く見切れず、二年生を一回巻き戻してしまった過去の苦い経験がほう、経験が生きたな。したのか、入学から友達になるまで、更に写真部の設立から部員増加、ついでに顧問獲得までもじっくり時間を掛けての連載プレイ。ここまでじっくりしてるのを見ると、途中で頓挫したら痛手じゃすまないのではという老婆心も沸いてきますが、しかしその丁寧がしっかり作品に厚みを、じっくりしているからこそ出来る味わいをもたらしているのであります。たとえば以前の『ふおんコネクト!』にあったくすぐり的ネタの込めなければ!込めなければ!というたまに込めすぎだった気合いもじっくりするという方向にスキル配分されているがゆえに、あのガチャガチャした感じが薄くなり、それゆえに読みやすくなっているのは大変この漫画には奏功していると言えますし、ざら漫画としての新たな一ページが築かれていると言えましょう。
 さておき。
 漫画はキャラだよ、兄貴! とは私の中のとよ田みのる先生の言葉=妄想ですが、『しかくいシカク』においてはどういうキャラが押し出されているか、というのは前作『ふおんコネクト!』との対比で言うなら比較的控えめ、というより『ふおんコネクト!』が無駄に濃い、交流とふおんと夕ちゃん先生が特に濃いという事で、それとの対比じゃあそりゃ控えめですよ。家族関係とか、まだ魚様の家族関係がちょろっとレベルでしかないですが、それでもわりとシンプル。誰が誰の血を、とか考えなくていいどころかまだ全員分の家族出てない状況下なので、もしかすると『ふおんコネクト!』並にグダグダしたのが出てくるかもしれませんが、あとがき見る限りでは濃くしすぎないようにしようというざらせんせの談話があるので、そうはならないのではなかろうか、というのが現状だったりします。
 話が逸れ気味なので一旦戻します。キャラの濃さの話。
 この1巻での、という前置きで話せば、メイン三人娘はそれぞれ適度な濃さを持っています。十子が残念美人・カメラっこ、茜ちんがミニマム・運動神経良し、魚様が天然・ナチュラルボーン腹黒、という風に、適度にこれ、と言えるキャラ性がしっかりありつつ、しかし基本ただの女子高生であるというのからは逸脱しません。『ふおんコネクト!』で完全にパーフェクト超人でしかも学校の最大手スポンサーだった交流さんみたいな激しい逸脱は無い、と言えます。だからあの辺のデウス=エクス=マキナな事は当然起きず、ただの女子高生が出来る基本的な事を重視した漫画作りになる、そういうキャラ性になっています。そういう意味では派手さ、無茶さは比較的少ないと言えると思いますが、なにぶん比較対象が無茶だったので、予備知識無しだとこれも意外と濃いのかもしれません。その辺は個々人で確かみてみろ! とりあえず、慎重な連載プレイゆえに知らないといけない前提条件が少ないので、上記基本キャラ立ちを確認しつつで今からきらら誌見ても、わりあいすんなり入れると思われます。そういう意味でも、この慎重な積み重ねというのは高レベルの技ではないでしょうか。
 さておき。
 そういうキャラががっつりと回る回として挙げておくべきはカメラを選ぶ回である第7話「カメラで何がしたいんですか?」と第8話「私それ買います」。写真部という事で確定的に明らかに買わないといけないカメラ、それをどうするか、というので二話使う丁寧さ。どちらも、これこそこの漫画の真骨頂よ! と言えるいい回です。前者は茜ちんのカメラ決定と、それに付随して十子が使ってるカメラの話もちまりと、しかし丁寧にある回で、後者は魚様のカメラ決定と、それに付随して顧問決定というこれまた丁寧にネタ振って回収するこれまた丁寧な回。そして、どちらもキャラが上手く回って決まる回でもあります。特に魚様の先見の明は怖い過ぎる!コワイ! と去来する物があります。というか、高校生の考える事じゃないでしょー!
 他には10話「アンタに恋愛は10年早いのよ!」辺りは十子回としては手堅く且つ十子が残念にまとまってる回で、ざらせんせのキャラ回しの妙味を見せてくれるいい回です。と言うか本当に十子の残念度合いは素晴らしい。丁度同時期に『はがない』方面から残念系という概念が出てきたのは、十子にとっては追い風であると言えましょう。それくらい、美人でスタイルも良いけど本当に残念なのが、十子なのだなあ、と深く理解出来る回でもあります。と言う風にいくつか上げましたが、他の話も全部いいですよ! ワザマエ!
 そんなわけで、慎重且つ丁寧に綴られる学園漫画であり、ざらせんせが天下を取る為の手始め、それが『しかくいシカク』なのです!